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第23話 合体

 合体。

 果たして一度分かれたモノが元に戻ることを『合体』と呼べるのかは置いておいて、確かにこの状況で合体するのはいい考えだ。

 この機械の体にももう魔力は残ってないし、俺の本体もだいぶダメージを負っている。

 合体すればそれを補い合うことが出来るだろう。


 ……だが。

 その隙を芭蘭が見逃すとは思えない。

 2つの意識が1つになるんだ。必ず一瞬の意識の混濁があるはず。


「フフ、どうしたんだい? 早く合体とやらをしてごらんよ」


 楽しそうに嗤う芭蘭。

 くそっ、余裕こきやがって。


 なにかいい案がないかと必死に頭を働かせていると、後ろにいたラースがその巨体をゆっくりと立ち上がらせる。


「時間を……稼げばいいんだな?」


 ラースはそう言い芭蘭と俺たちの間に割って入ってくる。


「おや? 先にお前が相手してくれるのかい? まあこっちとしては大歓迎だけど」


「抜かせ。てめえなんざオレ一人で十分なんだよ」


 強がってはいるがもうラースは満身創痍だ。

 これ以上の戦闘は本当に命に関わってしまう。それだというのに何故?


「おい勝手なことしてんじゃ……」


 俺はラースを止めようとするが、奴は真剣な眼で俺を見返してくるので思わず止まってしまう。


「お前……」


「いいんだ。散々お前らの体を使って好き勝手やってきたんだ。そのツキが回ってきたと思えばこんな最期も悪かねえ」


 ラースは決してやぶれかぶれになったのではなく、ちゃんと自分が死ぬかもしれないことを理解しているんだ。

 だったら……それを無下にするのは男じゃない。


「いいんだな?」


「ハッ、しつけえんだよ。オレ様が倒しても文句言うんじゃねえよ?」


 ラースはそう言ってニヤリと口角を上げると、芭蘭に向かって拳を振り上げ襲いかかる。

 チャンスは今しかない!


「いくぞ!」

「ああ!」


 俺ともう一人の俺は手を握り合い意識を集中する。

 お互いの意識を繋ぎ、溶け合わせ、融和させる。


 そして俺の、俺たちの意識は混ざり合って一つになるのだった……。




 ◇




 俺たちが合体を開始してからどれくらい経ったのだろうか。

 それくらい俺の意識は長い眠りから覚めたかのように緩やかに覚醒した。


 不思議な感覚だ。

 肉体の俺と機械の俺。どちらの記憶も併せ持っているので少し混乱する。


 そして……怖いくらい力は漲っている。

 これなら芭蘭にも遅れは取らないだろう。


 ちなみに機械の体は俺のすぐ隣で機能を停止し横たわっている。

 今までありがとう。よく動いてくれたな。


 そして肝心のラースは……見るも無残な姿だった。


 四肢はすべて切り落とされ、鮮やかな断面からは鮮血が止めどなく流れ出ている。

 更に体中に刃が乱雑に突き刺さっている。


 ……この刺し方は殺す刺し方じゃない。相手を殺さずに痛ぶり楽しむ刺し方だ。


「……外道が」


「勘違いしないでおくれよジーク君。僕だって好きでこんな事をしてるわけじゃないんだ。ただこのクソ野郎には僕と仲間がお世話になっていてね。その罪を清算しているだけさ!」


 そう言って芭蘭は再び手に持った刃をラースに突き刺そうとする。

 しかし、その刃はラースに届くことはなかった。なぜなら刃を奮った奴の右腕は一瞬で切断され地面にどしゃりと落ちたからだ。


「……あ?」


 何が起きたのか分からず呆けた顔で芭欄は切れ落ちた自らの腕を凝視する。

 その隙に俺は超高速で芭蘭に近づき思いっきり蹴っ飛ばす。


 魔法も何もかけてないただの蹴り。しかし魔道具のおかげで俺の身体能力は人外クラスに引き上げられている。

 その蹴りをまともに受けた芭蘭はきりもみしながら吹っ飛び、ものすごい音を立てながら壁に激突する。


「立てよ、どうせまだ生きてるんだろ?」


 俺がそう言うと砂煙の中からむくりと芭蘭が起き上がる。

 チッ、殺すつもりで蹴っ飛ばしたんだけどな。


「ちょおっと調子に乗りすぎじゃないか? いくら君が観察対象だからといっても限度がある。半殺しくらいにはさせてもらうよ!!」


 激高した様子の芭蘭が俺に襲いかかってくる。

 いいぜ。お前と俺との因縁もここで終わりにしてやる。


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