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第14話 敗因

「本当にそんなことができるのか?」

 

 龍々家の話した作戦を聞き興亀は思わず驚く。

 

「拙者はその案に乗る。どうせ他にいい案はないのだろう?」

 

「まあそうだけどよ……」

 

「では決定だ。行くぞ!」

 

「ちょ、ちょっと待てよ!」

 

 我先にと走り出す走り出す虎徹に続き興亀も作戦実行に動き出す。

 

「では我らも行くか」

 

 続いて残りの三人も動きだす。

 

 虎徹、龍々家、雀長の三人は大蛇の元へ、興亀、虎虎の二人はなぜか民家の方へ向かう。

 自らの元へ向かってくる人間に気づいた大蛇はよだれをボタボタと垂らしながら牙を剥き襲いかかる。

 

『キシャアアアアッ!!』

 

 虎徹へ襲いかかってくる首は三つ。

 その一つ一つが生半可な魔法使いでは歯が立たないほどの力を持っている。

 やすやすと金属すら裂いてしまう牙に、強力な腐食性を持つ毒の唾液。

 近接攻撃が主体である虎徹には一見厳しい相手に思える。

 

「「虎徹!」」

 

 大蛇の想定を超える速さに思わず声を出す龍々家と雀長。

 明らかに最初に戦った時よりもスピードが上がっている。

 

 大蛇が飲んだ「をち水」には『老化』『衰弱』を否定する力が込められている。その結果起きるのは異常な速度の『成長』。

 大蛇は今もどんどん成長しており、そのせいで成長に必要な栄養を欲している。

 成長には食べ物としてのエネルギーも必要だが最も重要なのは『魔力』。

 

 高い魔力を持った虎徹が突っ込んでくるのは大蛇にとってご馳走が自ら突っ込んでくるようなもの。

 ゆえに限りある頭部を三つも動員し虎徹を向かいうったのだ。

 

 成長した大蛇の開いた口は10mを超える。

 それが3つ。逃げ場はない。

 

「なるほどたいした速さだ。ならばこちらも秘剣でお相手しよう!」

 

 虎徹の剣が彼の魔力に呼応し光り始める。

 色は黄色、これは土行を象徴する色だ。

 

「土行魔法剣・風土ふうど!!」

 

 虎徹の剣が呼びかけに応じ漆黒に染まる。

 剣に起きた変化は刀身だけでなく、剣の周りに黒い風が巻き起こる。

 

「行くぞ!! 漆風怒涛しっぷうどとう!!」

 

 刀身から黒い風が巻き上がり大蛇に放たれる。

 もちろん大蛇はそんなことなど御構い無しに突っ込んでくる。生半可な攻撃ではその再生速度で帳消しにしてしまうからだ。

 

「シャアアアアッ……ア?」

 

 大蛇の口が虎徹に届くその寸前、大蛇の動きが突如鈍り始める。

 そして次の瞬間、大蛇の顔が崩れ始める。

 

 虎徹の剣より放たれた黒い風に当たった箇所がまるで砂にでも変わっていくかのようにサラサラと崩れ始めた大蛇の顔は風に吹かれ3つとも消え去ってしまう。

 

「すげえ……」

 

 その光景を見た雀長は思わず感嘆の声をあげる。

 土と風の属性を凝縮させた虎徹の魔法は対象を『風化』させる力を持つ。

 原理はわかるがここまで綺麗に風化させる技を雀長は見たことがなかった。

 

『シュロロロロロ……』

 

 異変を察知し他の頭たちも集まってくる。

 その間に他の頭も再生をほぼ終えている。やはり正攻法で8つ全て倒しきるのは不可能といえるだろう。

 

「興亀たちが来るまでの間、ここは守らせてもらう!」

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

「はあ……はあ……」

 

「うーん、期待はずれだなあ。結局その刀は何なんだい? ただの刀じゃ僕は倒せないよ」

 

 疲弊する俺に芭蘭はつまらなそうにする。

 既に何度も刀で斬りつけているのだが、どれだけ深く切りつけても立ち所に回復してしまう。

 炎や水、氷に雷。切断殴打絞殺毒殺などいろいろ思いつく限りの攻撃も試しては見たがどれも成果は得られなかった。

 

 しかしここまでは想定内。

 もうすぐアレ(・・)の効果が出るはずだ。

 

「さて、私も暇ではないですからね。そろそろ寝てもらいますか」

 

 芭蘭は俺にゆっくり近づきながら手を伸ばした瞬間、芭蘭の顔の穴という穴から血が流れ落ちた。

 

「……ん?」

 

 芭蘭は不思議そうに血を拭うが血はいくら拭っても止まることなく流れ続ける。

 鼻から耳から目から口から。普通に人では致死量に達しかねない量の血だ。

 

「おかしいな? 毒やウイルスは効かないように調整したのにな」

 

「おいおい勝負中によそ見か?」

 

 不思議そうに自分の体を眺める芭蘭を手にした日本刀で斬りつける。

 芭蘭は避けるそぶりすらせずにその一太刀を受け右腕を斬り落とすが別段慌てた様子はない。

 これくらいは軽傷だと思っているのだろう。

 

 しかしここからはそうはいかない。

 

「だからなんどやっても……あれ?」

 

 いつも通り再生したつもりだったのだろうが、右腕は異常な形に再生していた。

 切れた先から肌は黒く変色しており、腕はねじ曲がり指は腕のいたるところから無造作に何ん本も生えている。指の本数は10を超えまともに使うことは出来ないだろう。

 

「な、なんだこれ!?」

 

 芭蘭は初めて慌てた顔を見せ、自らの腕を反対の手で切り落とす。

 しかしなんどやっても同じ。再び生やした手も歪な形で生えてくる。

 

「お、お前何をした!!」

 

 感情をむき出しにして芭蘭は俺を睨みつけてくる。

 くく、その顔を見たら今までの苛立ちも解消されるってもんだ。

 

「昨日お前と会って俺はお前が正攻法では倒せないということに気づいた」

 

 だから対策を立てた。

 それが最初に使ったGW-003 DEAMON COREと途中で出した日本刀GW-004 MURAMASAだ。

 

「DAEMON COREの生み出すエネルギーは莫大。当然そんな簡単にエネルギーを出せる訳でなく副作用がある」

 

「副作用……?」

 

「それは放射能(・・・)。元々はエネルギーを無尽蔵に生み出せる魔道具を開発してた時に生まれた失敗品なんだけどな。思わぬ形で役に立ってくれた」

 

 ようは超強力な原発みたいなもんだ。そんなものを最大出力で使っていたのだからここら一帯はもう放射能汚染されているだろう。

 俺の体は機械だから当然効かないが奴は違ったみたいだ。

 

 まあ効かなかったら効かなかったで他の方法もあったのだが。

 

「放射能だと? 舐めた真似を!」

 

 喚きながら芭蘭は近づいてくる。

 しかしその足は突然絡まったように動かなくなり地面に勢いよく倒れこむ。

 

「ぐっ! 今度は何だ!?」

 

 芭蘭が自分の足を見てみると足には奇妙な黒い手のような模様が浮かび上がっていた。

 その模様が芭蘭の足を強く締め上げ歩行を困難にしていたのだ。

 

「くそ、なんなんだこれは!?」

 

「それがこの刀の効果さ」

 

「なに!?」

 

「GW-004 MURAMASA これは簡単に言ってしまえばいわゆる妖刀ってやつでな。使用者と斬られた者に呪いをかけるものなんだ」

 

「呪い……だと?」

 

 呪い。

 俺も半信半疑だったが呪われていると言われる物を材料に魔道具を作ってみたところ本当に魔法とも違う原理の力がある呪いの魔道具が完成した。

 あの時はいきなり自分で試さず実験用の人間で試してよかった。

 

 ちなみにこれは効果が強すぎて使い道がなく処分しようと思っていたのだがこの体ならへっちゃらなことがわかり採用された代物だ。

 

「なるほど、どうりで変な音が聞こえ異形なものが見えるはずだ」

 

「おいおい怖いことを言わないでくれよ。怖い話は苦手なんだ」

 

 どうやら俺には見えない世界が見えるようになるようだ。興味はあるが見たくはねえ。

 

「ま、というわけでこれで終わりだ」

 

 MURAMASAを抜き、もはやまともに動けない芭蘭の首を切り落とす。

 呪いと放射能の効果でもう体がまともに再生することはない。

 

「お前の敗因は、人間おれたちを舐めすぎたことだ」

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