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なんども駆け落ちされた伯爵子息カールの行く末は……  作者: 星野 満


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ミケと僕の前世(2)

※ 2025/10/4 修正済み

◇ ◇ ◇ ◇



「前世の世界って、じゃあ僕は前世はここに住んでたのか、このじめっと湿気のある暗く変な場所に?」


( にゃはは、お墓で人が住む訳ないでしょう、普通お墓ってのは亡くなってから入るもんですにゃ )


とミケは小馬鹿にしたように、にゃ~にゃ~と前足をちょいちょい動かした。


「あ、つまりこの墓は前世、僕自身の墓か?」


(そうですにゃ、やっと分かりましたか。カール様のお墓ですニャン!)



──わわ、僕の墓か。 それで風子令嬢が僕のお墓参りに来ていたという訳か。


僕は、ようやくそこまで理解した。でもなんで令嬢が?



「とても信じられないが、この墓地が前世の世界って事にして……それで風子って名前の高等学院に通っているご令嬢が僕の墓参りをしてたと言うのか?」


( そうにゃんす。風子様はとってもシャイな方で、それはそれはあなた様一筋の“推しの子”なんですにゃんよ!)


「推しの子?」


(ああ、うまく言葉を言いかえできニャンすね。つまり貴方様の崇拝者という言葉でわかるかニャン?)


「僕の崇拝者?」


僕は猫につままれた、いや狐につままれた気分で面食らっていたが、ミケとの会話をこのまま続けたいと思った。


ミケはミケで悩んでいるようなそぶりで前足を体に擦りつけた。


( まあ、カール様は突然ですから理解できないしょうにゃので最初から説明しますと、ここは『日本』という国です。東アジアの中にある国なんです。あ、東アジアもわからんにゃんか? つまり『ジュエリ大陸』が『東アジア』とすると『スミソナイト王国』が『日本国』なのです。イメージ湧きますかにゃ?──まあわからずとも、ここは別次元の『異世界』とだけ覚えていておくんさい!)



──覚えていておくんさい!って。


内心、猫のやさぐれた言葉に(あき)れはしたが、僕は別の異世界というのは分かった。


「うん、前世の僕が『ニホン』という国の見知らぬ異世界に生きていたのは理解したよ」


( OK!そこまでようござんすにゃ。そんでもって前世であなた様は唐人からひとという名前でした)


「カラヒト?」


(はい、貴方様は歌を歌って踊るアイドルでして、さらに芸名が()()()といいますにゃん!)


「芸名がカレン? 僕は女だったのか?」


(い~え、男ですよ。芸名なのは芸能の仕事をしてると別の名前をもらうのです)


「なんだそれは、芸能の仕事、アイドル?」


(まあまあ、職業は後で説明するとして、貴方様、つまりカレン様は突然、重病で20歳の若さで突如死んでしまったんですにゃ~)


「え、そんな若くして突然死んだ?」


(はいな、カレン様の一番推しだった風子(ふうこ)様はそれはそれは嘆きまして、生前カレン様が大のミケ猫好きだったのを知って『せめてミケ猫の置物だけでもお墓に置けば、カレン様の慰めになるだろう』と供養の花と一緒に毎日毎日、風子様はお墓に置物をお供えしたんですにゃ~。泣けるお話ですにゃ~!)



──は、泣けるか? なんだ。それ。


つまり僕の前世の名が“カレン”という歌うたいで若くして死んだとな。

それを嘆いた僕の崇拝者の令嬢が、このジメッとしてる場所の墓参りを毎日通っていただと! 


僕は泣くどころか、フウコという名の令嬢がとてつもなく恐ろしくなった。


──いやいや怖いだろう?


考えてもみろ、彼女は僕の妻でもないのに毎日男の墓参りをするんだぞ。


……とても解せぬ行動だ。


見ず知らずの令嬢がいくらカレンの崇拝者とはいえ赤の他人だろう。


だが前世の世界では、若い令嬢が好きな男が死ぬと墓参りする習慣があるのやもしれん。


それにしても異世界の令嬢は執着しすぎというか、とても変っている。


「ミケ、僕にはとても理解できないが、異世界はそういう習慣なのか。寡婦(かふ)でも我が王国では、毎日墓参りなどはせんよ」


( んにゃ~、風子様は確かに貴方様の言う通り風変わりなお嬢様ですにゃん!)


「そうだろう。それでフウコ嬢は猫好きのカレンのために、1人で何百も置き猫を供養したのか?」


僕は墓の廻りにある猫の置物をジロジロ眺めた。


( ま、そんなとこですにゃ。自腹で花も置物も……優しい風子様にゃんよね~)


ミケはどこ吹く風みたいな物言いで、片方の耳が(かゆ)いのか、しきりに後ろ足でクシュクシュと掻いている。


──それにしても自腹でこんなに沢山? 凄まじい女だな。


僕は増々恐ろしくなった。



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