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ニーナちゃんの決意表明に見せかけた大神官による説明会

 ニーナが「めきょ?」と、妙な擬音に食いついてしまった。勇者パーティーの自称良心ことカノンが早口になる。


「なななななんでもないでありますよ! いや、しかしニーナちゃんと気軽に呼んではいけないというかその、恐れ多いというでありましょうか」


「カノンちゃんはニーナのこと、ニーナちゃんって呼んでほしいなぁ」


「わ、わかりましたであります!」


 びしっと敬礼するカノンに、ニーナも「ありがとうございます!」と、同じように敬礼で返した。なにこのえっと……まあいいか。


 本来ならニーナと面識のある全員を呼びたいところだが、マリクハで彼女に技を伝授した着ぐるみの師匠たちは所在も知れない。


 とりあえずメイド女学院のメリーアンに、ニーナの事について書簡を送ったくらいである。が、それも王ディションが始まれば知れ渡る事だ。


 王は密室で決まらない。王ディションの様子は、大神樹の芽を通じて世界中に公開される。


 そして、人々は願うのである。


 誰を王にするのかを。その祈りの力が大神樹を通じて、候補者たちに力を与えるという。


 ニーナに過剰に力が集うのはよくない反面、まったく力が得られないというのも酷な話だ。


 教会もクラウディア擁立でニーナへの祈りの供給は最低限だろう。


 それに、これはあくまで俺の勝手な思い込みでしかないが、ここに集った人々の祈りならば、ニーナの身体に負荷をかけることはないように思えた。


 俺自身はクラウディアを勝たせるために尽力しなければならないのだが……。


「では、もう少しだけ私の方から説明をさせてください」


 俺はこの場に集まった一同に王ディションについての情報を開示した。といっても、ステラたち魔王城組には、事前に一度話してある。


 王ディションは三つの試練によって構成されている。


 知、勇、武というものだ。三つの試練を総合して評価が下されるらしい。


 ニーナ自身も「あたまとこころとからだ」で競い合うということは、なんとなく理解しているようだった。


 それらの競技の内容については過去の文献などをあたったのだが、年代事にバラバラで大まかにしかわからなかった。どうやら競い合う内容を意図的に変えているらしい。


 が、大まかに言えば以下の通りである。


 知は知性を競い合うもの。これに関しては筆記試験(?)になるのだろうか。まさか知性(物理)で殴り合いなどにはならないとは思うのだが、開催された時代時代で内容がバラバラだった。


 続く勇に関しては、王家の墳墓にて勇気が試されるらしい。中で何が起こるのかは、極秘扱いとされており知る手立てが無かった。対策の立てようもないのだが、故に勇気が試されるというのは逆説的に説得力がある。


 問題は最後の武の試練だ。候補者たちの身体強化は、この直接的な戦闘に備えてのものだ。


 支持者の祈りが力となるのも、恐らくはこの試練である。


 どの時代においても決闘であり、王候補だけの時もあれば、軍を率いてぶつかり合うケースもあった。


 俺が説明を終えると、すべてを聞き終えてアコが握った拳をゆっくりと天に掲げる。


「よっし! ニーナちゃんが王様になれるように、ボクは応援するよ! ラスベギガスの街には世界中からお客さんがくるし、総出でニーナちゃんキャンペーンだね!」


 ん? 流れ変わったな。俺の想定外の方向に。


 神官見習いが勇者に追従する。眼鏡のフレームを指で押し上げながら、ニヤリと口元を緩ませた。


「自分も諸先輩方に同級生とか後輩とか教員の方々とか、エノク神学校で声をかけるであります。こう見えて、結構慕われているのであります」


 教会はクラウディアを推すが、このままいけばエノク神学校がニーナ側に?


 キルシュに至っては「闇社会には顔が利いちゃうんで、まかせてくださいね」と、ピースした手を目元にもっていく始末だ。


 しまった。俺はすっかり三人を甘く見ていた。


 アコはこれでも勇者である。しかも街の人気者だ。彼女の地盤ともいえるラスベギガスでは、かつて魔王候補アイスバーンを倒した功績もあって、圧倒的な支持を集めていた。


 さらにカジノを財源とする観光都市でもあるラスベギガスは、世界中から人々を集めて栄える不夜城的な側面を持つ。


 その情報拡散力は、一地方都市としては群を抜いていた。


 カノンもエノク神学校ではエリート選抜クラスの一員である。それが勇者とともに活動しているのだから、実情を知らない生徒たちがコロッと騙されて、カノン超優秀説が囁かれていたとしても、おかしくはない。その優秀な学生の言葉には、より多くの人間が耳を傾けかねなかった。


 加えてキルシュまで乗ってくるとは思わなかった。アコやカノンにはない裏家業的な方面に、彼女の実家は強い影響力を持っている。


 教会や王族とは遠い世界だからこそ、その分がニーナに加味されれば他に無い強みになってしまいかねない。


「あのええと、アコさんカノンさんキルシュさん。そこまでしていただかなくとも……」


 アコが吼える。


「ニーナちゃんのためにも、ボクら全力で応援するよ! ほらセイクリッド転移魔法で送って! ほら早く早く!」


 ええい、ここで行かせて必要以上にニーナに力が集まるのは……いや、支持者が多い方がいいのだろうか? ニーナへの身体的負担も、短期間であれば……。


 俺が迷う間に、


 カノンとキルシュが講壇の裏手から、あっという間にマーク2を引っ張り出して設置した。


「案山子のマーク2殿を見つけたであります」


「でかした! さすがカノンだね」


「っていうか、案山子さんがいればセイクリッドさんいらなくないですか?」


「しー! それ黙ってなきゃだめだよ。本人の前で言ったら傷つけちゃうでしょ?」


 アコさんや、フォローがド下手すぎやしませんかね。あとキルシュは今度、教育(物理)が必要だな。


 勇者の少女が案山子に祈る。


「んじゃあボクはラスベギガスに送って!」


「自分とキルシュ殿は王都であります! エノク神学校と暗黒街近くで!」


 俺の「ちょっと待ってください」という制止も、興奮したポンコツ三姉妹には届かない。


 加えて案山子のマーク2も、さも当然のようにアコたちに転移魔法をかける。


 ニーナが笑顔で手を振った。


「いってらっしゃーい」


 勇者パーティーがなんのために転移魔法でそれぞれ跳んだのか、恐らくニーナにはわかっていなかった。

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