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最恐魔王の手さぐり建国ライフ!!〜政治に農業、時々戦争!?〜  作者: 熊乃げん骨
第一章 ○○世界における魔王国建国の経緯(いきさつ)
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第4話 地獄の走行(デスマーチ)

「日本がない……!?」


 しかし、考えてみれば当然かもしれない。


 俺が意識を失った場所は東京だ。

 ということは、このぶっ壊れた場所は東京という事だ。

 この光景が続いているなら、とても政府が機能しているとは思えない。


「大きな力を得れば間違った使い方をする奴は当然現れる。私とその仲間達は魔力大規模感染マジカル・パンデミックが起きてすぐに東京へ向かったが……手遅れだった」


 舞衣さんの噛みしめる唇から血が流れ落ちる。


「暴徒と化した魔人は辛くも全員始末出来た。指揮系統を失い離散寸前までいった私達だが、政府が崩壊する間際、最後の通信に残っていた政府の命令を遂行する事にした。」


「『己の正義を遂行せよ』通信記録には残っていた。私達はそれを全うするため全国へ散らばり正しい心を持った魔人を仲間にし、暴れている魔人を倒すことにした」


 凄いな、と思った。

 壊れた世界で戦う彼女達も。

 自分が死ぬと分かっていても国の事を案じた政府も。


 舞衣さんの表情から誇りを感じるのは、そんな彼らと仲間なのが誇らしいからなのだろう。


「そんなわけで私達陰陽師は別々に行動してるってワケ。もうすぐ定期報告会があって関東圏で活動している陰陽師が集まるわ。ひとまずそこに行きましょう」


 陰陽師仲間か、それは俺も会ってみたいな。

 俺の体の謎も解けるかもしれない!


「分かりました。これからよろしくお願いします、舞衣さん」

「ああ、よろしく。頼りにしてるぞ!」


 ニカッと笑う彼女とおれは堅い握手をしたのだった。







 ◇





 そっからの行程は地獄の行進(デスマーチ)だった。

 当然俺たちに乗り物などなく、走りで何百キロと走ることになった。


「うっ! もうダメぇ……」

「だらしないわね、水行・命泉掌めいせんしょう!!」

「ぶべっ!!」


 俺は今日何度目か分からぬ掌底を貰いひっくり返る。


 舞衣さんは足から魔力を上手く放出し移動するが、当然俺は上手くできない。

 速度も遅いし、魔力と体力もいたずらに消費してしまう。

 特に体力はすぐに切れてしまうので、その度に舞衣さんが回復魔法を打ち込んでくれる。


「あの、もうちょっと痛くない回復魔法はないんですかね……?」

「あるけどこの技が一番速効性が高いのよ。もう歩けるでしょ?」

「それはそうなんですがねぇ……」


 先程まで鉛のごとく重くなってた足が、今は羽が生えた様に軽くなってる。

 舞衣さんは誇張抜きで凄腕の魔法使いだった。

 しかし……


「まだ魔力の出し方に無駄があるわ!もっと足からズバーン!!手からバーン!って感じで魔力を出して!!分かった!?」

「はは……」


 教えるのまでは凄腕じゃなかったみたいだ。












 その後、倒れてシバかれるのを4回ほど繰り返すと流石に俺もコツを掴んできた。


「なかなか上手くなってきたわね」

「さすがにあれだけしごかれたら上達しますよ……」


「いえ、普通一日やそこらで魔力歩行マジック・ムーブはそこまで上達しないわ。全くあんたには謎ばかりね」

「はは……」


 確かに不思議な感覚だ。

 初めてやってるはずなのに段々体が思い出していく感覚。

 まさか俺は魔法使いだったのか!?

 失われたのは名前だけでなく記憶もなのだろうか?


 しかし、だとすると説明がつかないことがある。

 俺には記憶の空白がほとんど無いのだ。

 あるとすれば気を失ってた数日間の間で、その間に魔法を覚えるなんて不可能だろう。


「聞いてる?」

「! ああ、聞いてますよ!」


 いかんいかんすぐに考え込むのは悪い癖だ。


「今日はここらへんで休憩にするわ。あそこに行きましょ」


 そう言うと舞衣さんは人目につかなそうな岩陰を指さす。

 俺は同意して、その岩陰に降り立った。


「さて、土行・土矢倉つちやぐら!」

「おわ!!」


 舞衣さんが手を地面に当てると目の前に土で出来た立派な小屋が現れる!


「小さな小屋だけど一日位いいでしょ?」

「いやいや十分すぎるでしょ……」


 彼女のお嬢様ぶりに呆れるが、ここで俺にはひとつ疑問が生まれた。


「そういえば舞衣さんは火と土、二つの魔法感覚マジック・センスがあるんですね」

「そういえば言ってなかったわね」


「私は五つの属性を使うことが出来るの」

「!?」


 確か多くても2つと言ってなかったか!?

 だとしたらこの人はどれだけ凄いんだ!?


「……といっても凄いのは私ではなく血筋よ」

「?」


「魔力に目覚めた人にはそれぞれ固有の特殊能力『贈呈物ギフト」が目覚めるわ。そして私の家、『礼堂院家』は代々一定間隔で決まった贈呈物ギフトを持った子が生まれ、その子が家元になる習わしなの」

「それじゃあ……」


「そう、その贈呈物ギフト五行相克ごぎょうそうこく』をもって生まれた子が私。十七代目礼堂院家が家元、礼堂院舞衣よ」


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