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【完結】悪役令嬢と手を組みます! by引きこもり皇子  作者: ma-no
五章 引きこもり皇子、進軍する

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112 主要キャラの揃い踏み


 帝都の外では、フレドリク皇帝の辞任を求める声が大きくなり、その声を聞いた帝都の中でも同じ訴えが聞こえて来た。

 この辞任の声は自然発生に見えたけど、実はこれもフィリップの策略。ダンマーク辺境伯領から連れて来た民を散り散りに配置して、頃合いで叫ばせたから辞任の声があっと言う間に広がったのだ。


 その声を聞きつつ、フィリップとエステルは固く閉ざされた正門を見つつニヤニヤしながら近い距離でお喋りしていたら、ついに巨大な門が鈍い音を出した。


「思ったより早かったですわね」

「アハハ。そりゃ前も後ろも敵だらけだもん。炙り出し成功っと。アハハハ」

「殿下のその頭の良さ、少し気持ち悪いですわよ」

「気持ち悪いは酷くない? 知将と呼んでくれたまえ」

「ええ。フィリップ痴将……」

「それ、本当に褒めてる? なんか馬鹿にされてるように聞こえたんだけど~??」

「褒めてますわよ。オホホホホ~」


 漢字の「知」と「痴」が変わっていると肌で感じたフィリップ。エステルが笑うので完全に馬鹿にされていると察したフィリップは、2人でイチャイチャするのであった。



 そんなことをしていると正門が完全に開き、騎士の集団が駆け足で道の両端に立つ。その中央には白馬に乗ったフレドリク皇帝。隣には黒馬に乗って槍を持ったカイ・リンドホルム近衛騎士長。

 その2人がゆっくり前進すると、フィリップとエステルも舞台から下りてイチャイチャしながら正門に向かって歩く。その後方では、ホーコンたちが民衆の声を止めている。


 そうして数分後には、ついに皇族兄弟が相対したのであった……



「兄貴。久し振り~。なんか顔色悪いけど、大丈夫?」


 第一声は、フィリップから。体を気遣っているような言葉だけど、フレドリクにはそんな意味では聞こえていない。


「誰のせいだと思っているのだ……」

「半分は僕かな?」

「全部フィリップのせいだ!」

「まぁまぁ。そう熱くならないで。みんな見てるよ~?」

「くっ……」

「あと、首が痛いから馬から下りてよ。カイのその槍カッコイイね。あとで貸してくんない?」

「誰が貸すか!」

「カイ。挑発に乗るな」


 フィリップの後ろにはとんでもない数の目があるのでは、フレドリクもケンカ腰はやめ、カイを諭して2人とも馬から下りた。


「それよりフィリップは、こんなに人を集めていったい何がやりたいのだ?」

「僕はみんなの文句を代弁しに来ただけだよ? まさかこんなに不満がある人がいるとはビックリだよ~。アハハハ」

「……それで、私にどうしろと言うのだ?」

「まぁまぁ。そう急がずに座って話そうよ。あと、お姉ちゃんはどこ?」

「ルイーゼは危険が及ばない場所にいる」

「お姉ちゃんがいないと話にならないから連れて来て。じゃないと、みんな納得しないからね」


 この要求はフレドリクが突っぱねる。


「断る」

「え~! じゃあ、みんなで呼んでみよう。お姉ちゃんなら呼んだら飛んで来てくれるだろうね~……それも1人で。いま町中を1人で走るなんて命がいくつあっても足りないけど、そこがお姉ちゃんのいいところだね。みんな~!」

「ま、待て!」


 フィリップが後ろを振り返って叫ぶと、焦ったフレドリクは肩を掴んで止めた。


「連れて来る。少し待て」

「アハハ。早い決断で助かるよ。準備して待ってるね」

「汚い奴め……」

「カイ、行くぞ!」


 フィリップが笑うと、カイが絡んで行きそうになったがフレドリクに止められて、2人とも馬に乗って走り去るのであった。



 会談をする場所を設営したら派閥の者を後ろに控えさせ、皇帝抗議隊の民衆も100人ほど集めて並べ、綺麗にセットされたテーブル席にフィリップとエステルが座ってイチャイチャしていたら、白塗りの豪華な馬車が近付いて来た。

 その馬車が止まると、馬で先導していたカイが地上に降り、馬車からはヨーセフ・リンデグレーン宰相、モンス・サンドバリ神殿長、フレドリクが降りて、最後にルイーゼ皇后がフレドリクの手を借りて降りて来た。

 なので、フィリップとエステルは「皇后が先に下りるのが普通だよね~?」とか喋っていた。


「連れて来たぞ」


 フィリップとエステルは立ちもしないでテーブル席にいたので、フレドリクたちから近付いて声を掛けた。


「そこの3人はいらないんだけどな~?」

「それを言ったら、その後ろの民はなんだ?」

「証人だよ。僕がちゃんと文句を言ってるか、確認してもらうんだ。兄貴たちはみんなに聞かれたくないだろうけど我慢してね」

「聞かれて困ることなど何もない」

「カッチョイイ~。んじゃ、そっちの3人の席も用意してあげる。あと、騎士も同じ人数までなら近付けていいよ」

「……わかった」


 フレドリクが同意するとフィリップは右手を上げる。それだけで椅子が並ぶのだから、元々イケメン4が同席すると予想していたのだろう。

 そのことにフレドリクは気付きながらも、100人ほどの騎士を呼び寄せ、ルイーゼの椅子を引いて座らせたら、自分もイケメン4も席に着いた。


「アハハ。ついにイケメン4が揃ったね」

「イケメン4??」

「いや、こっちの話。気にしないで」


 するとフィリップが余計なことを口走ったので、この場に座る全員が首を傾げた。

 これは実は、乙女ゲームではイケメン4とはフレドリクを頂点として、フレドリクを彩る4人の男子の名称。カイ、ヨーセフ、モンスに加え、フィリップがイケメン4の正式なメンバーだったのだ。


 それを知っているのはフィリップだけだから笑っていたが、急に真面目な顔に変わった。


「さてと……役者は揃ったね。始めようか」


 こうしてフィリップが始めた戦いは、最終局面を迎えるのであった……


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