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第1話 建国宣言

 暗雲立ちこめる空の下に、すさみ果てた大地が広がる。


 草木は枯れ、大地は裂け、生物の息吹など微塵も感じられなくなったこの地に、一際目を引く巨大な建造物がそびえ立っていた。


 西洋の城を思わせる造りに、悪魔や怪物を象った醜悪なオブジェで彩られているその城は、まるでゲームに出てくる魔王の居城だった。


そしてその城のバルコニーにはこの恐ろしい城がよく似合う人物が立っていた。


 鮮血の如く真っ赤なマントに漆黒の全身鎧フルプレートメイル、全身の至る所には貴金属や宝飾があしらわれたアクセサリーを身に纏っている。

 巨木の如き太い手足に、ヘルムから僅かに覗く眼光はとても鋭く、見る者全てを圧倒する出で立ちだ。


「それでは……お願いします」


 鎧の人物の後ろにいた女性が男に声をかける。

 透き通った水色の髪に、作り物のように整った目鼻立ちをしており、身に纏う純白のドレスと、それに匹敵する彼女の白い肌は黒一色の城内にて彼女を一層目立つものにした。


「ああ……」


 鎧の男はそう答えると眼下に広がる数万の人々に目を向ける。


 老若男女入り混じった人々は皆疲弊した様子であり、衣服が擦り切れてる者や軽くない怪我を負った者も多く見られる。

 それでも期待と畏れに満ちた目で頭上を見上げ、新たなる王の言葉を心待ちにしている。


 彼は堂々とした一歩で民衆の前に立つ。


「よく集まってくれた」


 辺り一帯に声が響く。

 音響設備のような物は見当たらないが、聞いてる者の頭に直接響くかの如く辺りに響き渡る。


「私の呼びかけにこれだけの人数が集まってくれたことを、とても嬉しく思う」


 その声は恐ろしくもあり、力強くもあり、そして優しかった。


「虐げられ、逃げ回るだけの日々は今日をもって終わる。我々は手を取り力を合わせ当然の自由と平和を手にする!」

 

 男が握った拳をかかげながら叫ぶと、民衆も熱がこもった歓声をあげる。

 涙を流す者も多く、彼らがどれだけの苦難を乗り越えたかが伺い知れる。


「我々は屈しない!普通に暮らし、普通に働き、普通に幸せを享受する!そしてそれを手前勝手な理由で邪魔する糞虫どもは全力をもって殲滅する!」


 民衆のボルテージは最高潮に達し、嘔吐するものまで現れるが、そんな些細なことは誰も気に止めない。


「そのためにお前たち全員の力が必要だ!私と共に創りあげてくれ!我々の楽園を!!」


 歓声が、渇いた大地を揺らし雲を散らす。


 彼はその反応に満足した様にうなずくと、更に一歩前に進み声高らかに宣言する。


『今ここにクリーク・Oオーネ・ジークの名において魔王国ゾロ・アストの建国を宣言する!』


今ここに、全世界を震撼させる最強にして最恐の国が誕生したのだった。

初めましてchankenと申します。

初執筆初投稿になります!

末永くお付き合いいただけると幸いです。

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