第10話 建国宣言 B面
建国宣言当日。
天気は生憎の曇りだ。
草木は枯れ、大地は裂け、生物の息吹など微塵も感じられなくなったこの地だが、よく見ればポツポツと植物の芽が生え始めており緑化計画が身を結んでいる事が確認できる。。
そんな大地に悠然とそびえ立つ我が魔王城。
西洋の城を思わせる造りに、悪魔や怪物を象った醜悪なオブジェで彩られているその様は見る者全てを圧倒するようにデザインしてある。
そして今、魔王城のバルコニーに俺は立っている。
いつもの様に全身に魔道具を身に纏い、いつ敵の襲撃が来ても対処出来るようにしてある。
ちなみに平静を装っているが鎧の下はガクガクだ。
「それでは……お願いします」
そんな俺にマーレが声をかける。
この日のために拵えた純白のドレスと、それに匹敵する彼女の白い肌は黒一色の城内にて彼女を一層目立つものにした。
「ああ……」
俺はそう答えると眼下に広がる数万の人々に目を向ける。
最近移住して来た者も多くいるため、衣服が擦り切れてる者や軽くない怪我を負った者も多く見られる。
それでも期待と畏れに満ちた目で頭上を見上げ、俺の言葉を心待ちにしている。
俺は震える体を叱咤し堂々とした一歩で民衆の前に立つ。
「よく集まってくれた」
辺り一帯に声が響く。
この日のために魔導スピーカーを各所に設置しているため、聞いてる者の頭に直接響くかの如く辺りに響き渡る。
「私の呼びかけにこれだけの人数が集まってくれたことを、とても嬉しく思う」
不安だった。
もし集まってくれなかったらどうしようかと随分悩んだものだ。
「虐げられ、逃げ回るだけの日々は今日をもって終わる。我々は手を取り力を合わせ当然の自由と平和を手にする!」
俺が握った拳をかかげながら叫ぶと、民衆も熱がこもった歓声をあげる。
涙を流す者も多く、彼らがどれだけの苦難を乗り越えたかが伺い知れる。
近くにいるせいで彼らの思いがダイレクトに俺の脳に入ってくるせいで思わず俺の演説にも熱が入ってくる。
「我々は屈しない!普通に暮らし、普通に働き、普通に幸せを享受する!そしてそれを手前勝手な理由で邪魔する糞虫どもは全力をもって殲滅する!」
俺のボルテージは最高潮に達し、民衆にもそれが移ったのか嘔吐するものまで現れるが、そんな些細なことは誰も気に止めない。
「そのためにお前たち全員の力が必要だ!私と共に創りあげてくれ!我々の楽園を!!」
歓声が、渇いた大地を揺らし雲を散らす。
俺はその反応に満足した様にうなずくと、更に一歩前に進み声高らかに宣言する。
『今ここにクリーク・O・ジークの名において魔王国ゾロ・アストの建国を宣言する!』
今ここに、全世界を震撼させる最強にして最恐の国が誕生したのだった。




