127 説明3 エイラ、ダグマーの場合
フィリップのクーデター成功から1ヶ月。議会も議員の数は少ないながらも機能し、フィリップが考えた制度もほとんど可決となった。
皇帝の考えた制度だもん。議長のダンマーク辺境伯はバリバリのフィリップ派閥だもん。フレドリクを部下にしたから、めちゃくちゃ機嫌がいいんだもん。フレドリクに操られているとも知らずに……
フィリップもようやく暇な時間ができたので、夜遊びしたい。しかし、エステルが睨んでいるから、以前から打診していた者たちと城の一室でウキウキ面会だ。
「みんな~。久し振り~」
「「「「「はっ。皇帝陛下。御就任おめでとうございます」」」」」
「固い固い。みんな僕と体の仲でしょ~?」
「「「「「はあ……」」」」」
そう。今日集めたメンバーは、全員フィリップの知り合いの女性、エイラ、ダグマー、ボエル、リネーア、ペトロネラ。
フィリップに「体の仲」とか言われた皆は「旧知の仲と言え」と心の中でツッコンだ。
「ま、楽にして。皇帝になっても僕は僕。何も変わらないよ。いつも通りでいこう。あ、ボエルは何を言われても殴らないでね?」
「殴らなねぇし!」
「それそれ~。そのツッコミ、久し振り~。ニヒヒ」
フィリップが本当に昔のままだったので、皆は畏まって損したって感じで席に着く。その時、「皇帝を殴ったんだ」という感じで見られたボエルは居た堪れない顔で席に着いた。
「今日呼び出したのは、みんなに頼みたいことがあるのと、みんなが聞きたいことがあると思ってね。あと、謝罪~。僕、兄貴に勝てるほど賢くて強かったの~。嘘ばっかりついてて、ゴメンね~?」
フィリップが一気に喋ると、全員お互いの顔を見合わせるだけ。皇帝になっているからフレドリクに勝利したのはわかるが、文武両道には引っ掛かりまくるからだ。
しばらくしたら一斉に質問しようとしたので、フィリップは出会った順に説明すると言って静かにさせた。
「んじゃ、エイラからね~? 何が知りたい??」
このエイラという美しい巨乳の女性は、フィリップが7歳から10歳までの専属メイド。業務内容に夜伽の教育係も入っていたから、フィリップは1日も耐えられなくて初めてを捧げてしまった女性だ。
「そうですね……文武両道の件です。勉強は覚えが悪かったですし、運動は私の知る限り、お散歩ぐらいしかしてませんでしたよね?」
「ふたつの質問ね。勉強はわざと間違えていたの。覚えてるかどうかわからないけど、いつもだいたい半分ぐらい間違えてなかった?」
「そういえば……」
「ね? 運動は、僕、7歳からダンジョン通いしてたから、その頃からかなり強かったよ」
「「「「「はい??」」」」」
いきなりとんでもない情報が出たので、全員からとぼけた声が出た。
「7歳の時に、氷魔法を使えることに気付いてね。これ、この氷のダルマね。で、エイラが出て行ったあとに、氷魔法を使って部屋を抜け出して、ダンジョンに行ってたの。あ、時間が限られているから、地下6階までしか行けなかったけどね。これで答えでいい?」
フィリップが質問すると、エイラは唸りながら頷いた。
「はあ……しかし、魔法適正検査では何も適性はないと聞いていましたが」
「それは僕が水晶を騙したの。魔力を操作したら、いけたよ?」
「そんな方法があったなんて……信じられません……」
「だろうね~。でも、実際に氷魔法使えるもん。これを使って娼館通いも始めたから、エイラなら違和感あったんじゃない?」
「「「「「はあ~~~??」」」」」
またしてもとんでもないワードが出たので、一同驚愕の声。フィリップが「8歳からだよ~」と言ってもその声は止まらなかった。7歳でも8歳でも、子供が娼館に行ったらアカンもん。
「確かに急にお上手になったことがありました……教えたこともないことをやり出したので、驚いた記憶があります」
「ね? 少なくとも部屋からは出てるでしょ??」
「はい。そう考えると辻褄が合います」
「そういえば帝都で妖精騒ぎあったじゃん? アレ、僕だったよ。衛兵から逃げ回るのに屋根の上を飛び交っていたら、子供に見間違えられてね~。エイラが僕を妖精って言ってたの正解だったね。アハハ」
「はあ……」
エイラに秘密を打ち明けただけで、女性陣はぐったり。短い間に驚き過ぎたみたいだね。
続いての質問者は、ダグマー。シュッとしたスタイルのいいメガネ美人だが、元暗部で暗殺等を担当していたからメガネを取ると怖い目をしている。
フィリップが10歳から13歳まで専属メイドをしていて、ドSの性癖をフィリップに見破られてそんな関係になってしまった。もちろん前職のせいで疑り深いので、フィリップのことを鋭い目で見た。
「先ほど勉強は手を抜いていたとありましたが、カールスタード学院では3割ほどしか取れていなかったのも、手を抜いていたと?」
「うん。そうだよ。やろうと思えば簡単にトップを取れたよ」
「それを証明できる証拠はお持ちですか?」
「う~ん……帝都学院の問題用紙ならあるけど、証明はボエルの時でもいい?」
「わかりました」
順番を遵守するダグマー。次の証明が本命だから、些末な問題なのだろう。
「7歳からダンジョンに通っていたと言うことは、カールスタード学院の剣術授業であのような無様なことにならなかったはずです。逃げ回っていただけですよね?」
「普通に戦えないから、逃げ回ってたんだよ~。ダグマーを騙すの大変だったんだよ~?」
「私が騙された……」
「あ、そうそう。行きしに騎士に襲われたじゃん? アレ、僕は殺さず対応しようとしてたんだよ? それなのに殺すんだも~ん。アレにはビビッたな~」
「うっ……強さが事実なら、差し出がましいマネをしたことになりますね」
ダグマーは強さに関しては認めるほうに天秤が傾いたので、フィリップは追撃だ。
「カールスタード王国でクーデターあったでしょ? アレ、僕が首謀者だったの~」
「はあ!?」
「プププ。ダグマーのその顔は貴重だな~。ほら? 僕だけ冷静だったのは、そゆこと」
またしてもとんでもないネタ。ダグマーは当事者なので、首謀者が目の前にいるから睨み殺さんばかりに睨んでるよ。
「では、女王陛下とは城で会う前から面識があったと?」
「そそ。普通に会ったらダグマーにバレそうだから、アドリブ入れまくったら、あとからクリちゃんにも怒られちゃった」
「でしょうね。初対面でオッパイ揉ませろと言ったのですから……」
怒らないほうが無理なアドリブ。全員顔に「でしょうね」と書いてるよ。
「あとは~……ダンジョンを1人で制覇したって言っても信じられないよね~?」
「はい。あそこは帝都学院より倍あるのですから、1人では不可能です」
「じゃあ、アイツらは? えっと……ブンテレンジャーで合ってる??」
「小国連合の王子です」
「それそれ! そいつらがションベンチビッてた理由、アレもボック~」
フィリップは他国の王子の名前も出て来ないのでは、ダグマーもため息が出そうだ。
「陛下が何をしたのですか?」
「ドア壊しやがったから、バルコニーから落としてやったの」
「バルコニー……陛下の部屋は6階なんですが……」
「ちゃんと風魔法で助けてやったって。あ、そういえば後日、ダグマーがオバケ見たって言ってたのも僕だよ。本気で動く僕がよく見えたね~。アハハ」
「先に6階の件を処理させてください……10歳の子に何してるの!!」
ダグマー、ついに怒り爆発。そんな恐ろしいことを他国の王子にしておいてフィリップが笑っているから仕方がないよね~?




