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21話 もし、子供がいたら……


 21話 もし、子供がいたら……


 どんな巨悪を前にしようと、

 どんな面倒を前にしようと、

 どんな腐敗を前にしようと、


 センエースは、センエースであり続けた。

 全人類の絶対的精神的支柱で在り続けた。


 ――センエースが王になるまでの永い歴史の中で、

 世界には、様々なゆがみがひしめいていた。


 しかし、その穢れは、少しずつ、少しずつ改善されていった。

 問題は山積みで、完璧にオールクリアになることはないけれど、

 しかし、一つ一つと真摯に向き合う王の背中があるから、

 配下たちも、まっすぐに前を見る事が出来た。


 センエースに陶酔する者は次第に増えていく。

 『アウターゴッドから救ってもらったこと』に感謝する者はたくさんいた。

 しかし、感謝では終わらない、その先に在る想いに届く者がどんどん増えた。


 彼・彼女たちは、センエースの高潔さを心底から崇め奉る。

 全身全霊で心酔する。


 そんな熱狂的な信者たちに対し、センエースは、いつも、

 『俺のことを無駄に持ち上げるのはやめてほしい。しんどい、しんどい』

 と、延々に言い続けているが、信者たちは、みな、

 『やかましい。正当な評価しかしとらん。だまって玉座にすわってろ』

 と、王のイカれた謙虚さにイライラしつつも、

 日夜、王の支えになるための努力を続けている。


 世界が整っていく。

 命の倫理的完成を垣間見る。


 何度でも言うが、もちろん、問題は永遠に山積み。

 まだまだ完成にはほど遠い世界の中心で、

 しかし、夕焼け空を見上げながら、センは思う。


「思ったよりも……この世界は美しいかもしれない」


 喝采はいらない。

 賛美も不要。

 そんなものはどうでもいい。

 献上された地位や財産もどうでもいい。


 重要なのは、『自分と共に、不条理や不合理と向き合う覚悟を決めてくれた者が、思いのほか、たくさんいた』という事実。


 もっと少ないと思っていた。

 もっと醜いと思っていた。


 けれど、この世界は、センエースが思っていたよりも、

 ずっとまっすぐだった。


 もちろん、歪みはあるけれど、

 矯正不可能な地獄ではなかった。


 それを知れたことが、たまらなく嬉しくなった。

 最初は、ゼノリカのことを、『面倒な組織』と思っていたが、

 時がたつにつれて、どんどん、どんどん、愛着がわいてきた。


 いとおしく思うようになってきた。


「もし、子供がいたら、こんな気持ちなのかね」


 などと、ゼノリカを見つめながら、そんなことを想った。


 相変わらず、童貞のまま、

 ゆっくり、じっくりと、センは時間を重ねていく。


 そんな、理想の時間は、






 ――ある日、あっけなく崩れ去る。







 イブとの死闘から20年が経った、ある日の朝。

 爆音が響いたことで目を覚ましたセン。

 飛び起きて確認すると、同じベッドで寝ている妻たちの首が吹っ飛んでいた。


「……ぁ」


 クソ多忙な日々を過ごしていたセンは、

 いつしか、この悪夢のことを忘れていた。


 『ループ地獄はもう終わったのだろう』なんて、

 意識の底では、そんなことを思っていたりもした。


 だから、この不意打ちはきいた。

 体の奥底にズシンと響いた。


「うぇっ……おぉえぇっ……」


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