序盤に出てくる謎多きキャラは大体○○だ
ごめんなさい。一話投稿です。普通に寝てて書けませんでした。
「なんかしょーくん変わったね」
「ん。なんだ急に」
授業の休み時間に次の時間の準備をしていると、前に座っている桃花に突然話しかけてきた。
「何だか昨日と比べて雰囲気変わってない?カッコよくなってる!」
「悪いが俺は桃花に興味はない。悪いな」
「そんなんじゃないよ!もー……。褒めてるだけなのに」
「人間一日じゃそう変わらない。ただの気のせいだろ」
「そうかなあ……」
カッコよくなっていると言われて、翔太は内心かなり嬉しかった。麗華以外の異性からそんなことを言われたこと自体が初めてだし、麗華と違って桃花は翔太に対して特別な感情を抱いていない。そんな相手からの褒め言葉なら、本心からなんだと思えた。
「なんか昨日よりも自信に満ち溢れてる感じがするんだよね」
「あー。確かに、自信というか、やる気に満ち溢れてるかな」
「へー。あ!れいちゃん関連でしょ」
「……まあ。俺も男だからな」
「いいねー!カッコイイねー!それでこそれいちゃんが惚れた相手!」
「あんまりそういうこと言うな。照れる」
「あははっ。私の言ってることは全部本当だよ。昨日よりも男らしくなってる。そうじゃないとれいちゃんは任せられないよ」
桃花の最後の一言には、他のどの言葉よりも力が籠ってる気がした。
この過保護な友達のためにも、絶対に麗華は悲しませられないなと、翔太は決意した。
「二人とも楽しそうね」
二人で話をしていたからか、麗華が来た。何だか毎時間、この三人で話をしている気がする。
「れいちゃーん!今しょーくんがカッコイイって話してたの」
「それは当然のことよ。で、どうして桃花が翔太君のことをカッコイイと言う必要があるのかしら?」
「だって昨日とは雰囲気が違うもん!れいちゃん何かした?」
「私は何もしていないわ。逆に、何かされた方かしらね」
「な、何かされたのっ!?」
「へ、変なことは何もしてないぞ!」
含みのある言い方をした麗華に、桃花が反応して翔太の方を見てきた。確かに何もしてないわけじゃないが、その言い方だと確実に誤解を生むだろう。
「えー。何したの?気になる~」
「別に。少し話をしただけよ」
「またまた~」
二人が話しているのを聞きながら、ぼーっとしていると、翔太の視界の端に、見覚えのある人が見えた。
「悪い。ちょっとトイレ」
教室から出ると、その人物はまるでこっちに来いとでも言うかのように振り向いて、廊下を歩いて行った。
「何の用ですか?」
「いやいや。偶然廊下を歩いていたら目が合っただけさ」
廊下で翔太のことを見ていたのは、副会長の源五郎だった。
「三年生が二年生の教室の前を偶然ですか。それに、俺が気づくよりずっと前から見てましたよね?」
「さっすが、鋭いねー。そうだ。今日は君に伝言を伝えに来たんだ」
「伝言?」
副会長が伝言に来るとしたら、その伝言を頼んだ相手は誰なのか、翔太には分かっていた。今日は何を言われるんだろうという恐怖心はあったが、今の自分なら大丈夫という自信もあった。
「昼休み開始十分後。生徒会室に来るように。だとさ」
「はあ。わかりました」
「おや。えらく物分かりがいいね。昨日あんなこと言われたのにいいのかい?」
「もうあのことは吹っ切れました。どうせ生徒会長もそのこと知ってて呼んでるんですよ」
「へえ。それは面白いね。話が終わったら僕に何を話したのか聞かせてくれよ」
それだけ言うと副会長は何も言わずに廊下を歩いて、そのまま廊下の人混みに消えて行った。
「考えときます」
翔太は今更何か考えることはせず、ただ昼休みが来るのを待った。
「ごちそうさまでした。ごめん麗華。ちょっと先生に呼ばれてるから席外す。五時間目までには戻ってくる」
昼休みが始まって八分。急いで朝買った昼食を食べた翔太は、ごみを袋にまとめてスマホだけ持って教室から出ようとした。
「本当は?」
「本当さ」
「嘘よ。声に自信が無いわ。どこへ行くのかしら?」
だが、歩こうとしたところで、腕を掴まれた。掴まれた方を見ると、麗華がジーっとした目で翔太のことを見ていた。
「はあ……。会長に呼ばれてるんだ。悪い」
「そう……。大丈夫なの?」
昨日あったことを麗華に話したからか、麗華は心配そうな顔をした。だが、今の翔太には昨日のようにはならないという自信があった。
「大丈夫だ。笑顔で帰ってくるさ」
「そう、分かったわ……」
「え、なになに?何の話?」
コンコン
生徒会室に着くと、すぐに扉をノックした。
「入って」
昨日のように副会長が来るのではなく、扉越しに生徒会長の声が聞こえてくるだけだった。
「失礼します」
「忙しいだろうに悪いね」
生徒会室に入ると、雫は自分のデスクの上でコーヒーを飲んでいた。なぜ校内でティーカップとポットと、コーヒーパックを生徒が使っているのかは、聞かないことにした。
「いえ。暇してたんで大丈夫です」
「そうかな。今は忙しいんじゃない?この結果には、私も思わず声が出た。私が言ったことを本人に伝えた上で、好きにさせてみせると言うとはね」
「やっぱり知ってましたか。全部知ってるんですか?」
「私が知っているのは電車の中と、登校中のことだけ。流石に家の中での会話までは分からない。あなたの家の隣にでも引越せば、それもわかるけど」
そう言った雫の顔は、冗談を言っている顔ではなかった。それに、この人ならやるだろうと、翔太は思った。
「それで、今日は何の用なんですか?」
「別に用なんてない。ただ、褒めたかっただけ」
「褒める?」
「ええ。あなたの未来が、余計楽しみになった。私の想像以上に」
「未来って、どうして俺の未来を生徒会長が気にするんですか?」
「雫って呼んで。生徒会長だと距離が遠いわ」
「はあ。雫先輩」
翔太の未来を、どうして会ったばかりの生徒会長が翔太の未来を気にするのか。守りたいという理由で噂をなかったことにしたのか。雫は自分から語らないが、どうしてもその部分が気になっていた。
「で、次は何をするの?」
「次?」
「桜麗華に好きと言わせるなら、何か行動を起こさないと」
「ああ。そういえばまだ何も考えてなかったな……。次の週末にでも、一緒に出掛けてみます」
「それは楽しみ。ちなみにどこに?」
「言いませんよ。絶対尾行や、それに近い何かが来るじゃないですか」
尾行だけで済めばいい方かもしれない。雫なら、会話の全てを盗聴したり、何か直接コンタクトを取ってくるかもしれないと、翔太は本気で思った。
「ふふ。段々私のことが分かってきたね。嬉しい」
「もう帰っていいですか?」
「……あなたと話すの、楽しかった。今日はもう解放するけど、また来てね」
「考えときます」
翔太は一人で生徒会室から出ると、急いで教室に戻った。
「あら。早かったわね。どうだったの?」
「何ともなかった。ちょっと話をしてきただけだ」
教室に戻ると、麗華が翔太の席に座って、桃花と話をしていた。教室に入った瞬間に、翔太に物凄い量の視線が注がれるが、それにももう慣れて来ていた。
「それならよかったわ。じゃあ、私はもう昼休みも終わるから戻るわ」
「ああ」
麗華は自分の席に戻って、次の授業の準備を始めた。
翔太も準備をしようと机の中を漁っていると、昼休み終了のチャイムが鳴った。
「ねーねーしょーくん」
「なんだ?」
「何しに行ってたの?何だか私だけ仲間外れみたいで嫌なんだけどー」
「ちょっと知り合いと話をしに行ってたんだ。別に何か怪しいことをしてるわけじゃない」
「自分から怪しくないって言う人って怪しいよねー」
前に座っている桃花からは相変わらず話しかけられるが、適当に返しながら準備を済ませた。
◇◇◇
「やっと学校終わったー!しょーくん放課後は何するの?」
「俺は麗華とショッピングモールに買い物」
「えー!カップルっぽーい」
「なんだその言い方。一応結婚してるぞ」
「ははっ。楽しんできてねー」
「おう、じゃあな」
放課後。学校が終わってすぐに、翔太は麗華と一緒に学校から出た。目的地のショッピングモールは、翔太たちの家の最寄り駅にある。だから、駅に行くまでの帰り道は同じだ。
「そういえば、俺部屋片づけてなかったな」
駅まで向かって歩いている途中。翔太は昨日色々あって、結局部屋にある隠したいものを隠せていない。見える場所に置いてあるわけじゃないが、探そうとすれば見つけることはできる。麗華なら探すかもしれないと翔太が思ったから、片づけたかっただけだ。
「そんなに翔太君の部屋は散らかっているの?」
「自分じゃ何とも言えないが、散らかってるというよりかは、しまわないといけないものがいくつかあるんだ」
どちらかといえば翔太は片づけをよくする方だ。片付け終わった後の部屋を眺めて達成感に浸るのが好きで、その度にちょっとだけ家具の配置を変えたりもしている。
「安心して。私は翔太君がどんなハードな趣味でも受け入れる自信があるわ」
「そんな特殊な趣味は持ち合わせてないわ!ノーマルだノーマル」
「そう……。ノーマルなのね。参考になったわ」
「…………はあ」
思わぬところで自分がノーマルだということを知られたが、気にしても仕方ないと翔太はそれ以上この話題に反応しないことにした。
「ちょっとあそこ、寄って行かないか」
ショッピングモールに来た二人は、モール内を手を繋いで歩いていた。だが、途中で翔太が立ち止まって、ある場所を指さした。
小さな雑貨屋で、おしゃれな店というよりも、様々な物を置いてあるような、実用性が高い店だ。
「別にいいけれど……。どうして?」
「ちょっと見たいんだ」
「わかったわ。じゃあ行きましょう」
「じゃあ俺はちょっと見たいものがあるから、麗華も好きに見ててくれ」
二人で雑貨屋に入ると、翔太は目の前にある棚を見るふりをしながら、一人で何が売ってあるのかを見ている麗華のことを見ていた。
翔太が見たいと言ったのは、商品ではなく、麗華の好みだ。麗華が雑貨屋で何に興味を示すかで、どんなものが好きかを知ろうとしていた。
「猫か……」
麗華は猫系の雑貨が置いてある棚の前で立ち止まると、じーっと並んでいる商品を見始めて、時には気になった物を手に取って確認していた。その雑貨を見る目は、普段のクールな麗華からは想像もつかないような目をしていた。
「あれにするか……」
麗華が何度も確認していた、猫耳のついた黒い置時計を遠くから見ていると、十分見終わったのか、他のところを見に行った。
その隙に、翔太は棚から置時計を取って、急いでレジに持って行った。
「買い物は終わったようね」
「ああ。付き合わせて悪かった。麗華は何か気になったのあるか?」
「別に大丈夫よ。気になった物は……そんなになかったわね」
「そうか」
翔太は買った置時計をリュックに入れると、麗華と手を繋ぎ直して、食器を買いに向かった。
明日から平日なので、毎日投稿できるか怪しくなってきます。最近書き溜めどころか、投稿一時間前とかに予約しているので、そろそろ限界が来るかもです。
☆が★になると、天下無双で執筆スピードが六倍になります。




