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第5話 第三者

「……行ったようだな」


 部屋から出て行くジークとテレサを見送り虎鉄はそう呟く。

 現在部屋に残されているのは虎鉄、ヴォルク、イブキの幹部3人とキング、クイーン、ジャックの3人だ。

 キング達は勿論ジーク達を追おうとするが幹部達がその行く手を阻む。おかげで3人はおめおめと目標を逃してしまったのだ。


「行ったようだな。じゃねーよ!! なんだよいいトコを邪魔しやがって!! もう許さねえ死ね!!」


 激昂したジャックが虎鉄めがけて突進する。

 先ほどまでの攻撃より速度も威力も上がっている。どうやら虎鉄達に邪魔されたのがよほど頭にきているようだ。


 虎鉄はそれを迎え討たんと刀に手をかけるが、互いがぶつかり合うよりも早く動いたものがいた。


「てめえの相手は俺がしてやるゼぇ!!」


 そう叫び飛び出してきたのは人狼状態に変身したヴォルクだ。

 彼はその身体能力をフルに発揮し突っ込んでくるジャックの側頭部を蹴り飛ばす!!


「ぶべえ!!」


 思わぬ衝撃でバランスを崩したジャックは回転しながら吹っ飛び再び壁に激突する。

 並みの魔法使いなら体がぐちゃぐちゃになるほどの衝撃だが、ジャックには人並み外れた防御力がある。「いてて……」と言いながらも大きな怪我なくジャックは立ち上がる。


 ヴォルクはその様子を見て危機感を抱く。

 さっきの一撃はカウンター気味に決まったと言うのに相手は脳震盪すら起こしていない。攻撃を当てた自分の足もまだ痛むと言うのに。

 これは苦労しそうだ。


 そんなことを考えているヴォルクを狙い、クイーンのムチが振るわれる。ムチはヴォルクの死角を這うように進み、その喉元へ襲いかかる!


「しまっ……!」


 ヴォルクも当たる寸前で気づくがもう遅い。

 ここまで接近を許せば防御も回避も間に合わない。

 しかしクイーンの目論見は思わぬ形で崩れることとなる。


「おーっと、そうはいかねっすよ」


 その瞬間、ムチの先端は焼け切れ勢いを失う。

 それをやったのは勿論イブキだ。彼女は電光石火のスピードでヴォルクの元へ行き雷の力をまとった手刀でムチを切断したのだ。


「鬱陶しい子ね……しつけ直してあげるわ……!」


「生憎ウチは育ちがわるいんすよ。矯正できるもんならして欲しいくらいっすよ!!」


 そう言ってイブキはクイーンに襲いかかる。


「……どうやら拙者達は売れ残ってしまったようだな」


「そうだな。じゃあ売れ残り同士仲良くするとするか」


 そう言って虎鉄とキングは臨戦態勢で向かい合う。

 それだけでお互いは目の前にいる存在が強者だと確信する。


(ジーク様、どうかご武運を!!)


 虎鉄はそう願い、目の前の敵に斬りかかった。











 ◇







「はあ、はあ、ここまでくればひとまず大丈夫か。危なかったな」


 キング達に襲撃された部屋から逃げ出し、少し離れたところまで来た俺とテレサはドサっと床に座り込みお互いの無事を確かめる。


「くっ! 一生の不覚じゃ。まさか中で待ち伏せしとったとは!」


 テレサは歯を食いしばり床を何度も叩く。

 しかしあれはテレサの責任ではない。俺は床を叩くテレサの手をつかみやめさせる。


「あれは俺の責任だ。もう一人の俺が俺の行動を見抜いてくることくらい想像できたはずなのに出来なかった俺の責任だ」


 そう。あいつと俺の思考回路は同じだ。

 だったら俺が真っ先に警備システムをどうにかしようとすると考えるのは向こうも感づくのは当然。

 まんまと引っかかったというわけだ。


 だからあいつらが待ち構えていた理由は分かる。

 だけど不可解な点が一つだけある。


「ところでテレサ、なんであの時虎鉄達と助けに来れたんだ?」


 テレサ一人が嫌な予感がして見に来てくれたならまだ分かる。

 なんで幹部達があの絶妙なタイミングで助けに来てくれたんだ?


 俺がそれを聞くと何故かテレサも微妙な顔をする。


「それがわしにもよく分からないのじゃ。わしが外を見守ってたら急に奴ら3人が来て『ジーク様が危ない!』と言ってきたんじゃ。あまりの剣幕に押されて中を見てみると本当に襲われててびっくりしたのじゃ」


 だとすると彼らが何故来たのかは調べようがないな。

 今更あそこに引き返すわけにもいかないしな。


「とにかくそれを考えていても仕方がない。先へ進もう」


「主人どの、そういえば肝心の警備しすてむはどうだったのじゃ?」


 立ち上がった俺にテレサが最初の目標がどうなったのか聞いてくる。

 そういえば言ってなかったな。


 俺が一番、引っかかってることを。


「警備システムは……変更しなかった」


「な! じゃあ警備しすてむはまだ生きとるのか!?」


「いや、もう警備システムは止まっている」


「ん!? ど、どういうことじゃ!?」


 テレサがわけが分からないといった顔になる。

 そりゃそうだろう、俺だってわけが分からないのだから。


「聞いてくれ、あいつらから逃げる時俺は警備システムを少しだけ見てみたんだ」


「う、うむ。それはわしも確認した」


「そしたら何故か既にシステムは解除されてたんだ」


「な、なんじゃと!? 一体どう言うことじゃ!?」


 テレサは大声で驚く。俺だってそれに気づいた時は目をいたさ。意味がわからなすぎる。


「警備システムを無力化したのは絶対にもう一人の俺ではないだろう。とすると」


「まだ見ぬ第三勢力がおると……?」


「ああ」


 そいつの狙いは分からない。

 もしかしたら俺ともう一人の俺をぶつけさせて共倒れを狙っているのかもしれない。

 しかしこれで臆するわけにはいかない。


 そう考えているとどうやらテレサも同じ考えだったようで俺の方を見てニヤッと笑いかけてくる、


「上等じゃ、そいつが何者か分からんが逆に利用してやろうぞ!」


「ああ、そうだな!」


 目指す王の間まで、あと少し。

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