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パスワードはかけておけ。油断した頃に敵はやってくるぞ

今回少し短めです。すみません。

「これで一通り買ったが、何か足りない食器はあるか?」

「これで大丈夫よ。本当にいいのかしら?お金。全部出してもらって」

「ああ。俺は作ってもらうんだから、これくらいはな」


 一通りの食器を買った翔太は、割れないように気を付けながら、慎重に持って帰った。



「じゃあ、俺は少し片づけて物入れられるようにするから、三十分後くらいに来てくれ」

「わかったわ。それじゃあ」


 家に帰ると、翔太は部屋の前で麗華と別れて、一人で部屋に入った。

 入ってすぐの玄関に買った物を置くと、すぐに準備を始めた。

 キッチンに新しく物を置くための場所を作り、リビングで何か見られたらマズい物が無いかを確認して、念のためにPC内にあった夜のお供も、全て一旦削除して、再ダウンロードしないと見れないようにした。検索履歴も全て消した。


 そして三十分後。

 ピンポーン


「翔太君。来たわよ」

「悪い。待たせたな……って何それ?」


 チャイムを押して部屋に来た麗華は、大きな段ボールを持ってきていた。


「調理機材よ。一々隣まで移動して運ぶのが面倒だったから、まとめて持ってきたわ」

「ああ。ありがとう……。じゃあ……とりあえず、入ってくれ」


 翔太は初めて、麗華……異性を部屋に入れた。同性も入れたことはないが。


「おじゃまします。それで、そういう本はどこに隠したのかしら?」


 麗華は部屋に入ると、段ボールをキッチンに置いて、リビングに入った。自分の部屋に誰かを入れるなんて初めてだった翔太は、麗華の後ろで内心かなり恥ずかしがっていた。


「隠してないし持ってないわ!俺は電子書……なんでもない。とにかくいくら探しても無いぞ」

「そう……。じゃあ、あそこのデスクトップパソコンを確認するわね」


 思わず電子書籍派だということを言ってしまって、途中で切ったが、麗華にはしっかりと意味が伝わっていた。すぐに麗華はPCが置いてある机の方へ行って、電源を付けようとした。


「おい」

「妻として、夫の好きなプレイを知っておこうとしただけよ」

「なんでそんな当たり前のように言えるんだ……。やっぱり麗華の部屋にテーブル運ぼうかな」


 これから毎日麗華を家に入れていたら、いつか自分の目を盗んで本当に見つけるんじゃないかと思った翔太は、もう麗華を部屋に入れるのをやめようかとすら思った。


「全部冗談よ。人のパソコンを勝手に見たりしないわ」

「本当か?」

「ええ。それは最終手段だもの」

「なんだ最終手段って」


 これまで翔太は自分しか使わないからとPCにパスワードをかけていなかったが、麗華が帰ったら絶対に自分にしか分からないパスワードをかけることにした。


「それじゃあ早速、キッチンに物を置きましょうか」

「そうだな。見た感じダンボール大きいけど、全部しまえるかな」

「私の部屋で入っていたんだから、大丈夫よ」

「じゃあ、取り出すか」


 翔太がキッチンに置いてあるダンボールを開けると、中には、メジャーな物から、見た目は分かるが名前は知らないようなものまで、多種多様な機材が入っていた。


「凄いな。絶対一人暮らしで使う機材の量じゃないぞ」

「新しい物を買うと、それだけレパートリーが増えて、楽しくなるのよ」

「へえ。それはこれからの夕飯が楽しみだ」


 見た目が大きい物もあり、全部入るか怪しかったが、入れてみると麗華の収納が上手なのか、意外と綺麗にスペースを残して収納が終わった。


「次は食材と調味料を持ってくるわね。冷蔵庫、二割ぐらいしか埋まってないのだから、大丈夫よね?」

「ああ。そういえば調味料は簡単な物しか持ってなかったから、助かる。やっぱり料理する人は調味料にもこだわるのか?」

「私はそうでもないわよ。便利な物は使うわ。変に使いどころに困る粉を買っても、余らせて捨てるだけだわ」

「あー。わかるわかる。俺も小学校の時、調理実習のために買ったカレーパウダー。結局一度も使わずに気づいたら期限切れで捨てられてたわ」

「小学校の時の翔太君。気になるわね」

「別に。ただの小学生だったよ。今みたいにネトゲにどっぷりってわけじゃなかったし、普通に誰とでも喋るクラスメイトって感じ」


 まだ友達が多く、毎日のように放課後外で遊んでいた。そんなの輝いていた小学校時代を、翔太は懐かしんでいた。

 すぐに麗華は今夜使うであろう食材と、一通りの調味料や油なんかを持ってきて、冷蔵庫やキッチンにしまった。どうせ使うのは麗華だから、場所が分かるようにと、翔太は待っているように言われ、大人しくリビングで座って待っていた。

 そして戻ってきた麗華は、翔太の前に座った。


「翔太君。一つ、私のお願いを聞いてくれないかしら」

「ん。どうした?」

「少し待っていて」


 それだけ言うと麗華は部屋から出て行った。

 そして数分後。玄関の扉が開いて麗華が入ってきた。肩に白いトートバッグを持って。


「お願いってそれか?」

「ええ。テーブルの上を借りてもいいかしら?」

「ああ。いいが……。一体何をするんだ?」


 麗華はトートバッグをテーブルの上に置くと、中から自分のノートPCと電源コードを出した。それを出した瞬間。翔太は何がしたいのか分かった。


「なるほど。でも困ったな。本当は並んだり向かい合ったりしてやりたいのに、俺のはデスクトップだから移動できない」

「別に、直接話しながらやりたいだけだから大丈夫よ。それに、私からなら翔太君の横顔は見えるもの」

「分かった。じゃあやるか。こっちのWiFi繋ぐか?壁越しだと少し弱いかもしれないし」


 麗華はノートPCを開くと、慣れた手つきでパスワードを解除して、すぐにワイXを起動した。麗華のノーパソがどれくらいのスペックなのか翔太は知らないが、PCを起動してすぐに起動したからか、若干ラグそうだった。


「そうね。じゃあネットを借りてもいいかしら?」

「ああ。これ、パスワード」


 スマホにメモしておいてあるパスワードを麗華に見せて、それを打ち込むのを待っている間に、翔太も自分の椅子に座って、デスクトップPCの電源を付けた。

 起動してしばらく経つと、翔太もワイXを起動して、そのままメインキャラでログインした。ログインすると、夜中に二人で話をしたフィールドにポップした。目の前には、昨日ログアウトした時と同じ位置にレインがいる。


『やっほー!』

『www』


 相変わらずのゲーム内とリアルでのテンションの差に、思わずチャットの方で反応してしまった。


「じゃあ、今日は何をするんだ」

「そうね……。まずは日課でもこなそうかしら」

「そうだな。でもまずはここにいると近づいてきた敵と戦闘になる可能性があるから、一回家帰るか」


 二人ともそれぞれの家の前に転移して、一度装備を確認してからまた集合した。といっても、二人は隣同士に住んでいるから、ほとんど移動はしていない。


「どうしましょう。ただの日課なのに、翔太君と一緒だと思うとどんなイベントよりも楽しみだわ」

「なんだそれ……。でも確かに、こうして一緒に喋りながらやってると、何だかいつものワイXより何倍も楽しい」

「この前ネットカフェでやった時は、お互い緊張していたものね」


 雑談をしながら、二人で日課のボス討伐をこなしていく。実際に喋っているからか、会話は途切れることなく、二人はずっと喋りながらワイXをしていた。


 ◇◇◇


「そろそろ一旦やめましょうか。キッチン、使うわね」

「ああ。じゃあ俺は……。何もしない方がいいよな。大人しく待ってるよ」


 麗華は一人でキッチンに行くと、カチャカチャと音を立てて料理を始めた。

 翔太は麗華がいなくなった隙に、自分のリュックから買った猫耳の置時計を取り出して、テーブルの上に置いた。本当はもっとしっかりとした場所に置きたかったが、機能性重視の翔太の部屋に、小物を置けるような場所はテーブルか、翔太の机しかなかった。

 だが、翔太の机の上ならパソコンで時間確認できるから必要はない。消去法でテーブルの上になった。


「うーん……。待ってる間にゲームでもするか」


 翔太は椅子に座ってゲームにログインし直した。一人で部屋のハウジングをしていると、いつの間にか時間を忘れてやっていた。


「翔太君。できたわよ」


 家具の位置を調整していると、リビングの扉が開いてエプロン姿の麗華が入ってきた。


「ああ。ありがとう。すぐ行くよ」

「何をしていたの?」

「ちょっとハウジングをな。ハウジングってほんと時間忘れてやっちゃうんだよ。自由度高すぎて」

「それには同意するわ。コンセプトを決めるだけでも時間がかかるわよね」


 二人でワイXの話をしながら、麗華が作った料理を食べる準備をした。


「今日はシチューか。楽しみだ」

「そう言ってくれると嬉しいわ。それじゃあ食べましょうか……」


 シチューとご飯をお盆に乗せてテーブルの上に置いて、さあ食べようというところで、麗華の動きが止まった。

 その視線は、翔太がテーブルの上に置いた置時計に向いていた。


「これ……」

「ああ。そういえば部屋に置時計なかったなって思ってな。麗華が見てたから、これにしたんだ」

「見ていたのね……嬉しいわ」


 麗華は置いてある置時計を手に取って、眺めていた。翔太は嬉しがる麗華を見て、何だか自分まで嬉しくなった。


「麗華に渡してもと思ったんだが、これからここで夕飯食べるなら、ここに会った方がいいかなと思ってな。どうせ、この部屋に入り浸るだろ?」

「……否定はしないわ。少なくとも、ノートパソコンはここに置いておくつもりよ」

「おい……。まあいいが」


 堂々とこの部屋に入り浸る宣言をした麗華だが、翔太はその発言に、どこか嬉しさを感じていた。

この元になったゲームが好きでコンセプトにして物語を書き始めたのに、これを書くために最近ゲームをする時間が無くなって来てて悲しいです。でも幸せならOKです。


☆が★になるとメラ〇ーマで目の前にある誘惑を焼き尽くして投稿ペースが上がります(?)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ゲーム動画あるあるですね。 紹介したいゲームの動画を作るとゲームする時間が減ると言う。 X-comやステラリスで思い知りました。 どっちも時間泥棒なのに動画も…。
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