37 エピローグ
ラクシュは行きよりもやや緩やかに飛び、ジークフリートたちを飛空艇のある場所まで送り届けた。
「快適な空の旅」とまでは言い難かったようで、ジークフリートは地面に降り立つなり、
「やはり飛空艇は偉大だ。人間が空を飛ぶにはこういったものが必要なのだ!」
と演説を始め、一緒に戻ってきた者たちから共感を得ていた。
──
「おまえたちはこの後どうするつもりだ? 帰る場所はシドに焼かれてしまったのであろう?」
飛空艇に乗り込み、飛び立った後、ジークフリートは甲板にいたクロードに声をかけた。
ドラゴンとは違い、飛空艇の甲板は落ち着いて空の景色と空気を楽しむことができる。
護衛の近衛兵は会話が聞き取れない程度に離れた場所にいた。
「別に? 盗賊は自由だ。好きなところで商売を始めるさ」
おどけるようにクロードは答えた。
「勝手にそういう商売を始められると迷惑なのだがな?」
ジークフリートは苦笑いを浮かべている。
「どうだ、余の下で働かぬか? 長年働いてくれた臣下がふたりいなくなってしまってな。待遇は約束するぞ?」
「皇帝陛下」
クロードは口調をやや改めた。
「確かにあなたは良いヤツ……王だと思う。俺は帝国を誤解していた。もっといけ好かない国かと思っていたが、悪くないところだった。でもやっぱりそっち側にはいけない。自由に生きていきたいんだよ。迷惑は……なるべくかけないようにする。次に会ったときは捕まえてくれたっていい。だから、今日のところは見逃してくれないか?」
「まあ良かろう。おまえの願いは聞き届けた。これも上に立つ者の度量というものよ。ついでにおまえたちの手配状には『生け捕りにするように』と明記しておいてやろう。余は優しいからな。だが、エマは置いていけ。あの娘をおまえたちと一緒にはできない。我が友の妹でもあるしな」
ジークフリートは冗談のように言ったものの、その目は真剣だった。
「そいつはかまわないが、陛下はエマをどうするつもりで?」
「我が妃に迎える。もちろん、無理強いするつもりはない」
「……それはどういう気持ちでだ? 好きなのか? それともあの王家の血が目的か?」
クロードは眉間に皺を寄せていた。
「クロードよ、おまえの言いたいことはわかる。だがな、そのような話は余とエマだけが共有する国家機密なのだ。他の誰にも明かすわけにはいかん」
皇帝は笑って首を横に振った。
「そうかい。ならいいさ」
クロードも笑い、その後、視線を空に向けた。
「なあ、ガーネッツたちは間違っていたと思うか? 実を言うと、俺はそんな悪くなかったんじゃねぇかって思ったんだ。もちろん、エマを犠牲になんかできないが、その、あいつらの考えていたことは、まっとうだったんじゃないかってな」
そのことをクロードはずっと考えていた。自分も人狼であり、世界を憎んでいたこともある。その世界を変えようとしたガーネッツたちは正しかったのではないかと。
「クロードよ。おまえもか?」
ジークフリートは不本意そうな顔をしている。
「神に頼るな。余がいるであろう? 余は足が無くとも歩いてみせたであろう。腕がなくとも石を砕いてみせたであろう。翼が無くても飛んでみせたであろう。余を甘く見るな。皇帝だぞ? 平和な世界など大したことではない。それがガーネッツたちの願いであれば、いつか叶えてみせよう。そしてあの世で再会したときに言うのだ。
ざまあみろ、人の力を甘く見るな、とな」
太陽を背にしたジークフリートは、全身を黄金色に輝かせていた。
それは人の光のようにも見えた。
最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。
図書館の視聴覚コーナーで観た『カリオストロの城』に魅了され、映画館で観た『天空の城ラピュタ』に感動し、テレビで観た『ふしぎの海のナディア』に涙した自分は、「いつか、そんな作品を作ってみたい」と思っていました。子供の妄想みたいなものです。
自分にはそういう冒険活劇モノは難しいだろうとは考えていましたが、一応小説を5本書いたので、「ひょっとしたらいけるんじゃないか?」と思って今回挑戦した次第です。
書いてみた結果は……やっぱり難しかったですね。
誰かひとりでも楽しんで頂けたのなら幸いです。
今までの作品に対する感想とレビューは、何度も読んで励みにしていますし、書籍化する場合は参考にさせて頂いております。
また、お願いとなりますが、低い点でも構いませんので、評価を頂けるとありがたいです。
今後の参考にさせて頂きます。




