序盤の頼れる味方には大体なにかある
お久しぶりです。忙しすぎて書けてませんでしたが、段々と再開していきます。
不定期にはなるとおもいますが、これからもよろしくお願いします。
「お待たせ二人とも」
「全然だいじょーぶ!さ、行こ!」
「翔太君。何だか浮かない顔をしているけれど、どうしたのかしら?」
「別に、何でもない」
副会長の言ってきた言葉の意味が、翔太にはよく理解できなかったが、それでも、心の中に何か大きな不安のようなものが生まれた気がした。まるで、これから先、何か大きな出来事に巻き込まれるかのような。そんな不安を抱いた。
「何にしようかな……」
三人は学校近くのショッピングモール内のフードコート。その中にあるミスドーナツの前で、何をしようかと選んでいた。
「こういうところって、種類が多くてつい悩んでしまうわよね」
「だな。でも俺は、いっつも悩んでると邪魔かなって思って、適当なのにしちゃうんだよ」
「それわかる!だから私はいっつも事前に何食べるか決めてるよ!」
「でも、決めてたの以外も買っちゃうんだろ?」
「なんでわかったの!?」
「そういう性格してるからな」
「なにそれー。なんだかすっごい仲良しみたいじゃん」
最初は麗華と話していたはずなのに、いつの間にか会話に加わっていた桃花との会話がメインとなっていた。
自分からグイグイ話す性格だからか、話題が続きやすく、会話がしやすい。だから自然と会話の量が多くなる。だがそれを、交際二日目の麗華が許すはずもなく……。
「れ、麗華さん……?」
「翔太君。私のことを放って他の女と楽しそうに話をするなんて、許せないわね」
麗華は翔太の腕を掴んで、自分の方へ引き寄せた。
その力は女子が出せる物とは思えないほどに強く、メキメキと擬音が聞こえてくるような程だった。
「痛いっ!痛い痛いっ。麗華。めり込んでる。めり込んでるから」
「あれー。嫉妬しちゃった?いやー、アツアツカップルは凄いねー」
「ごめん。でも、嫉妬してる麗華。なんだか可愛いな……」
可愛いという言葉に反応して、麗華の掴む力は緩められて、今度はその掴んでいた腕を、体が密着するほどに組んだ。
「翔太君……」
付き合いたてのアツアツカップルである二人は、どこでもこうして、自分たちだけの空間を作り上げ、周辺に甘々オーラをまき散らす。
まだドーナツを食べていないのに、桃花の口の中は、もうドーナツを食べた後のような甘さに包まれていた。
「私、帰っていい?後は二人でお幸せにねー」
「まってまってごめんごめん。ほら、早く決めよう」
帰ろうとした桃花を呼び止めて、三人はやっとドーナツ選びを再開した。といっても、桃花は元から帰るつもりは無く、ただ今の二人だけの空間を変えたかっただけだが。
結局その後も数分間悩んで、それぞれ食べたいものを選んで、桃花買ってもらい、フードコート内の空いている席に座った。
「ありがとう。桃花。いただきます」
「ありがとうね。いただくわ」
「いーのいーの。二人のお祝いだからね。でも、その分色々話聞かせて貰うからね」
◇◇◇
「へー!観覧車の中でねえ。いいねー。テンプレだねー」
麗華は、自分が告白された時のことを、目を輝かせて、興奮した様子で桃花に話しかけていた。
それを聞く桃花は、にやにやとした表情で、翔太のことをちらちらと見ていた。
「あの時の翔太君。とっても格好良かったわ。余計好きになったもの」
「恥ずかしい……消えたい……」
ドーナツを食べながの最初の話題は、告白した時のことだ。
あの時はアドレナリンのようなものがあったからああして告白したが、今思い返すと、格好つけてかなり恥ずかしいことを言っていたと、顔が真っ赤になってしまった。
「あははっ。でも格好いいじゃん。いいなー。そういう告白。で、麗華はどうOKしたの?」
「そっ、それは……」
自分が告白されたのは人に話せるのに、どうOKしたのかは話せない。麗華も翔太と同じように、自分の返事の仕方が、今になって恥ずかしくなってきたのか、段々と顔が赤くなってきた。
「いやー。あの返事は凄かったな。あの衝撃、感触。まだ残ってるよ」
「え、どんな返事だったの?気になる!」
さっき言われた仕返しにと、翔太は少し笑いながらあの時のことを思い出して答えた。
「キスされたんだ。唇に」
翔太の唇には、まだ告白した日のあの返事の感触が、感覚が、色濃く残っている。いや、翔太はあの返事を、一生忘れることはないだろう。
「ええっ!大胆!れいちゃん凄いね!私じゃそんな返事できないよ」
「恥ずかしいわ……消えたい……」
元々赤かった顔は、沸騰しているんじゃないかというくらいに真っ赤になり、そのまま顔を隠すように俯いた。翔太には、ぷしゅーという擬音と共に、麗華の頭の上に煙が見えたような気がした。
「わ、悪い麗華。言わない方がよかったよな……」
「い、いいのよ別に。いずれ桃花には聞かれていたことだったでしょうし」
「凄いなぁー。もう次の予定とかは決めたの?」
告白した時の話題は終わり、次の話題はこれからのことに移った。
「予定って、なんの?」
「そりゃあデートのことだよ。付き合う前と後でのデートって、凄い違いだよ。早く予定決めちゃいなよ」
「確かに、それもそうかもな。どうする?麗華」
「いいと思うわ。折角の付き合って初デート。しっかりエスコートしてくれるのよね?」
もう大丈夫なのか、顔の赤さが収まった麗華が、楽しそうな声で翔太のことを見つめていた。
「お、おう。そうだな……」
てっきり翔太は、麗華が、「もう結婚しているのだから、何だか特別味がないわね」というかと思っていたが、どうやらあの麗華でも、恋の魔法には勝てないらしい。
「お、これは責任重大だね!記念のデートなんだから、今回は私、力貸さないからね」
「勿論。そのつもりだ。自分の力で麗華を満足させないと、男としてのメンツが立たないからな」
「カッコイイ!だってよれいちゃん。楽しみだね」
「そうね。いつ来てもいいように、毎日予定を開けておかないといけないわね」
「いやいや予定はちゃんと合わせるよ。それじゃあ帰ったら早速、予定を考えないとだな」
「私は力貸さないけど、ネットとかを頼りにするのはいいと思うよ。あくまで参考程度にだけどね」
「ああ。ありがとう桃花」
もうとっくにドーナツを食べ終わっていたが、三人の話題は尽きることなく、一時間ほどフードコートで話をした後で、解散となった。
「それじゃあまた明日」
「ばいばーい!あ、何か進展したら教えてねー!」
「気が向いたらするわ」
翔太と麗華は二人だけになったことで、しっかりと手を繋いで、駅まで歩いた。
◇◇◇
「お嬢様。体調はいかがでしょうか」
「もう大丈夫。明日から学校にも行くとお父様に伝えておいて」
「はい。かしこまりました」
「……計画を練り直さないと」
真っ暗な部屋……というには大きすぎる部屋の中で、雫は一人机に向かっていた。
時刻は丁度昼の十二時。
昨日、神宮寺家の力を使って二人のデートがどうだったかを調べていた雫は、観覧車内での会話は流石に分からなかったが、その後の様子で、二人が結ばれたということを察してしまった。
雫にとってこれは予想外だった。雫はもっと時間をかけて、アドバイスを送る立場として距離を縮めていくつもりだった。それくらいしか、二人の接点がなかったからだ。
だが、翔太は思った以上に積極的に動き、予定よりも早く結ばれてしまった。が、結果自体は雫の予想通りではあった。
翔太と麗華は結ばれ、恋人として幸せな時間を過ごす。
だからこそ、雫の目的はその先にある。
「最後に私のところにくれば……いい」
ゲーム内で結婚している昨日までの関係には、雫には壊せない強さがあった。現実での関係ではないからこその、特別な関係から生まれる繋がりがあったからだ。
だが、付き合っているただのカップルなら、その繋がりは当人達の思っている以上に脆い。
そこを突いて、最後に自分の元に翔太が来てくれれば、それでいいと雫は思っている。その途中で、誰と付き合おうともだ。
だからこそ、雫は冷静に、計画を練り直していた。
数時間後。その日初めて部屋から出てきた雫を見た使用人は、その異常とも言える笑顔を見て、心の底からの恐怖を感じ、その記憶を、気のせいだと自分の中だけに封じ込めた。
◇◇◇
☆が★になると……どうなるんだろ。
この後書きも久しぶり過ぎて、何を書けばいいのか全く分からなくなってしまいました。




