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53話 クトゥルフ・オメガバスティオン・ニャルカスタム。


 53話 クトゥルフ・オメガバスティオン・ニャルカスタム。


「ちょっと、これは……厳しすぎる気がするんだが……」


 後じさりをするセン。

 魂魄の大半がプルプルと震えている。


 そんなセンに、

 『クトゥルフ・オメガバスティオン・ニャルカスタム』は、

 まるで、聖母のような笑みを浮かべて、


「……けれど、立ち向かってくるのだろう?」


 ゆらりと武を構える。

 穏やかな構え。

 『見』の姿勢。


 まっすぐに、センを見つめたまま、


「さあ、くるがいい」


 圧倒的上位者としての威圧を押し付ける。


 センは、その圧力に怯んだ。


 『理性の部分』が、即時の『撤退』を提案してくる。

 『理性以外の大部分』も、その提案を採用したがっている。

 普通なら、その時点で心と身体の悲鳴が一致するのだが、


「……」


 センは、拳を握りしめた。

 まるで、冬の山で遭難した子供みたいにブルブルと震えながら、

 不安に押しつぶされそうになりながら、


 ――けれど、

 それでも、



「……ヒーロー……見参……」



 目一杯の勇気を、あますことなく振り絞って、

 とびっきりの覚悟を口にした。


 それは、逃げ場を殺す文句。

 己でハードルを上げる愚行。


 誰も助けてくれない、何にも頼れない、この極限地獄で、

 それでも勇気を叫べる者が何人いるだろうか。




「――閃拳っっ!!」




 まったく光のない暗闇の底で、

 それでも、センは死力を尽くしてもがき、あがく。


 センが放った拳を、


「この世に存在する全ての命に匹敵する拳だ」


 オメガの片手が優しく包み込む。

 出来のいい児戯でも褒めるように、


「この世でただ一人、センエースだけがたどり着ける拳。美しい」


 本音ではある。

 そして、事実でもある。


 けれど、


「火球ランク3700」


 オメガが放った魔法は、

 『オメガ視点のクオリティ的』には、

 そうとう低いのだけれど、

 センからすれば、地獄の業火。


「がぁああああああっっ!!」


 左腕を燃やされた。

 一瞬で燃え上がり、

 センから、左腕だけを、丁寧に奪い取った。


「うっ……ぐぅうう……」


 のたうちまわり、うめき声をあげるセンに、

 オメガは、


「今のはメラ○ーマではない。メ○だ」


 と、軽やかな言葉を並べてみせる。


 センは、ギュっと奥歯をかみしめて、


「あんなに……頑張ってきたのに……こんなオチかよ……ふざけやがって……」


 これまでのループ地獄を思い出してしまう。

 『過去に浸っても意味なんかない』と理解しているが、

 積み重ねてきたものが大きすぎて、

 つい、愚痴をこぼしてしまう。


「普通……頑張ったら、報われるんじゃねぇのかよ……」


 右腕で、地面を殴りつけながら、

 センは、悔し涙を流し、


さいの河原よりひどい……積み上げても、積み上げても、最後には、鬼が蹴り飛ばしていきやがる……」


「私は鬼ではなく、どちらかと言えば、龍だがな」


「……どうでもいいわ。お前の属性とか……」


 そう言いながら、センは立ち上がり、

 残った右の拳をギュっと握りしめ、


「辛ぇよ……苦しいよ……誰か助けてくれよ……」


「誰も、お前を救ってはくれない。なぜなら、お前は救われる側ではなく、救う側だから」



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