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53 村の解放




「それでは、この後王国の警備隊が来る手はずになっていますので、それまでの間は村から出ないようお願いします」


「本当にありがとうございます。リュートさま、レラさま」


 琉斗の言葉に、村の村長が頭を下げる。


「礼には及びません。もしどうしても村の外へと出たい場合は、必ずこの石を持っていってください」


「わかりました。それではお二人とも、どうかご武運を」


「ありがとうございます。皆さんもお元気で」


 村人たちと挨拶を交わすと、琉斗とレラは村を後にした。






「うまくいったな」


「そうですね」


 村を出た二人は、互いに顔を見合わせながら笑う。


「それにしても、本当に大胆ですね、リュートの考えることは。まさか私たち二人だけで魔物を全滅させようだなんて」


「まあな。魔物が支配しているといっても、まともな知能を持ってる連中は一握りだ。頭を潰せば他の雑魚どもは散り散りになるだろうと踏んでいたんだが、想像以上にうまくいったな」


「下級の魔物は力に従っているだけですからね。親玉が倒されれば、恐れをなして逃げ出すのは至極当然のことではあります」


 琉斗とレラは、つい昨夜魔物に支配されていた村を強襲し、瞬く間に村を制圧したのだった。

 辺境の村に配置されている程度の魔物が二人を阻止することなどできようはずもなく、二人は一気に村を支配する魔物のところまでたどり着いた。すぐさま大将の首を取ると、それを見た魔物たちは次々と村の外へ逃げ出していった。村に侵入してから一時間にも満たない間の出来事であった。


「しかし、リュートの魔法は本当に凄いですね」


 レラが呆れたように言う。


「私たちがいなくなった後、魔物や野盗の襲撃からどうやって村を守るのかと思っていましたが、まさか村ごと結界で守るだなんて」


「まあ、倒したボスより強い魔物が来ることはなさそうだからな。烈級……人間界では最上級魔法だったか? 人間にも扱えるレベルの魔法だから、大したことはない」


「それを大したことがないと言えるあたり、さすがは龍皇の力を継ぐ者ですね」


 村を出るにあたり、琉斗は外敵が侵入できないように村ごとすっぽりと結界で覆ったのだった。何らかの対策を取らない限り、その結界を越えることはできない。


「結界で覆ってしまっては村人も外に出ることができないのではと思ったのですが、そこもしっかりと対策済みだったんですね」


 レラの疑問に、琉斗はそんなことか、といった口ぶりで答える。


「それはそうさ。村人があの中に閉じ込められたんじゃ話にならないしな。それに、王国の救援が中に入れないんじゃ、何のために解放したのかわからない」


「それはその通りですね」


「だからあの石を置いてきたのさ。あの石があれば結界を通り抜けることができるし、魔除けの力をこめてあるから魔物も近づいてこない。危険が迫ったら障壁が出るようになっているから、野盗に襲われても大丈夫だ」


「何といいますか、至れり尽くせりですね」


「まあな」


 うなずきながら、琉斗は捕まえた小鳥を懐から取り出すと、その小鳥に向かい念を送る。


「リュート、今度は何をしているのですか?」


「ああ、この小鳥を眷属化してたのさ」


「眷属化?」


「そうだ。これでこいつはその辺の魔物よりよっぽど強力な鳥になった。こいつを王都へと飛ばして、警備隊の出動を要請する」


「そんなことができるのですか?」


「ああ。今のこいつは少しくらいならしゃべることができるぞ。ほら、レラに挨拶してみろ」


「コンニチハ」


 琉斗に促され、小鳥が何とか聞き取れる声でレラに挨拶する。


 レラは驚いたような感心したような顔をした。


「そんなことまでできるんですか……。凄いですね、龍皇の力というのは」


「まあ、眷属化はある程度強力な種ならできるみたいだけどな。龍族だけじゃなく、魔物にもできる奴はそこそこいるらしい」


「それは恐ろしいですね。もしその力で善良な人間が魔物に操られたらと思うとぞっとします」


「そんな心配をしなくても済むように、俺たちは早く魔王を倒さないとな」


「はい。がんばりましょう、リュート」


「ああ、期待してるぞ、レラ」


 うなずき合うと、二人は次の町へと向かい馬を走らせた。






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