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小柄な竜に恋をした、不器用な治癒術師 ~バルツクローゲン魔法学院、教師の職場恋愛物語~  作者: F式 大熊猫改 (Lika)
本編

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第十五話 竜とお誘い

 舞踏会は明日と迫った本日。ヨランダは授業を終えた後、ポマさんに呼び出されていた。明日のドレスを制作するから来てくれとのこと。


「明日のドレスを今日作るって……どんな魔法使うつもりだろ、ポマさん」


「まあ妖精王を従える程の人物だしな……不可能など無いだろう」


 ノチェも愛弟子のドレス姿を想像しながら、なんとなく嬉しそうに笑みを浮かべる。本日は少し冷える為、ヨランダの首にはいつもより手厚くモフモフ尻尾をまきまき。


「そうえいばヨランダ、相手はどうするんだ?」


「え? あぁ、そのことなんだけど……なんかマルティナさんが男装して相手になってくれるって」


「……そうか」


 ノチェは一瞬で察した! マルティナがヨランダとマティアスの仲を取り保とうとしている事に! しかしノチェの目から見ても、マティアスが素直にヨランダを誘うとは思えない。マルティナがどれだけ頑張ろうと、結局はマティアスがその気にならなければ意味がないだろう。


「ヨランダ、マティアス先生の事はどう思っているんだ?」


 ヨランダへとノチェは単刀直入に尋ねる。しかしその瞬間、首に巻いている尻尾が、まるで熱した鉄の棒を包んでいるかの如く熱くなった! いや、これは溶岩? いやいや、太陽? と思ってしまう程の熱を発しだした!


「ぐあぁぁああ! 尻尾が! 尻尾がやける……!」


「はっ! 大丈夫ノチェ! ノ、ノチェが変な事聞くから……」


 モジモジと可愛い仕草をするヨランダから退避するノチェ。フーフーと尻尾へと息を吹きかける。竜が赤面すると周囲を溶かす程の熱を発するのか? と新たな発見をしてしまうノチェ。


 するとそんなノチェを、別の誰かが抱き上げた。その人物は金髪にローブ姿の、甘い顔をしたイケメン魔法使い。


「やあ、ヨランダ先生。元気かい?」


「……えっと、どなたでしたっけ?」


「酷い! 初日に挨拶周りに来てくれたじゃないか!」


 あぁ、とヨランダは思い出した。挨拶回りをしたとき、数時間に及ぶ魔法使いの自慢話を聞かされた時、最も長時間を記録した魔法使いだ、と。ちなみに名前は憶えていない。


「ロスタリカだ。覚えてくれ、ヨランダ先生。ちなみに専門は異界生成だよ」


「あー……」


 異界を生成する事。それはまあまあ困難を極める魔法の一つ。しかし生成する事自体は大して難しくはない。問題はその異界が世界の一部なのか、全く別の新しい境界線を引いた世界なのかを証明するのが難しいのだ。


 この男、ロスタリカはその証明の研究をしている。異界に意思を与え、自らが世界と切り離された世界線であると証言させようとしているのだ。


 ちなみにヨランダがされた自慢話の一部が


『異界に意識を与えた所で素直に自分が異界であると証言してくれるとは思えない、人間だってそうだろう? 自分がツンデレだと認識している奴は少ないだろう、ならば自分がツンデレであることを素直に認めさせるにはどうすればいいのか、それは一生この人物についていくという覚悟を持たせる事が第一条件だ! だがそんな人物にこそ、自分がツンデレだとは言いにくい物! 私の研究は異界の生成であると同時に、ツンデレにツンデレだと認識させ、尚且つそれを他人に証言出来るツンデレの生成なのだっ!』


 ヨランダは当然、そんな自慢話は右から左に抜けていた事は言うまでも無いが、とりあえず今後関わりたくないと思った魔法使いの一人である。バルツクローゲン魔法学院で上級生のクラス担任を任されているのだから、相当に優秀な魔法使いであることは理解するが、まあまあ距離を取りたいタイプである。


「それで、なんか用すか」


「ふふ、清々しい程に不愛想になったね。そのジト目がたまらないよ、ヨランダ先生。どうだろう、今度の舞踏会……僕と……」


「どっっせーい!」


 その時! ロスタリカの顔面に炸裂する飛び蹴り! そして宙に舞ったノチェを受け止める人物が現れた! それは軍服に身を包んだ、男装していない、普段のマルティナ少尉。


「ぐはぁぁあぁ! ま、マルティナちゃん! いきなり何をするんだい!」


「申し訳ありません、足が滑りました」


「豪快な滑り方をするものだね……」


 ノチェをヨランダへと手渡しつつ、マルティナは懐からハンドガンを取り出し、何故か残弾を確認。


「あの、マルティナちゃん?」


「すみません、今度は指が滑りそうで……」


「ヨランダ先生! さっきの話は無かったことに……!」


 そのままロスタリカは去って行った。マルティナは「フゥ」とため息を吐きつつ、ヨランダへと向き直る。


「ヨランダ先生、気を付けてください。貴方の相手はこのマルティナなのです。間違えてもらっては困ります」


「い、いえ、勿論分かってますっ、なので魔法使いにいきなり飛び蹴りはやめた方が……」


「大丈夫です。私の足底には魔法を無力化する素材が使われていますので」


「そ、そんなのあるんですね!」


「おっと、軍事機密ですよ。でもヨランダ先生には可愛いから教えてしまいます」


 随分軽い機密もあったものだとノチェは呆れ顔。しかしヨランダは新しい発見に目を輝かせていた!


「魔法を無力化するって、どうやってやるんですか?! すごいです、もっと知りたい!」


「ふふ、ならば私と一緒に舞踏会、踊ってくれますね? 先ほどのように男が寄って来ても、ちゃんと断ってくれますね?」


「はい!」


 いい笑顔で返事をするヨランダ。なんとなく、その笑顔に不安になるノチェなのであった。



 ★☆★



 モフモフ空間。そこはヨランダにとって、脳死で思わずそう呟いてしまう程にモフモフ空間。何せポマさんのほかにも、大書庫で喫茶店をしていたパンダに、巨大なワンコも居る。ワンコの毛並みは真っ白のモッフモフ。思わず毛の中に飛び込みたくなる。


「ぽ、ポマさん……! この方々は……」


「ぁ、みんな裁縫が得意な妖精さんよ。紹介するわね。こっちのパンダさんが、妖精王直下の七大騎士の一人、ジュネイルさん。パンダの姿をしているけど、妖精の国に帰ると物凄くカッコイイ騎士様なのよ! ちなみにこれがジュネイルさんの本来の姿ね」


 写真を手渡されるヨランダ。そこに映っているのは、黒髪に真っ白の肌。そして何より、色気しか感じない流し目。とてもパンダには見えない。


「な、なななななんでパンダになんかなってるんですか! こっちの姿で喫茶店してください!」


「ウフフ、ごめんねぇ。妖精の国から出ると、こっちの世界に合わせて姿を変えないとダメな規則になってるのよぉ」


 にこやかにパンダは答える! ヨランダはフルフルと震える手で、そっと写真を懐へと仕舞う。


「で、こっちの真っ白なワンちゃんがローゼリッタさん。同じく七大騎士の一人で、妖精の国ではどんな猛獣も乗り回す天才なのよ!」


「今は私が猛獣……もとい、毛の獣と書いて毛獣(もうじゅう)だがな」


「ふふ、面白いでしょうーっ、ちなみにこれがローゼリッタさんの写真ね」


 再び写真を受け取るヨランダ。金髪のショートヘアーに可愛らしい顔をしたロリっ子。何故こうもギャップがあるのか。

 その写真もそっとヨランダは懐へと。


「今度、私も妖精の国に行ってもいいですか? いいですよね? いきますね?」


「食い気味のところ申し訳ないけど、妖精の国に入れるのは妖精と人間だけなのよ」


 ローゼリッタの言葉に打ちのめされるヨランダ。しかしポマさんは首を傾げる。


「ヨランダ先生、人間でしょ? なんでそんなに落ち込んでるの?」


「うっ……ポマさんを騙し続けるのはちょっと心が限界なので言いますけど……私、本当は竜なんです……。でも生徒に勉強を教えたくて、つい変身魔法を使ってここに……! 決して後ろめたい事はありませんが、やっぱり竜が人間に勉強を教えるのはちょっと……抵抗があって……」

 

 竜と聞いてポマさんは首を傾げながら


「別にいいんじゃない? 私だってレッサーパンダだけど子供達のお世話させてもらってるわ。でもヨランダ先生の本心は別のところにあるんじゃないかしら」


「……べつのところ?」


「竜の姿で学校に来たら……子供達は勉強どころじゃないもの。だからあの子達のために、人間の姿で来てくれたのよね? 私はそんなヨランダ先生の優しい所、大好きだわ」


 なんだ、このレッサーパンダの形をした天使は……とヨランダは泣きそうに。いや、もう泣いている。ボロボロないている。そのままの勢いでポマさんへと抱き着くヨランダ。


「うおおおおおおん! ポマさん! おかあさん! ママ!」


「はいはい、分かったからドレス作りましょうねー?」


 その時、ヨランダの首元からスルリと降りるノチェ。


「じゃあワシは外に出ているぞ、ヨランダ。あぁ、それとこの写真は返しておく」


 ヨランダが懐へと隠した写真をパンダに尻尾で渡すノチェ! ヨランダはさっきよりも号泣するがそれはさておき、ドレス作りが始まるのであった。



 

 ★☆★



 廊下へと出たノチェ。するとそこには意外な顔が。


「ん? どうしたダフィネル。ヨランダなら中だぞ」


「……ドラゴニアスもか?」


「あぁ。あの子の変身魔法には欠かせないからな。なんだ、今更、あの魔導書に用があるのか?」


「少しな。ところでノチェ。俺が人間と結婚したいと言ったら、どう思う?」


「なんだ、いきなり。そんな事、今更……って、ええええええええええええ!!!!」






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