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なんども駆け落ちされた伯爵子息カールの行く末は……  作者: 星野 満


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19/81

何度も失神する姫君

※ 2025/10/5修正済み

◇ ◇ ◇ ◇



ウェンディ・デ・デラバイト姫。

18歳。隣国・デラバイト王国の第1王女。

父は現デラバイト国王のリチャード、母は母国の現国王の妹アクアリネ姫である。


生前のアクアリネ姫はウェンディ姫と生き写しでスミソナイト王国一の美女と言われた。


時に、デラバイト王国のリチャード王太子が、友好親善も兼ねて留学中に彼女に一目惚れをした。

その後、アクアリネ姫はデラバイト王国へ嫁ぎリチャードとの間に1男1女を設けたが、ウェンディが幼い頃に病死した。


リチャードは妻の死をことのほか嘆き悲しむが、国王として王妃の座を空席にするわけにもいかず、自国の侯爵令嬢と再婚し娘を1人設けている。

ウェンディとは4歳違いの異母妹である。


現在、デラバイト王国の王太子には、先妻のアクアリネ姫が産んだ長男ハーバートが世継ぎとなっている。


ウェンディ姫がスミソナイト王国へ来た理由は、表向きは姫の静養だが、母国でその身が危険に晒されていると、兄のハーバート王太子が危惧したのだ。

これまでもウェンディ姫は、何者かに軽い毒を盛られたり、池や別荘の川に落ちて溺れそうになったことも何度となくあったという。


どうやら継母の王妃が、ウェンディ姫の殺害を指示しているという、まことしやかな噂があった。


その理由は、夫のリチャード国王が亡き先妻の生き写しのウェンディ姫を溺愛しており、年頃になってもなかなか嫁にやろうとせずに、手元におきたがっているのが解せないようだ。

自分の娘に対してはおざなりの愛情なのに……と憂いている。


政略結婚とはいえ、王妃はリチャード国王にアクアリネ王妃が生存中から非常に御執心だったという。

ようやく邪魔者が消えて王妃になれたのに、国王は亡妻への思慕ばかり。

後妻の自分には殆ど興味を示さなかった。

御子も王女1人のみだった。


そのせいか『世継ぎのハーバート王太子1人では男子が心許ない』と王室の重鎮たちが、国王に側室を(もう)けるように提案したが、王妃の親族が大反対して叶わなかった。


そんなこんなで現王妃の嫉妬の矛先は、義娘のウェンディ姫へと向けられた。


それもなかなか狡猾で自ら手を汚さずに行う為、証拠が見つからない。


リチャード国王は王妃がウェンディ姫に執拗な嫌がらせを何年もしていると、ハーバート王太子から聞いた時は愕然とした。


王妃とその親族は恍惚であり、証拠を残さず国王の聴取にものらりくらりと上手く交わしている。

何よりも、王妃のバックには王室の重鎮と地位ある兄や叔父たち親族がいるせいもあった。


国王も王妃のバックを考慮すると強く出れなかった。


だが、証拠はなくともウェンディ姫への嫌がらせは、日々エスカレートしていく。

余りの仕打ちに見かねた兄のハーバート王太子が、密かに姫君の保護を姫の叔父のスミソナイト国王と従兄弟のライナス殿下に打診した。


ライナスとハーバート、そしてウェンディと3人は幼少より仲が良く綿密に連絡を取っている仲だった。



◇ ◇


ウェンディ姫が来日した折、ライナス殿下の騎士団の中でも、僕は剣技の腕を買われて姫君の護衛に抜擢された。


護衛の役目は四六時中ウェンディ姫を見守り、万が一、彼女に危害を加える不埒(ふらち)な輩がいたらぶっちゃけ剣をふるって、殺傷も厭わぬという役職である。


他国の姫の護衛を殿下に使命されたことは、王室の騎士として名誉の証といって良い。


だが、僕を護衛に選んだのは明らかに失敗だったとライナス殿下を始めウェンディ姫の側近たちはすぐに気付いた。


その理由(わけ)は、ウェンディ姫が護衛の僕と目が合う度に、度々失神するからだ。


最初、ウェンディ姫に何かしらの病いがあるのではないか?と心配されたが、失神後、王族の医者に見せてもどこにも異常はみられなかった。


だがそのおかしな現象は一日に何度となく頻繁に現れた。


僕が護衛になってからというものの、ウェンディ姫の傍らに僕が配置に着くや否や、彼女はパタリと何度も倒れた。


傍から見てると、姫君の失神の仕方がバカバカしいくらいに笑える。


まるでどこぞの大根女優が、一生懸命失神する演技を練習しているかのようだった。

その倒れ方が、余りにも不自然すぎた。


「きゃ~姫様!」と側のお付のメイドが叫ぶ。

「おい、どうした?」と僕が駆けつける。

「姫様が突然お倒れに~」メイドが叫ぶ。

「大変だ、姫様~!」と僕。

「…………」

「だめだ、早く医者を呼べ!」と僕。

「姫様〜!」泣き出すメイド。


と、上記通りのドタバタ喜劇のようではないか。


ウェンディ姫が失神するたびに、僕はただちに姫の許へ駆け寄り、姫を抱きかかえてその場にあるベッドやソファへと慌てて運び、医者を呼ぶという毎日が日課になっていた。


まるで三流芝居の茶番劇のような展開だったが、これがほぼ何日も続いたのだ。


こうしてウェンディ姫が現れてから、僕の日常はどんどん変化していった。




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