第25話 再結
怒りで体が熱い。
こいつらだけは絶対に許してはいけない。
こいつらのせいでどれだけの人が死に、苦しんだと思ってやがる。
しかも理由が母の供物にするため? 詳しい意味はわからないがどうせロクな理由じゃない。
こいつらを放っておいたら雪だるま式に犠牲者は増えるだろう。
そんなことは絶対にさせない。
「お前はここで殺す……!!」
覚悟を決め芭蘭に向かって歩き出す。
しかしそんな俺の肩を掴む奴がいた。
「待て。今のお前じゃ奴に勝てねえ」
そう言って俺を止めたのはラースだ。
傷は深いがどうやらまだ少しは動けるみたいだ。呆れるほど頑丈な肉体だな。
「それはやってみなければ分からないだろ」
「いいや分かるさ。あいつら、超越者はお前ら地球人とは別の概念で生きている。いくらお前が規格外の力を持っていても殺し切るのは不可能だろう」
「だから諦めろと言うのか? 冗談じゃない!」
「クク、誰も諦めろとは言っちゃいねえ。俺様があいつらを倒す方法を教えてやるよ」
「そんな方法があるのか?」
そう聞くとラースはニヤリと笑い、己の胸元を親指で指す。
「ああ……俺様を殺せ。そうすればお前にも超越者の力が宿る」
そう言うラースの瞳は真剣そのものだった。
覚悟の決まった漢の眼だ。もしかしたらこいつは最初からそのつもりだったのかもしれない。
俺たちの敵となり、成長させて、最後は己の身を犠牲にして芭蘭達と戦える力を与える。
ハッ、格好つけすぎだぜ。
「……分かった、お前の力を貰う」
「分かりゃいいんだ。ほら、俺の心臓を貫きな。わざわざてめえらの体と同じ位置にしといたからよ」
そういって俺に胸を差し出すラース。
俺はその胸元に攻撃を……せずにラースの肩に手を置く。
「……あ? これはなんの真似だ?」
「勘違いするなよ。確かにお前の力を貰うと言ったが、お前を殺すとは言ってない」
そう言って俺はラースの体にからその精神体だけを分離させる。
俺とラースの精神体は一度リンクされてる、もう一度つなげることなんて簡単だ。
「俺たちは長い間一緒に戦っていたじゃないか。今更抜けようったってそうはさせねえ!」
抜いた精神体を無理やり俺の体の中に押し込む。
ラースは最初抵抗しようとするが、やがて観念したのか抵抗をやめ俺の体の中に帰ってくる。
するとラースの元の体は抜け殻となり、ドサリと床に崩れる。
『……全く、強引な奴だゼ』
俺の背中からラースが現れ言う。
今のラースは上半身はムキムキの赤い人型で、下半身は細長くなり俺の体につながっている。ランプの魔神みたいな姿と言った方がわかりやすいだろうか。
どうやら上手く俺と繋がれたみたいだな。
「ようやく楽になれると思ったか? 残念だがそうはいかない、まだお前には一緒に戦ってもらうぜ」
笑いながらそう言うと、ラースは頬をポリポリ掻きながら面倒臭そうに、だが少し照れ臭そうに言う。
『ケッ、人使いの荒い野郎だゼ。……だがしょうがねえ、力を貸してやる。初代超越者の俺様がなあ!!」
こうして最強にして最恐のタッグが再び生まれたのだった。




