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老人と孫娘 ~歩き続ける人生~  作者: にわとりぶらま
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第23話 侵入者

 ガシャン!!



 眠っているわしはその物音で目が覚めた。


「何じゃ? 今の音は?」


 わしはベッドから起き上がり、耳を澄ます。



 カリン…



 どうやら、陶器の割れた音のようじゃ、しかも下の階から聞こえてくる。


 わしは何が起こったのか確認するために、ベッドから降りて部屋の出口へと進む。そして、扉を開けて部屋の外に出てみると、テレジアも部屋から出て来ていた。


「お爺様、さっきの音を聞きました?」


「あぁ、確かに何か陶器の様なものが割れる音がしたの、わしはテレジアが台所で何か落としたのかと思っておったが…」


「私はお爺様が喉でも乾いて、水を飲みに行かれたのかと…」


「しかし、わしもテレジアも今、ここにおる。という事は…」


 わしは考える。割れる様なものは一階の台所しかない…わしもテレジアもここにおる。台所というとあの幽霊たちがいる場所ではあるが、あ奴らはそんないたずらをするような輩ではない…となると…


「テレジアよ、何者かが侵入したのかも知れん… 盗人と思われるが、居直って何をしでかすか分からん、お前はすぐに逃げられる準備をしておきなさい」


「お爺様はどうするの?」


 テレジアは不安げな瞳をして、わしを見つめてくる。


「わしも衛兵の端くれ、自分の家に賊が忍び込んだというのに、ベッドの中で震えあがっているわけにはいかん、ちょっと見てくる」


「でも…」


 テレジアはわしの事を心配してか、眉を顰める。


「なあに、心配はいらんさ、ちゃんと武器を持っていく。それよりも、お前は逃げ出す準備をして、わしの合図があるまでは部屋に鍵を掛けて待っていなさい!」


 わしは部屋に戻り、冒険者時代に使っていた剣を持ち出す。やはり使い慣れた剣じゃ、手にしっくりとくる。


 わしが廊下に戻ると、まだテレジアがおった。


「これテレジア、何をしておる。さっさと部屋に戻らんか」


「だって、お爺様…」


 わしは心配してぐずるテレジアを部屋に追いやる。


「いいかテレジア、部屋に鍵を掛けて待っていなさい。もし、わしからの合図がないのに誰かが階段を昇ってくる事があるようなら、扉の前に、ベッドや机だとを押しやって部屋に侵入され内容にするんじゃぞ」


 わしはそう言って部屋の扉を閉める。最後の扉を締め切る前に、テレジアが何か言いたげな顔をしておったがわしは構わずに閉めた。


 わしは燭台を持ちながら出来るだけ音を立てないように耳を澄ませながら階段を降りていく。二階に辿り着くと、一階に続く階段と居間に繋がる扉がある。


 居間の扉は閉じられておるが、そのまま一階に降りたら背後から襲われる可能性や、賊がテレジアに向かう可能性もあるので、わしは念の為に居間の中も確認に向かう。


 わしは物音を立てんようにゆっくりと慎重に、そして、背後にある一階に続く階段を警戒しながら居間の扉を開く。


 わしは慎重に開こうとしたのだが、扉の蝶番がキュイと音を立てて、わしは心臓をビクつかせる。こんな事なら、油を差しておくべきじゃった。


 扉の隙間に燭台を入れて部屋の中を照らす。ぱっと見た感じには人の気配がない。扉をもう少し大きく開けて、部屋の中に入り込んでいく。


 窓もちゃんと閉じられており、暖炉もちゃんと消えておる。普段から整理整頓は心がけておるので、部屋に散らかった様子はないし、物が動かされた形跡もない。そして、この部屋には人が隠れられるような場所もない。


 わしはふぅと胸を撫でおろす。ここには侵入されておらんようじゃ。


 しかし、そうなると、やはり賊が入ったのは一階の台所という事になる。


 わしは新たに気を引き締め、一階へと向かう。階段も軋み音を立てないように、ゆっくりと抜き足忍び足で降りていく。階段の途中で、玄関の扉が見えてくる。ちゃんと閉まっておるように見えるが、鍵まで掛かっているかは分からない。


 一階に降り立つとわしは玄関の鍵も確認する。うむ、ちゃんと掛かっておった。しかし、どうするべきか、もし、家の中に賊がまだおって、テレジアに逃げる指示を出した時に、テレジアが逃げるのに手間取るのではないかと考えた。しかし、外から新たな賊が侵入する可能性も考えられる。さて、どうするべきか…


 わしは考えた末に、鍵は開けておくことにした。もし、外にも賊がいて玄関から侵入するとすれば、最初の賊がいの一番に鍵を開けるはずである。なので外からの侵入はないと考えた。鍵はカチャリと小さな音を立てて開かれる。


 さて、後は問題の一階奥の台所じゃ。わしは一階奥の台所に目を向けると、閉められているはずの台所の扉が開け放たれているのが目に飛び込んでくる。わしもテレジアもこんなずぼらや後始末の悪いことはしない。


 やはり、賊が忍び込んだのじゃ…


 わしは、剣を握る手の力を強め、気を引き締め、台所に視線を集中させる。そして、今までよりももっと慎重に音を立てないように足を進めていく。


 一歩、また一歩…台所に近づいていく。


 わしは高まる緊張のあまり、ゴクリと唾を呑み込む。その瞬間…



 カラン…



 突然、わしの背後で物音が鳴った。わしはすぐさま振り返る。


 すると、そこには玄関横の廊下に立てかけていたほうきが倒れていた。


 風で倒れた? いや、今、家の中に風など吹いておらん。ならどうして…


 次の瞬間、玄関と台所の間にあるトイレの扉がけたたましく乱暴に開かれる。


「くっそ!! なんでこう、気付かれる事ばかり起こるんだよ!!」


 トイレの中から黒ずくめの短剣を持った男が現れた。





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