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こちらラスボス魔王城前「教会」  作者: 原雷火
シーズン8 ※Pルートは「神トーク」までの通常ルートを読み終えてからお読みください
315/366

少女二人、触手系、大神官。何も起こらないはずもなく……

 カノンの修行につき合うことになった。


 白亜の宮殿のようなリムリムの居城。花咲き乱れる中庭が特訓の場だ。


 勇者アコは保育所カジノに預けておけば問題無し。


 元暗殺者のキルシュと連絡がとれないのは少々気がかりだ。かつて見合いをさせられた俺としては、王都の彼女の実家を訊ねるのは気が引ける……が、あとで様子をうかがいに行くとしよう。


 今はカノンの強化である。


 まあ、一日二日そこいらで、いきなり強くなるとは思っていない。


 不安で頭がパンクしそうなカノンに、なにかやるべきことを与える。人間、やってる感さえあればなんとかなるものだ。


「というわけで、講師のリムリムさんです」


「二人ともおいしそ……よく来てくれたのだ! 歓迎するのだ!」


 ピンク髪のヘソだし悪魔娘は、自身の影からゼリー状のスライム的なものを生み出した。


 漆黒のプニプニ――ゼリーワーム。


 触手状に変形して捕らえた相手から聖なる力を吸い上げて、悪墜ち闇墜ちさせるというカノンにとってはトラウマな相手だ。


 以前、アコをかばってゼリーワームに捕らえられ、洗脳されてしまったこともあり、神官見習いの腰が引ける。


「り、リムリム殿それは危険であります! しまってほしいでありますよ」


「そうはいかないのだ! 修行に危険とハプニングとラッキースケベはつきものなのだ」


 最後のそれはつきものではないだろうに。


 カノンよりもやる気に満ちた悪魔娘に尋ねる。


「ところでリムリムさん。調子が悪かったのではありませんか?」


「セイクリッドをぺろちゅーしたから元気になったのだ!」


 まあ、嘘は言っていないのだが……。


 平らな胸を張って吸聖姫は続けた。


「ふっふっふ! ここは我が居城。ホームグラウンドこそ魔族の力をもっとも発揮できる場所なのだ!」


 拠点を持つ上級魔族――魔王候補たちにとって、その力を最大限に発揮できるのは、やはりそれぞれの“城”ということらしい。


 ステラは魔王城の外でも強力な魔法を使えるが、魔王城内であればさらに強くなる……のだろうか?


 途端に神官見習いの眼鏡がキラリと光る。


「セイクリッド殿……悪魔に魂を売ったでありますか!?」


「これでカノンさんの特訓ができるのであれば、安い買い物です」


「じ、自分のために!?」


「まあ、リムリムさんが元気が無かったというのもあります」


 リムリムは悪魔の尻尾をバタバタと左右に振った。


「それからセイクリッドとステラのツイス……もごご」


 とっさに少女の背後に回り込むと、そっと彼女の口を手で覆う。


 リムリムの耳元に「約束しましたよね」と、囁いた。


 彼女はうんうん頷く。少々怖いがこのままではらちが明かないので解放した。


「ぷはー! ともかくリムリムは良い子の魔族なので、優しい大神官が助けてくれたのだ! 日頃の行いなのだ!」


 日頃の行いで換算すると善行ポイントが赤字な件。


「じ、自分も常日頃から良い神官見習いであろうとがんばってるであります! その場合、セイクリッドポイントはいただけるのでありますか?」


「なんですその謎のポイント制度は」


「セイクリッド殿に評価されるともらえるのであります。百ポイント集めると……」


 リムリムがコウモリのような羽をばたつかせた。


「ど、どどどうなるのだ!?」


「二人きりの悶絶苦行荒行コースにご招待であります! 刷毛水車や言葉責めによる、ドS大神官による過酷な責め苦であります!」


「それは気になるのだ!」


「今ならポイント還元でドS度が5%アップであります!」


 二人の少女はグッと握手をかわした。なにか通じ合うものがあったようだ。


「私にことわりもなく奇妙なポイントシステムを作らないでください」


 俺は光の撲殺剣を抜き払った。


「では、二人まとめてかかってきてください」


 アコが目を丸くする。


「リムリム殿を相手に自分が戦って訓練するのではないのでありますか!?」


 俺は目を細めて首を左右に振った。


「私もたまには運動をしたいですから」


「運動なら夜のツイスターゲー……な、なんでもないのだ。笑顔で圧をかけるのはやめるのだぁ!」


 軽く撲殺剣をリムリムめがけて打ち込むと、寸前のところで防壁魔法が俺の一撃を弾いた。


「おや、昔は攻撃一辺倒でしたが、仲間を守る反応速度が上がりましたね」


 短杖を構えてカノンはグッと表情を引き締めた。


「アコ殿が無茶をする分、たくさん鍛えられたでありますから」


 リムリムも羽をばたつかせて、ふわりと浮き上がるようにバックステップで距離をとる。


「セイクリッドに勝ったらご褒美欲しいのだ!」


「いくらでも吸わせて差し上げますよ」


 俺は首を傾げるようにして頸動脈のあたりを人差し指でトントンと叩く。


「本気で行くのだ!」


 リムリムがゼリーワームを三体召喚し、合計四体を並べた。


「カノンさんはいかがですか?」


「じ、自分もセイクリッド殿の首筋を吸って良いのでありますか!?」


「それはその……あくまでリムリムさん向けのご褒美ですから、カノンさんも私にしてほしいことがあれば、言ってみてください」


「そ、そんな……神官見習いなら神官らしい模範解答をしなきゃいけないのでありますよね? 神権ゼミの最新号がほしいとか! 最新の改訂版の神学辞書がほしいとか! 勉強のため図書券をもらっても、チケット屋さんで換金なんてしないでありますよ!」


 どうやらエノク神学校で優秀学生に贈られる図書券を、冒険の費用の足しに換金したことがあるらしいな後輩。


「いえ、別に神官らしいご褒美でなくてもいいですよ」


 少女はぐっと杖を両手で握り締めた。


「で、では……あ、あの……もしセイクリッド殿から一本とったら……」


 天を仰ぐと少女は中庭に声を響かせた。


「頭を撫で撫でしてほしいであります!」


 慎ましやか!?


「わかりました。上手くできたらニーナさんにもしたことがない、最高の撫で回しをして可愛がってあげましょう」


「かわいがりでありますか!?」


「パワハラ案件ではありませんのでご安心ください」


 戦闘態勢を整えた二人の少女が、アイコンタクトをおいて俺めがけ本気で牙を剥く。


 二対一に見えるが、リムリムのゼリーワーム四体も合わせれば、数の上ではチームおかっぱ眼鏡吸聖姫は圧倒的だ。


「やっちゃうのだゼリーワーム!」


 暗黒水饅頭から無数の触手が俺を捕らえようと伸びる。


「中級光弾魔法ッ!」


 さらに触手の軌道と重ならないように、神官見習いが光弾を撃ち込んできた。


 それを撲殺剣で叩き落とすが、その間に迫る黒き触手の群たち。


 危うし大神官。このまま俺は触手責めされてしまうのか?




 五秒後、頭に大きなたんこぶをつけた少女二人が中庭に倒れていた。


 十分手加減はしたが、それなりにダメージはあったはず……だが。


「な、なんのこれしき! もう一本、おっすお願いするであります!」


「リムリムも負けっぱなしは嫌なのだ」


 カノンがキャスケット帽を被り直して短杖を構えた。


「中級回復魔法!」


 リムリムと自身を治癒して、二人はお互いに耳打ちをしあう。


「まず……で、そこを……狙って……するであります」


「それはいい作戦なのだ……を……して……舐め回すようにするのだ」


「むしろ舐めまくりでありますよ」


「「でゅふふふふ」」


 変なスイッチが入ったようだ。


 たまにはアコやキルシュ以外の仲間と戦うのも、神官見習いには良い刺激になるだろう。


 こうして二人が足腰立たなくなるまで、俺は光の撲殺剣で少女たちの弱点を突き続けるのだった。

今夜は0時に続きを出します

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