129 説明5 ペトロネラの場合
超特大のカミングアウトを聞いたボエルたちは、ぐったり。フィリップが詳しく説明したら、聞きたくなかったとか言ってる人が大多数だ。
ここで質問者はタッチ交代。ペトロネラという金髪巨乳メガネ美女の登場。この女性はメイドでも外交部隊に所属する超エリート。フィリップと出会った時は、アラフォー崖っぷち処女だった女性だ。
フィリップとの関係は、城で従事するメイドが険悪になっていたから、付き合っているフリで噂話を作り、ガス抜きしていただけと言いたいところだか、やっちゃってる。
「なんでレンネンガンプ侯爵のような立派な方まで殺してるんですか!?」
そのペトロネラがフィリップを問い質した。
「だって~。アイツ、僕のこと殺そうとしたんだも~ん」
「侯爵がそんなことするワケないでしょう。フレドリク殿下が次期皇帝に決まっていたのですから、フィリップ陛下を殺す必要が見当たりません」
「本人に聞いたら、念の為とか言ってたよ? ほら、動機あるじゃん??」
「そんな理由でなんて……」
「そもそもあの一族、歴代の次期皇帝に害がある皇子をこっそり排除してあの地位にのさばっていたんだよ? 皇族として見過ごせるワケないじゃん。僕、悪くない」
「そ、それが事実だとしたら悪いのはレンネンガンプ侯爵家ですけど……せめて言い方を重くしてくれません?」
ペトロネラもありそうな話だと思ったが、フィリップの言い方が軽すぎたので、真実かどうかわからなくなっちゃった。
「とりあえず、謝ることは謝ったかな? 他になんか謝ってほしいことある人いる?? ……ボエルは時間掛かりそうだから、また今度時間を作るよ」
フィリップが質問すると、最後のカミングアウトが重すぎて誰も手を上げない。ボエルが遅れて手を上げたが、些事が多すぎるから次回に持ち越しだ。
喋り過ぎてお昼になっていたので、ひとまずランチ。皆、なんの話題をしていいか困っているのか、料理の話ばかりをしていた。
「そんじゃあ、ここからは3年前の話から今日までの話をしようか。あ、ネラさんにはイロイロ押し付けちゃったね。助かったよ。ゴメンね~」
フィリップは失踪した理由から、ダンマーク辺境伯領に潜伏してクーデターを成功させたことを語る。
ただ、事実はフィリップが皇帝になっていることで証明されているのに、ペトロネラ以外はお伽噺を聞かされているような顔だ。
「まだ僕の賢さも強さも伝わってなかったか~」
午前の謝罪会見は、クーデターを早く信じさせるためだったけど、信じられない話ばかり出て来るから効果は薄かったね。
「ネラさんは信じるよね? 手紙でどうなるか書いたし」
「はい。3年前から経済状況の悪化、大量の死者が出ると予見されて当たっていました。ただ……」
「ただ??」
「間が抜け過ぎです! 奴隷が帝都に流れ込んで来て大変だったんですよ! なに戦争してるんですか!? それを1人で追い返したですって~~~??」
「な、なんかゴメンね。あまり書き過ぎると兄貴にバレるかと思って……」
「私のこと信じてなかったのですか!?」
ペトロネラはフィリップのことを少しは知っていたけど、怒りは爆発。クーデターが終わって何度か顔を合わせていたが、いつも周りに人がいたから話せなくてストレスが溜まりに溜まっていたみたいだ。
ペトロネラの苦労話を皆で聞き、皆でフィリップを責めたらこの話はようやく終了。フィリップは涙目で次の話をする。
「んで、みんなに頼みがあるんだけど……そんな目しないで? 真面目な話だから。ね?」
伝説級の話ばかり聞かされた皆は疑惑の目。フィリップは拝んでお願いしてます。
「いま、帝国では議会制を始めたのね。その議員が少ないから、みんなにも入ってもらいたくてね」
本当に真面目な話が来たから一同ビックリ。代表してダグマーが手を上げた。
「国の行く末を考える場に、女性が入ってもよろしいのですか?」
「なに言ってんの。帝国の国民のうち、半分は女性だよ? 女性の声がないと女性が蔑ろにされてしまう。居なきゃ困るの僕じゃなくて女性だよ??」
「そ、そうですね……確かに……」
「長らく男に支配されていた世界にいたんだから、そういう考えができないように育ってるんだよ。それを変えるための、女性の登用ってこと。もうすでにネラさんは男の中に入って戦ってるよ? 他にも数人、議員になってくれた。僕じゃなくて、女性を助けるために議員になってくれない?」
フィリップが説得すると、共働き夫婦であるリネーアは大賛成と手を上げてくれた。しかし、その他は腰が重い。
「私みたいな人殺しが、そんな立派な場に立ってもいいのでしょうか?」
「それは与えられた仕事でしょ? 気にすることないよ。なんだったら、殺さずに済む法律を考えて提案したらいいんだよ。それができるのは経験者だけだからね」
ダグマーも説得成功。フィリップは次にボエルを標的にした。
「ボエルは~……無理か」
「なんでだよ!?」
でも、説得する前に諦めたから怒鳴られちゃった。
「どう考えても騎士のほうが合ってるでしょ?」
「それはそうだけどよ~。馬鹿にされてるようにしか見えねぇんだけどな~」
「本当は同性婚のことをやってもらいたかったんだけど……リネーア嬢に代弁してもらおっか?」
「だからな。オレを外そうとするな」
「じゃあ、やってくれる? もう一生剣を振れない人生になると思うけど」
「辞退させていただきます……」
ボエルの場合は、辞退するように説得するフィリップ。クマ女にはお上品な仕事は合わないもん。
「エイラにも本当は議員になってもらって、不妊に苦しんでいる人を助けてもらいたかったんだけどね~……」
「そういうことができるなら是非ともやりたいのですが、私が議員になると何か不都合でもあるのですか?」
「違う仕事を頼みたいんだよね~……これ、ここにいる人だけの秘密ね?」
今度は何を言い出すのかと全員構えた。
「聖女ちゃんの子供を引き取ってもらいたいの」
「前皇后陛下の? それは皇家の血筋なのでは??」
「それが聖女ちゃん、不貞を働いてて誰の子供かもわからないんだよね~」
「「「「「なっ……」」」」」
今日、何度目かもわからない爆弾発言。全員、口を大きく開けて固まったよ。
「僕も子供は殺したくないから、病気で死んだことにして、口の堅い人に引き取ってもらいたいの。エイラだったら信用できるから頼めないかな?」
「もしも私が断ったらどうするのですか?」
「他国に島流し……もう5歳だからな~。城の記憶はあるから誰かに喋っちゃいそうだな~……しばらく地下牢暮らし? 恨みを持ってるなら、その時はその時だね」
フィリップが口に出しながら考えると、エイラも覚悟が決まった。
「子供がそんな辛い目にあうぐらいでしたら、私が育てます」
「本当? エイラだったら子供もいい子に育つと思ってたの~。ほら、ここにいい子の見本がいるでしょ??」
「「「「「……どこが??」」」」」
「国のために馬鹿を演じてたんだから、いい子じゃ~~~ん」
いい子の見本にフィリップが当て嵌まるワケがない。賢く強いことは認められても、大嘘つきで女好きで馬鹿っぽいんだもん。
こうしてフィリップと深い関わりを持つ女性は、各々の仕事に尽力するけど、フィリップと会った時はどこまで本当のことを言っているのかと何度も確かめるようになったんだとか……




