第2話 会談
円卓会議より一夜明けた今日、俺と幹部数名は王の間にて訪問者を待っていた。
「そろそろ着くころですね」
「そうか」
正直めっちゃドキドキしている。
シェンやマーレが付いてくれてるとはいえ決定を下すのは俺だ。
もし相手にいいように言いくるめられては王の威信がガタ落ちだ。
しっかりしなくては。
「通信が入りました。来ます」
「うむ」
俺はマーレの言葉にうなずき姿勢を正す。
その直後王の間の扉が開き二人の男が入ってくる。
見た目はアジア人といった感じだ。スーツを身にまとい小綺麗にまとめてある。商社マンといった感じで今の世界では逆に珍しい。
「お招きいただきありがとうございます。ジーク殿」
「うむ」
先頭を歩く若い男が軽く頭を下げ挨拶をしてくる。それに続き後ろをついてくる男性も軽く頭を下げる。
よかった。少なくとも話せる相手の様だ。
「私は黒蓮教の一員、劉文祥と申します。後ろの者は私の部下になります」
「ふむ。それで劉よ。要件を聞かせてもらえるかな、まどろっこしいのは苦手でね」
長引けば長引くほどボロが出る可能性は増える。
選択は間違ってないはずだ。
「結論を急ぐのはこちらとしても助かります。何しろ一刻を争う状況でしてね」
「というと?」
「私たち黒蓮教は未だ混乱のさなかにある中国をまとめるために活動しています」
確かに中国は未だ滅んでこそいないがあの国土の広さと国民の多さだ。
いつ国としての体裁が取れなくなっても不思議ではない。
「その活動の障害になる連中がいましてね……そいつらの殲滅をお手伝いして欲しいのですよ」
「ほう」
相手によるがその程度なら問題なさそうだ。俺たちの力を世界に思い知らせるいい機会になる。
「もちろんタダとは言いません。あるモノを進呈します」
「何だ?」
「はい。我々が捕らえ、捕虜にしている魔人です」
「何だと?」
「ひぃ!?」
突如重くなる空気。殺気が部屋中に充満し凍えるほど寒くなる。
その殺気が自分が放つものだと気づくのに俺は数秒の時がかかった。
「ジーク様!?」
青ざめた顔で俺をのぞき込むマーレ。気づけば俺は魔力を練りこみ今にも放たんとしていた。
「すまんな。もう大丈夫だ」
俺は心の奥底より湧き上がる怒りを無理やり抑え込み彼らとの話を再開する。
二人とも謎の殺気にビビってしまったのか腰が抜け座り込んでしまっている。
「いいだろう、その話乗ろうじゃないか。私は誰を倒せばいいんだ?」
こうして魔王国最初の外交は幕を開けた。
◇
「よろしかったのですか? あんな話飲まれて」
「ああ、あそこで逆上して殺すのは簡単だ。だけどそれじゃあつまらない」
あの後、数点確認し会談は終わった。
俺はすぐに幹部全員を招集、王の間に集まったのだった。
「くくっ、何やら面白い考えがあるようじゃの」
「まあな」
話によると倒す相手は中国にいるらしい。
ゆえにあまり大人数では行けない。国を守れる最低限の戦力は残しておかなきゃいけないからだ。
「今回同行するのは……虎鉄、それにテレサにも来てもらおうか」
「御意」
「くくっ、腕がなるのう」
「ちょっと大将! 俺は行けねえんですか!?」
自分が選ばれないとは思わなかったのかヴォルクが抗議してくる。
「お前……まだ仕事が済んでないだろ」
「ギクッ!!」
そう。今回のような荒事にはヴォルクは最適だ。
しかしこいつは幹部全員に命じている、自分直属の部下を集め部隊を編成するという命令を達成していない。
他の幹部たちは早々に面白い人選をしているというのに情けない。
「待ってくれ大将! ほら、俺は部下なんざいなくても十分戦えるぜ?」
力こぶを作ってみせ必死にアピールするヴォルク。そういう問題ではない。
俺が見かねているとマーレが一歩前に出る。
「部下を作るということは責任を持つという事です。ただ暴れたいだけなら幹部の座を降りていただきます」
「そ、そんな……」
呆然とした顔で俺をチラッと見るヴォルク。
俺は心を鬼にして顔を横に振りその訴えを却下する。すまんな、下の者に示しがつかなくなるんだ。
「わ、わかったぜ……すぐに取り掛かるぜ……」
トボトボと王の間を後にするヴォルク。
強く生きろよ。
「作戦開始は明朝より行う。準備を怠るなよ!」
『はい!』




