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第14話 金色の意思

 あの天災が起きた日、俺は必死に戦った。


 激しく傷つき、もがき苦しみながら戦い抜いた果てに俺は新たに得た大切なモノを守り抜くことが出来た。


 だけど同時に知ってしまった。


 己の限界を。


 嫌と言うほどに。








 そんな折、面白い奴の話を耳にした。


 話によるとそいつは魔人を集め全員守ると言ってるらしい。


 酔狂な話だ、正気じゃない。







 だけど、俺は気づけばそいつに会いに行っていた。


 もし狂言や冗談なら放っておけない。


 俺が代わりにその魔人を守ってやる。例え分不相応だとしても。


 だけどもし、そいつが真剣で俺以上の力を持っているなら。


 その時は……









 ◆











「ハァッ……ハァッ……やっと倒れやがったか」


 俺は満足した顔であおむけに倒れるゴルディオに悪態をつくと、手ごろな高さの岩に腰を下ろす。


「おーいちち、あの野郎本気でやりやがって」


 戦闘を開始したのは確か昼頃だったはずなのにもう空は夕焼け色だ。

 どうやら随分長いこと殴りあってたみたいだな。



「くくっ、派手にやったのう主殿。ケガはないかの?」


 殴りあった余波で地形が変わった大地を面白そうに見ながら見知った顔がやってくる。


「テレサか。お前は元気そうだな」

「わしは残念ながら暴れられなかったからのう。ほれ、お主前に出んか」


 テレサが促すと、彼女の横にいたゴルディオの秘書が前に出てくる。


「まずは社長の非礼をお詫びさせてください」


 秘書は俺に深々と頭を下げる。

 勘づいてはいたが、ゴルディオ達にも込み入った事情があるみたいだ。


「償うなら私の命で。その人はまだ世界に必要な存在です」


 秘書はそう言うと懐から取り出したナイフを首元に当てる。

 心を読んでみるがどうやら冗談では無いみたいだ。


「おいきさ……」

「バカいってんじゃねえ、余計な事すんな!!」


 早まるなと止めようとした俺の声をバカでかい声が遮る。


 この声は……


「ゴ、ゴルディオ様!?」

 

 そこに立っていたのはさっき殴り倒したはずのゴルディオだった。

 

 嘘だろ。

 さっき気を失ったばかりじゃないか……

 丈夫過ぎだぜ。


「俺様が売った喧嘩だ、落とし前は俺様がつける」


 ズルズルと足を引きずりながらも俺の眼前に歩いてくるゴルディオ。

 途中で回復してやったが切り落とした腕までは治ってない。

 バランスが悪くて上手に歩けていない。 


 よくこの状態であれだけ戦えたものだと感心する。


良い喧嘩(ナイスバトル)だったぞ。そして度重なる非礼を謝罪する、試すような真似をして悪かった」


 ゴルディオはそう言うと俺に膝をつき頭をさげる。


「ゴルディオ様止めてください!!」

「いいんだリアよ。負けたらこうすると決めていたんだ」


 体を起こそうとする秘書をゴルディオは残った方の手で制する。


「……どうして俺の国に来たか、詳しく聞かせてもらってもいいか?」


「ああ、さっき言った通り魔王を試しに来たんだ。その名にふさわしいかどうかをな」


 成る程、だから俺を挑発するような言動が多かったのか。

 まんまと乗せられてしまったぜ。

 情けない限りだ。


「最初はすぐ怒って王にふさわしくないかと思ったが……乗り越えた様子。更に力も申し分ない、合格だよ」


「それは光栄だな。で、合格したら何かくれるのか?」


おどけて聞く俺だが、ゴルディオは真剣な面持ちで返答する。


「ああ。俺の命で償う」


 さっぱりした顔で言い放つゴルディオ。

 そこまでの覚悟をもってのぞんでいたのか……


「もちろん俺様の命なんざもらっても嬉しくないだろう。だから俺の資産も会社も部下も全てくれてやる」


 テレサの話ではこいつはかなりの大金持ちらしい。

 自給自足のみで賄っている魔王国からしたら他国と取引できる資金は非常に助かる。


「その代わり、俺の会社を、部下達を守ってくれ」


 強い口調でゴルディオはそう懇願する。


「悔しいが俺ではこの先こいつらを一人で守っていけないだろう。だがあんたなら……」


 成る程。

 そういうことだったのか。


 自分一人の力に限界を感じたゴルディオは仲間を助けてくれる力を持った人を探していたのか。


 自分を犠牲にしてまで部下を生かそうとはたいした奴だ。

 人は見かけによらない。


 本当なら無条件で助けてやりたいが俺も一国の主。

 そうは問屋が卸さない。


 情に流されては民に顔向けできない。



「よし……決めたぞ」

「……聞かせてくれ」


俺の下した最恐の答え、それは。




『ゴルディオ。お前を我が配下にする』

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