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第21話 同類

「同類、だと?」


 あの正体不明の芭蘭とラースが同類だとは。

 もしこれが本当なら一切手がかりのなかったあいつの正体に大きく近づくことが出来る。


 俺は戦意を失い膝立ちになっているラースに近づき、問いただす。


「一体お前らは何者なんだ!? 何が目的でこんなことをしている!? お前も芭蘭の仲間なのか!?」


「おい、落ち着け」


 ラースの肩を揺さぶりながら矢継ぎ早に質問する俺をもう一人の俺が諌めてくる。

 ……俺としたことが我を失っていたみたいだな。

 しかし無理もないだろう。欲しがっていた情報が思わぬところから出てきたんだからな。

 芭蘭のことを知らないもう一人の俺は冷静でいれるだろうが実際に会った俺はとても冷静でいられない。


「その芭蘭ってやつのことは知らないが、少なくともこいつはもう俺たちに危害を加える気はない。それくらい共感覚を持ったお前なら感じ取れるはずだ。ってことは少なくともその芭蘭って奴とは仲間じゃないんじゃないか?」


 むう。確かに俺の言うとおりだ。

 ラースは同類、とは言ったが仲間とは言わなかった。


 それにラースは「奴らに勝てないぞ」とも言っていた。

 もし仲間であるならそんなふうに言うのは確かに妙だ。ということはラースは芭蘭とは仲間ではない、もしくは敵対関係なのか?


「で、どうなんだ? お前はその芭蘭とかいうやつの仲間なのか?」


「……ケッ、誰があんな気味悪いやつと仲間になるかよ」


 意外なことにラースはあっさりと白状した。

 表情から察するにどうやら芭蘭のことが嫌いなようだ。同族といえど一枚岩ではないみたいだな。


「そうか、それを聞いて安心したよ」


「ア? なんでそれを聞いてお前が安心するんだよ」


 俺も頭に?マークを浮かべているともう一人の俺はとんでもないことを言い出す。


「だってそれならまた一緒に戦えるってことだろ?」


「「なっ……!!」」


 俺とラースは揃って絶句する。

 もう一人の俺は正気か?


「いったい何を言ってるんだ? こいつと今更仲間になれるわけないだろ! だってコイツは俺の仲間を……」


「傷つけてはいない。だろ?」


「へ?」


 ラースの方を向くとラースはバツが悪そうに俯いている。

 そういえばラースの部下であるキングたちも俺は攻撃してきたが他のやつに攻撃したところは見ていない。

 まさかこいつ、俺しか攻撃していないのか?


「こいつと長い間同化していた俺はわかる。こいつは俺の仲間はもちろん俺のことも嫌っちゃいない。むしろ好きと言ったほうが近いだろう」


「好き……? こいつが、か?」


 こんな化け物みたいな見た目をしてて好きと言われても反応に困る。

 いやそれ以前にこいつは少なくとも俺のことは完全に殺す気だったんだぞ? そんな奴がこっちに好意を持っていたなんて信じろって方が無理がある。


「まあそう苛立つな。コイツにもそれなりの理由があったんだろう」


 俺の内心がを見透かしたもう一人の俺に諌められる。

 こいつには敵わないな。


「で? 結局なんでこんなことをしたんだ?」


 もう一人の俺はラースに優しげに詰め寄る。

 するとラースはとうとう観念したのかポツリポツリと話し始める。


「ハッ、いいぜ。話してやるよ。俺様がわざわざこんな手の混んだことをした理由をよ。その理由は簡単、てめえが甘ちゃんだからだよ。自分では非情にやってるつもりだろうがまだまだ甘すぎる。そんなんじゃ奴らにはどう足掻いても勝てねえ」


 何てことだ……!

 こいつが俺に挑んだ理由は俺を成長させるためだったのか。



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