オープンチャットは気を付けろ。聞かれてるぞ
毎日たくさんの方からの評価を頂いており、本当に嬉しい限りです。
昨日確認してみたら、現実世界恋愛で日間5位になっていました。皆様の評価のおかげです。本当にありがとうございます、
これからもよろしくお願いします。
「れいちゃん。別に彼氏が他の女と喋ってたっていーじゃーん」
「カップルじゃないわ」
何故か麗華と泉桃花が座って、翔太が立って話をすることになった。二人には教室中から注がれる視線に気づいて話をやめてほしいなーと思っているが、麗華の様子的にそれはないだろう。しかも、泉桃花はこの状況をわざと起こして楽しんでいる可能性すらある。
「じゃあ何?」
「そうね……。夫婦って言うとちょっと感じが違うかしら。新婚さんの方がしっくり来るわね」
「お、おいっ。麗華!?」
麗華が突然新婚なんて言葉を使うから、明らかに泉桃花が何言ってるのか分からないみたいな顔をしていた。翔太も友達から突然そんなことを言いながら女性を紹介されたら理解できないだろう。そもそも翔太に友達はいないが。
確かにゲーム内では結婚してるが、それを他の人に行っても現実で婚姻届けを出して結婚したのかと思われるだろう。
「え、し、新婚……?れ、れいちゃん?」
「どうしたのかしら?そんな未確認生命体を見るような目をして」
「そんな目してないよ!で、でも……新婚?どういうことなの。君」
麗華に聞くよりも翔太に聞いた方が話が通じると思ったのか、目の前に座っている麗華ではなく、翔太に向かって話しかけてきた。
「ど、どういうことって言われてもな……。そうとも言えるし、そうじゃないと言えばそうじゃないし」
「なにそれ?」
「いやー。説明するのが難しくてさ」
翔太の目の前にいる相手は、見るからにゲームとかとは無縁の存在。そんな相手に「ネトゲで結婚して~」なんて言っても、逆にこいつらは何を言ってるんだとなるだろう。
「私たちは結婚してるわ。それは紛れもない事実よ」
「どういうこと……?」
「話すと長くなるんだが……」
キーンコーンカーンコーン。
どうやってわかりやすく説明しようかと考えていると、三時間目始業のチャイムが鳴ると同時に、担当教科の先生が教室に入ってきた。
「悪い。続きは次の休み時間でもいいか?」
「はーい!楽しみにしてるねー」
「翔太君」
「ん。どうした?」
「彼女と喋っていたこと、許してないわよ」
「うす…………」
それだけ言うと麗華は翔太の席を立って自分の席へ戻って行った。
翔太の心の中に、物凄く小さいが、何かしこりのようなものができた気がした。
キーンコーンカーンコーン。
「はい授業終わり!説明説明!」
授業が終わって先生が教室から出ると、すぐに泉桃花が振り向いて翔太のことを逃がさまいとした。
「ああ。俺と麗華はな……」
「うんうん」
翔太は授業を聞くふりをしながら、ずっとどう説明すれば不自然に思われず、泉桃花からの興味を無くすことができるのか。
「実は、俺たちは……。親同士が決めたお見合いで……」
「何を言っているのかしら?翔太君」
流石に無理がある考えだったようだ。
後ろから麗華の声がして振り返ると、そこには翔太の右後ろで仁王立ちしている麗華がいた。顔は作り笑いのようなものを浮かべているが、目は完全に笑っていない。
「いや、こ、これは……」
「どうして嘘をついているのかしら?」
「え、嘘なの?」
「でもこの人に本当のこと言っても、多分理解できないだろ?」
「問題ないわ。ねえ桃花」
麗華の圧に負けた翔太は、また麗華に席を譲って、立って話を聞くことにした。
「なーに」
「私と翔太君はね。本当に結婚してるのよ」
「え?でも結婚できるのって18からでしょ?無理じゃん」
「私たちは結婚したわ。ワイバーンクエストXでね」
言ってしまった。現実で「私ゲームで結婚したの」なんて言ってくる人がいたら、普通の人ならまず疑うだろう。悪い大人に騙されてるんじゃないか、ただの遊びなんじゃないかと。
それを危惧して本当のことを言わなかった翔太だったが、それは杞憂に終わった。
「え!?じゃあ目の前にいる翔太君が、あのれいちゃんがいっつも言ってるショー君なの!?」
「え!?知ってるのか?」
「うん!いっつもれいちゃんから聞かされてたもん!」
どうやら麗華と泉桃花は、翔太の思っている以上の仲らしい。
「私たちの仲?中学校が同じだったんだ!二年生の時から同じで、すっごい話しかけてやっと返事してくれるようになったんだよ」
「へー。あの氷のアイドルとまで言われてる麗華がな。で、麗華は俺……。ゲーム内の俺のこと、話してたのか?」
「うん!それはもうすっごくね。あれは中三に上がったころだったかな~。珍しく自分から私に話しかけてきて、相談があるって言われてさ」
「桃花。それくらいでもういいんじゃないかしら?」
麗華から静止の声が入るが、泉桃花はやめる気が無い。それどころか、どこか楽しそうな表情すら浮かべている。それにどこか麗華の顔がいつもより赤い。
麗華が自分の昔の話。それも翔太に関する話をされるのを恥ずかしがってるんじゃないかと思うと、翔太は余計に続きが聞きたくなった。
「続きを頼む」
「翔太君!?お、面白い話じゃないと思うわよ」
「それは俺が決める」
その後、どうしても聞かれたくない麗華を抑えるために、三時間目の休み時間は全て使ってしまい、話の続きは昼休み。お昼を食べながらすることとなった。
「あー。そういや昼飯どうしよ。相変わらず廊下には知らない上級生が沢山来るしな……」
四時間目が終わり、昼休みになって教室が一気に騒がしくなった。
「しょーくん!話の続きしよ!」
「し、しょーくん!?」
振り返って話しかけてきた泉桃花の予想外の一言に、翔太は思わず大きな声を上げてしまった。周りも騒いでるおかげで目立つことはなかったが、そんな翔太の反応に一人、敏感に気づいた人がいた。
「うーん。だめだった?私、仲いい人はあだ名で呼ぶんだ。ほら、れいちゃんとか」
「仲いいのか?俺たち」
「これから仲良くなるの!だってれいちゃんの旦那様だもん!」
「旦那様はやめてくれ。むず痒い」
「……楽しそうね。桃花。私の翔太を馴れ馴れしくあだ名で呼ぶなんて」
麗華が突然泉桃花の後ろに現れて肩を掴んで声をかけた。
翔太はずっと泉桃花の方を向いていたが、麗華が近づいてくる気配すら感じなかった。
「ひっ。れ、れいちゃん?い、痛いよ。肩、い、いたたたたたたっ!」
麗華の掴む力は強く、泉桃花の肩には指が食い込んでおり、翔太は身の危険を感じて一旦トイレにでも避難しようかと考えたが、席を立とうと少し動いた瞬間に、麗華と目が合った。
まるでロックオンしたかのような麗華の目に、命の危険を感じた翔太は大人しく座っておくことにした。
「……まあ、半分冗談よ。あなたが人のことをあだ名で呼ぶのは知っているもの。ただ、それはそれとして私よりも先にあだ名で呼んだことは許せないわ」
「ご、ごめん!じゃあ翔太君って呼ぶ!」
「別に無理して呼び方を変えなくていいのよ。ただ、一時の怒りをぶつけさせてもらうわ」
「理不尽!?」
理不尽だと翔太も思ったが、大人しくしておくことにした。
「……ふう。落ち着いたわ。それじゃあ、お昼にしましょうか」
「ああ……と言っても、俺今日昼飯買ってくるの忘れてさ。ちょっと購買行ってこようと思うんだけど、泉さん、ついて来てくれないか?一人じゃ不安で」
「え、何で私?れいちゃんは?」
「麗華だと逆に目立つ。知ってるだろ?今の俺の男子からの好感度。麗華と行ったら誰かに見られた瞬間終わりだ」
一度、朝の副会長を呼ぼうかとも悩んだが、流石にこんなことのために副会長を呼ぶのは失礼だと思いやめておいた。
「あー。確かに。じゃあ行こっか!」
「その必要はないわよ」
翔太が自分のリュックから財布を探していると、麗華にその手を止められた。
「はい。これ。翔太君の分」
「…………え?」
そう言って麗華は翔太の机の上に布で包まれた弁当箱を置いた。
状況を飲み込めずにいると、人のいない近くの席から椅子を翔太の机まで持ってきて、麗華が座って、自分の手に持っていた、翔太のと同じ色の布に包まれた弁当箱を机の上に置いた。
「え、作って来て……くれたのか?」
「ええ。お昼も翔太君に食べてもらいたくて」
「へー!れいちゃんの愛妻弁当。いいねえー!」
「ありがとう。嬉しいよ」
「翔太君が何が好きなのか分からなくて……。お口に合えばいいのだけど」
「目の前でイチャイチャするねー!妬けるねー!」
麗華のお弁当は、定番の卵焼き、から揚げ、昨日の夕飯のハンバーグとはまた違った美味しさで、今日も一瞬で食べ終わってしまった。
そして満腹の状態で襲い掛かってくる眠気に耐えたり耐えられなかったりして午後の授業を済ませると、いつの間にか帰りのHRになっていた。
「それじゃ、連絡事項は以上だ。うーん……。うん。以上だ」
先生がどこか機嫌の悪そうな顔で連絡事項を言い終えると、帰りの挨拶となった。
「起立、気を付け。礼」
「翔太君。一緒に帰りましょう」
急いで生徒会室に行こうと思い挨拶をしてすぐに翔太はリュックを背負って教室から出ようとした。だが、リュックをしょってすぐに後ろから麗華に声をかけられてしまった。
「あー。悪い。俺今日はちょっと学校で用事あるんだ。先に帰っててもらってもいいか?」
「どんな用事かしら?」
「なんか呼び出されてるんだよ。悪いことじゃないと思うんだけど、一人で来いって言われてるんだ。悪い」
行き先まで言えば、麗華は絶対にこっそりついてくるだろう。
「……わかったわ。じゃあ桃花。一緒に帰りましょう」
「いいよー!れいちゃんの家行っていい?」
「それはダメよ」
「ひど!いいじゃーん。まあいいや帰ろっか」
二人で教室から出ていくのを確認してから、翔太は一人で生徒会室まで向かった。
正直一人で廊下を歩くのはいつ襲われるかと怖かったが、視線を向けられるだけで直接何かされることはなく、生徒会室に着いた。
コンコン
「誰だ?」
「小野翔太です。言われた通り来ました」
生徒会室の扉をノックすると、扉越しに朝会った副会長の声が聞こえた。そして自分の名前を言うと、すぐに扉が開いて、相変わらずのイケメン副会長が出てきた。
「やあ。悪いね、突然放課後に」
「いえ。それで、俺はなぜここに?」
「まあまあそれは入って話そうか。会長が待ってるんだ」
「会長……?」
生徒会長……。興味が無くて名前は思い出せないが、確か一人だけの会長選挙で会長になって、今期生徒会になっても聞く話は全部副会長の物で、会長の話は一切聞かない。
「じゃ、僕はちょっと用事があるから、後は会長と二人で」
「え、ちょまっ……」
まるで逃げるように副会長は生徒会室から出て行って廊下をどこかへ歩いて行った。
翔太は猛烈に嫌な予感を感じていた。わざとらしく二人きりにされた感じがして、どこか計画性を感じる。
「し、失礼しまーす。小野翔太です」
「小野翔太君。君に会いたかったよ」
本当にこれだけの評価を、投稿後すぐに頂くなんてこと初めてで、自分でも毎日投稿するのが楽しみでもあり、怖くもあります。
ただ、皆様の期待に応えられるような作品を、これからも書いていきたいです。
☆が★になると、クイックアーツで攻撃力が二段階上昇して投稿スピードが上がります(?)




