第7話 凶星現る
「酷いなー、舞衣ちゃん。人を捕まえて犯罪者だなんて」
「黙れ、貴様の口など聞きたくもない!」
「あれあれー?知りたくないのかな?お友達のゆ・く・え♪」
「貴様……!!!!!」
「舞衣さん!」
俺は今にも飛び掛かりそうになっている舞衣さんの腕をつかみ、引き留める。
「待ってください!今突っ込んであいつのも思うツボです!」
「しかしあいつは仲間を!!」
「俺がいます!!」
「!!」
「俺は絶対に舞衣さんの前からいなくなりません!!今はそれじゃダメですか?」
分かっている。
俺はまだ舞衣さんの中で仲間の人たち程大きな存在でないことは。
それでも、知って欲しいんだ。
あなたに、消えてほしくない人がいることを。
「……取り乱したわ、ごめんなさい。でも、あなたは下がってて」
「でも!!」
「ごめんなさい。あいつはクズ野郎だけど強いの。あなたを守りながらじゃ倒せないわ」
落ち着いた舞衣さんが言うんだ、おそらく本当なんだろう。
彼女困った顔がそれを物語っている……。
よく弱いのは罪だというが、その通りだ。
俺は憎い。
弱い
俺が。
「お話は終わったかい?」
「ええ、待ってくれてありがとう。お礼に辞世の句ぐらいは聞いてあげるわ」
「強気なのは変わらないねー。お友達が死んだというのに強い子だ」
「ぐっ……!!」
舞衣さんの強く握る手から血が滴っている……。
あいつだけは許せない。
「僕は何も君に死んでほしい訳じゃないんだ。君は聡明で強い上に、見てくれもいい。君さえよければ僕の伴侶の1人にしてあげてもいいと思ってね」
「そんな莫迦げた話、聞くと思って……!!」
「いやー、思ってないさ。そろそろ始めようか」
男は構えを取り、指でクイクイと招くように挑発する。
「行ってくる、くれぐれも気を抜かないように」
「はい!舞衣さんもお気をつけて」
舞衣さんは俺にかすかに微笑みかけると、走り去って行ったのだった。
◇
天上院元彌。
彼を一言で表すと「卑劣」な男だ。
高い才能を持ちながらもその力は極力使わず、他人の力を当てにして甘い汁を吸うことを信条としている。
家の力が強いため多少のやんちゃは黙認されてきたが、ある日とうとう仲間である陰陽師にケガを負わせ入院させてしまった。
ケガをさせた理由は気に食わないから。
そんな下らない理由で彼は犯罪者を追う仲間に嘘の情報を流したのだ。
結果、奴は謹慎処分となり魔法の使用を制限されたはずだったが……。
「金行・金糸雀!!」
私の手より金色に輝く鳥が現れ、奴の元へ高速で飛来する。
「まだまだ!!水行・泡沫の陣!!」
今度は鳥を守るように水泡が現れる。
これで奴が金行が苦手とする火の魔法を使っても水泡が守ってくれるだろう。
「うまいね、舞衣ちゃん。戦い慣れてる」
奴は「ヒュウ」と口笛なぞ吹いてやがる。
ナメやがって。
「だけどまだまだだ。土行・極楽壌土」
奴の目の前の土が盛り上がり、私の魔法を飲み込む。
見たこと無い魔法だが、私の金糸雀はこの程度ではやられはしない。
「これでトドメよ!水行・波濤裂波!!」
金糸雀が土から出てくるであろうタイミングに合わせ、私は奴に接近し渾身の水魔法を撃ちこむ準備を整える。
「出てこい!金糸雀!」
しかし、予測時間を過ぎても金糸雀は土から出てこなかった。
「残念だったね、舞衣ちゃん」
「!!」
気をそらした隙に、奴はとんでもない魔力を練りこんでいた。
これをくらうのはマズい! なんとかしてやり過ごさなければ!
「木行・ 木叢返し!!」
私はとっさに水魔法を出してる右手を引っ込め、左手で別の魔法を唱える。
奴は気色悪い笑顔をこちらに向けたあと、その魔力を解放した。
「土行奥義・五黄星閃」
土の力を圧縮した光線は辺り全てを飲み込んだ――――――。
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