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【超番外編】ボッチイキリヤンキー黒ウサギ襲来!?

 今日も今日とて魔王城前の教会で聖堂の掃除にいそしんでいると――


 目の前の空間にヒビが生まれた。


 壁や床ではなく、何も無いところに突然ピシピシと亀裂が入ったのだ。


 割れたガラスのように砕けると、黒い穴がぽっかりと開く。


 それは魔王城内でも見たアビス的なゲートにも似ていた。あちらは球体だが、こちらは平面に楕円を描いたような形である。


 何か良からぬモノであれば大神樹によって守られるのだが、防衛機構が働かない。


「異世界からの侵略でしょうか」


 光の撲殺剣を抜き払い身構える。


 と、黒い楕円から姿を現したのは――


「ウサギ……ですか?」


 両手の手のひらに乗るくらいの大きさの、ちんまりとした黒ウサギがぴょんと空間をまたいで跳びだしてきた。


 つややかな黒い毛並みに金色の瞳をしている。


 大変愛らしい。


 ウサギは鼻をヒクヒクさせながら後ろ足で立ち上がり、周囲をキョロキョロと確認すると、長い耳を髪の毛でも撫でるように前足でブラッシングした。


「こんにちはウサギさん」


「あん? なんだテメェやんのかコラァ」


 可愛くなかった。


 次元を超えてやってきたのだから、もはや「しゃべった!?」と驚くようなことでもない。


 外見とは裏腹にウサギは眼光鋭くこちらを見上げた。


「ここはどこでオマエは誰だ?」


「私はこの教会の神官のセイクリッドと申します」


 胸に手を当て一礼する。


「つーか、その手で光ってるのは魔法だよな」


「おや、魔法をご存じですか」


 異界のウサギはコクコクと二度頷いた。


「当たり前だろ。こう見えてもアタシは闇魔導士だぞ」


「はぁ……それは大変恐ろしいですね」


 口ぶりは乱暴だが、自分をアタシと呼ぶということは女性なのだろうか。


 ここに魔王様がおられたら、あたしとアタシがかぶってしまいそうだ。


「なめんなロン毛!」


「はい?」


「しかし夢の中でまでオマエみたいな偽善者っぽいのと……いや、なんでもないし」


「夢……ですか?」


 黒ウサギは両腕を万歳させた。


「だって夢だろ! アタシが育った施設とは、なんか雰囲気が全然違うし」


「なるほど。建築様式や神官の服装などで違いが解るのですね」


 黒ウサギは前足を胸元で組むと、エヘンと胸を張る。


「ったりまえじゃん! あーけどなぁ……変な夢だこれ。会話できるとかって」


 光の撲殺剣をしまう。これは直感でしかないのだが、どうやらこの黒ウサギは悪いモノではないらしい。


 大神樹の芽も普段通り、ほんのりと穏やかな魔法力の光をたたえていた。


「せっかくですので、そちらの世界の事を教えていただけませんか」


「は? なんで?」


「では、こちらの世界の事をお教えいたしましょうか?」


「いや別に全然興味ないけど」


「何しに来たんですか?」


「こっちが訊きたいくらいだし」


 幸いと言っていいのか、彼女が飛び出してきた異界の扉は安定しているようだった。


 ウサギが前歯を剥く。


「この家は客にお茶の一つも出さないのか?」


「招いたわけではないのですが……まあ、私もこういった不意の来訪には慣れっこですので、こちらへどうぞ」


 半ば彼女に強制されたような形だが、お茶をごちそうすることにした。


 ウサギサイズのティーカップが無いのが悔やまれる。




 ◆




 ウサギはテーブルの上にちょこんと乗っかると、前足でクッキーを器用に持ちサクサク食べた。


「う、うまぁ……悪くないぞ。で、オマエ名前は?」


「セイクリッドと申します。貴女はなんとお呼びすれば良いでしょう」


「最強黒ウサギぴょんねる様と呼べ」


「ぴょんねる?」


「名乗るほどのウサギじゃないから」


 小柄な見た目に反して態度は大きいが謎の謙虚さ。これが解らない。


「ぴょんきち様でよろしいですか?」


「よくねぇよ! 間違えるな!」


「なにやら難しいお年頃のようですね、ぴょんもばいる様」


「携帯性高そうになってるぞ! テメェやっぱりアタシのこと舐めてんだろ? せっかく舎弟にしてやろうと思ったのに」


 黒ウサギはぷいっとそっぽを向いてしまった。


「まあまあ、機嫌を直してください。紅茶はいかがですか?」


「この姿じゃ飲めそうにないから、香りだけな」


「お茶……良いモノを煎れたんですよ。お客様用の高級茶葉を使用しました」


 1%ほど。99%は粗茶ですが神に誓って嘘はついていない。


「な、なんだよその悲しそうな目は!?」


「お茶を出せと仰ったのは貴女ではありませんか?」


「わ、わかった飲む! 飲めばいいんだろ!」


 ウサギの身体の大きさでは、カップが桶のようなものだ。


「い、いくぞ……おぼぼがばばあばばばば!」


 意外にノリの良いウサギだった。


 顔を突っ込んで溺れる黒ウサギの首をひょいっとつまみ上げる。


「ハァ……ハァ……死ぬかと思った」


「大変良いものを見せていただきました」


「はは~んさてはテメェ……ドSだな?」


「はて、なんのことでしょう」


 ハンカチを渡すとバスタオルのように顔や身体を器用に拭いて、黒ウサギはフゥとため息をついた。


「なにかお悩みですか? 私は神官ですから迷える子羊や迷い込んだ子ウサギのお悩み相談にも乗りましょう」


「な、悩みってほどじゃないんだけど……今度学校行くんだよ」


「ウサギの学校ですか? それはええと……とても楽しそうですね」


「ウサギのじゃねぇよ魔導士のだよ! 試験で結構良い成績だったんで、なんかエリートクラスってのに入ることになったんだ」


「優秀なのですね」


「ま、まあなぁ」


 黒ウサギが人間ならドヤ顔をしているだろう。このあげると調子に乗る感じ、どこぞの魔王様に近いものを感じる。


「では何を悩んでいるのでしょうか?」


「と、友達……できるか心配なんだよ」


「大丈夫ですよ。貴女はこうして初対面の私とお茶を楽しめていますし」




「ほ、ほんとか!?」


「私は楽しいですよ。ただ、誤解を受けやすい口ぶりですから、もう少し外面をよく……もとい、仲良くなるまではおしとやかにしてみてはいかがでしょう?」


「う、うっせー! それが出来たら苦労はしねぇよ! あと正体現したな!?」


 ウサギは不機嫌そうに後ろ足でトントンとテーブルの天板を蹴った。


「よく仲間から指摘されます」


「神官オマエ……仲間がいるんだ。なんか腹黒そうなのに……」


 金色の瞳がこちらを哀れむように見る。


「やめてください。その言い方は私に効きますから」


「ったく、テメェみたいなのにもちゃんとそういうこと言ってくれるやつがいるんだ」


 ピンと張ったウサ耳が力なくへなへなと折れてしまった。


「大丈夫ですよ。新しい環境で戸惑うこともあるでしょうが、何事も始まりとはそういうものです。誰も最初から信頼できる仲間がいたわけではありません」


「へー、ちょっといい話風じゃんか。ま、そうだよな」


「仲間との絆を育てましょう! 貴女が誰かを受け入れればきっと相手だって応えてくれますとも」


「だといいけど……ま、夢の中の神官のお告げってことで、心にとめといてやるよ」


 当初のとげとげしさが少しだけ緩和されたな。


 黒ウサギは二枚目のクッキーを食べようとした……その時。


 トントントン!


 と、小刻みにリズムよく、私室の扉がノックされた。


「セイおにーちゃはいらっしゃいま……わあああああ! うさちゃんだあああ!」


 お隣の魔王城より、ニーナちゃん緊急参戦。


「うお! なんだこのチビ!」


「しゃ、しゃべったー! うさちゃんおしゃべりできるなんて、天才ですか?」


 ニーナは黒ウサギに尊敬の眼差しだ。


「お、おう! すごいだろう? うーん、よく見ればオマエ、見所ありそうだな。アタシの舎弟にしてやるぞ」


「なるなるー! セイおにーちゃ! しゃていってなんですか?」


「ニーナさん。なると言ってから確認するよりも、確認してからなるかどうか判断を下す方がよいかもしれません」


「そ、そうでした。ニーナがうかつでした。うさちゃんさん、しゃていについて教えてください」


 ウサギはぽかんと半分口を開けていたが、鼻をピクピクっとさせてから「と、友達みたいなもんだ」とニーナに告げた。


「わあああい! じゃあじゃあニーナはしゃていです!」


 またニーナが奇妙な言葉を覚えてしまったのだが、訂正していいものかどうか。


 悩んでいる間に、ニーナはテーブルの上の黒ウサギを抱っこした。


 ちゃんと、お尻に手を添えて抱き上げる。


「お、おいコラやめろ!」


「わぁいもふもふでふかふかなのです」


 頬ずりするニーナは幸せそうに目を細める。困り顔のウサギがこちらに助けを求めた。


「おい神官! この幼女をなんとかしろ」


「仲睦まじくて大変よろしいですね。あいにく、お二人の姿をこの目に焼き付けるので忙しく、お力になれそうにありません」


「つっかえねぇ! おいコラ! いきなり抱っこはアレだぞ! ハラスメントだからな!」


「は、はらす?」


 ニーナがきょとんとなった一瞬の隙をついて、黒ウサギは四肢をジタバタさせ身をよじって脱出すると、一目散に聖堂へと逃げていった。


「あっ! 待ってえええええ! ウサちゃんお名前はああああ!」


 黒ウサギにテンションつよつよになってしまったニーナは、慌てて足をもつれさせた。


 倒れそうになったところをそっと後ろから抱き留める。


「伝説の黒ウサギぴょんまるとる様だッ!」


「まるとるー!」


 名乗る度に名前が変わるのは仕様なのだろうか。


 ともあれ、ニーナの「もどってきてー!」の声を背に受けて、ウサギは聖堂の中心にぽっかりあいた黒い穴に飛び込んだ。




 ヒュンッと空気が抜けるような音とともに、穴は閉じて消えてしまう。


「おにーちゃ……まるとるちゃんは?」


「どうやら元の世界に戻っていったようです」


「また会えるかな?」


「最後の教会は閉ざす門を持ちませんから、きっとまた遊びにきてくれますよ。そのときは三人でお茶にしましょう」


「はーい!」


 願わくばもう少しだけニーナと戯れる姿を見せて欲しかったのだが、異界からやってきた黒ウサギの未来に幸アレ。

こっそり新作を始めましたがここに直接リンクは貼れませんので

興味のある方はツイッターの方から参照ください


https://twitter.com/hF0ilLaO1F5umvc

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今でも新しい話が投稿されるから更新が楽しみだわ! [一言] カクヨムでも公開されたわね! なろうからのコピペだけどレビュー書いといたわよ!
[一言] コラボ&新作宣伝だったでござる。 そして見に行ったら、ウサギさんの名前に原型が無くてビビったでござる。 …別のサイトだとまたレイアウトが結構変わってて、最初の1,2分、目次からどこにタイ…
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