続編予告
セブンスカイズ2の執筆を予定しています!
セブンスカイズ2ではハーベストが主人公となります。
3つのシーンを抜粋して先行でお届けしていますので、予告編としてどうぞ!
※初期に考えていた構想となっているため、セブンスカイズ2の本編では少し修正が入る可能性はあります。
───ソルティと死蝶の確執
「あ? テメェのせいであいつらが戦死するハメになったんだろぉぉが!」
「ソルティさん、落ち着いて下さいよ。死蝶さんは落ち着いてないで何か反論して下さい!」
ソルティが殺意むき出しで死蝶に絡み、それを必死に宥めるも、手に余る。
早く仲裁可能な人に来て貰わないと一触即発状態だ。
腕を組んで沈黙を決め込んでいた死蝶は、ようやく口を開く。
「あの雑魚どもが死んだのは、単に技術が無かったからだろう? 人のせいにされても困るな」
「あ?」
死蝶は挑発なのか指を細かく動かし、かかってこいのジェスチャーをしながら目を細めている。
背後から羽交い絞めにして抑え込んでいるけれど、ソルティの怒気は止められそうにない。
全体重をかけているのに何度も足が宙に浮き、力を込めて振り落とされないだけで精一杯だ。
「お二人とも落ち着いて下さいよ!」
言葉で割っては見たものの、息が詰まる静けさが続き、心臓の鼓動だけがやけにうるさい。
死蝶はそっぽを向き、髪をかき上げつつ素知らぬ顔を決め込んでいる。
その様子がさらにソルティの怒りを買う。
明日は腕が筋肉痛かも知れないと思っていたときに不意に死蝶と目が合った。
「ライジングサンもこんな過去に取りつかれた亡霊に関わると腕が鈍るぞ? チームに移籍するのなら歓迎しよう」
こんな状況で勧誘をするのは、完全に火に油。
背中越しで見えないけれど、鬼の形相をしていると簡単に予測でき、背筋が凍っていく。
今、スキャンダルを起こせば何かしらの処分が下されるだろう。
明日の報道が「暴言王、ついに暴力沙汰!」になってしまうと本気で懸念し始めたところに待望の人が現れた。
「どうした、ソルティ、ハーベスト?」
声に安堵して思わず腕の力が抜け、振り落とされそうになった腕の角度を直す。
「ナックさん! もう! 僕、凄く待ちましたよ! ソルティさんを止めて下さい!」
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───新リーダーの就任
呼び出しを受け、リーダー室を訪れた。
男性の部屋は慣れないので凄く緊張しているし、汗臭くないか何度も確認を繰り返す。
逡巡の後、覚悟を決めてドアをノックした。
「ナックさん、来ました」
数拍遅れでドア越しに返る声。
「ハーベストか? 丁度良い、入れ」
ドキドキしながら憧れの人の部屋に入る。
予想はしていたけれど、物が少ない。整備用の模型が幾つか目立つくらいで、日用品の類はほとんど見当たらない。
「この香りは……キャメルさんから貰ったんですか?」
室内はキャメルが好みそうなルームフレグランスの香り。
テーブルに資料を広げていたナックが、顔をあげる。
「そうだ。良く眠れると言われ、ラベンダーの香りを貰った。それはそうとさっさと座れ。本題に入る」
促されるままにソファーに座る。
憧れの先輩の部屋ということで緊張しているのか手汗が凄くて、視線も泳いでしまう。
拭うべく何度か握り直したのち、汗がつかないように注意して資料を手に取る。
内容はチームの詳細情報と、リーダー変更の手続き書類だ。
「えっと、これは?」
呼び出しの理由も、この書類の意図も分からず率直な疑問が声に出た。
アイスブルーの瞳でじっと見つめられ、正直ドキッとする。
「来シーズンから、ハーベストにエクリプスのリーダーを任せたい。お前なら出来るはずだ。チームでサポートするからやってはくれないか?」
優しい口調で語り掛けられたが、内容が頭に入ってこない。
「え? どうして僕に? ナックさんがいるじゃないですか? それに皆さん僕よりキャリアが長いですから……」
首を振りながら資料をテーブルに戻し、ずいっと遠ざけるように押しやる。
すると、笑顔で資料を押し戻された。
「他の奴らの了解は得ている。だからこれはチームの総意だ。エクリプスの新リーダーはライジングサン以外にあり得ない」
「僕よりチーザさんの方が向いていますよ。どうして僕なんですか?」
向かい合ったナックは顎を手に乗せ、何やら思案顔をする。
いつも言葉数が少ない彼が、言葉を尽くして説得しようとする際に時折見せる仕草だ。
「エクリプスは常に見上げる存在。そこにはライジングサンであるお前が必要だ」
真意を問おうとする前に、彼は居住まいを正して真剣な表情で続ける。
「知っているか? エクリプスが空に見えるとき、必ず太陽は空にあるんだぞ。だから、らしく在るには昇る太陽が必要と言える」
「屁理屈ですよ! だいたいナックさんはどうするんですか?」
バツが悪そうに資料へ視線を落とし、渋い表情をするナック。
「俺はサポートエンジニアになろうかと思う」
その答えを聞き、胸の中で腑に落ちる部分があった。
ナックへ少し顔を寄せ、その左目を見つめたまま、ずっと思っていたことを口にした。
「左目の視力低下が原因ですか?」
咄嗟にこちらへ丸くした目を向けた後、暫く言葉を探していたナックだが、観念したのか再びゆっくりと視線が下がり始める。
「驚いたな。いつ気付いた? ソルティですら気付いていないぞ?」
……それは貴方が僕の憧れだから。毎日、見続けていたから。
リフレッシュルームで左端の席に座るようになったこと。
会話相手を常に右側に置こうとしたり、右半身を前に出すことが増えた仕草の変化も。
以前は取り除いたピクルスを遠い場所に置いたのに、今は左側に置くことも。
全部の違和感が今、繋がったから。
「じゃあ、僕の方がソルティさんより上ってことですかね?」
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───元エクリプスメンバー
「君が噂のライジングサンか。ナックさんやソルティさんが教え込んだだけはあるな」
「えっと、お二人のお知り合いですか?」
急いで振り返ってみると、驚愕の表情をしたメンバーの顔が並んでいた。
「おいおい、嘘だろ? フィナン! お前、生きてたんか!」
「フィナン、今までどうしていたのだ? どうやって政府の手から逃れた?」
「生きてたんすね……本当に良かった。娘も大きくなったんですよ。是非、会ってやってくだせぇ」
ソルティ、ナック、ウェハーのベテラン組が相好を崩す。
三人の瞳には光るものが見えた。
会話の流れ的に元エクリプスメンバーの強化兵士かも知れない。
「もしかして、元メンバーの方ですか?」
双方の顔色を伺うため、キョロキョロと挙動不審気味な感じになってしまう。
「あぁ、フィナンはな……」
「ナックさん。今はマドレーと名前を変えています。戸籍もそっちになっているんですよ。全部、アイビスが用意してくれて」
今はマドレーと名乗っているらしく、経緯を言い終える前にソルティが満面の笑顔で肩を組んだ。
「いや、そんなこたぁどーでもいいんだよ! とにかく生きてたんならいいんだ! 俺は嬉しいぜ!」
面識のない古参メンバーの登場に、何かがチクリと胸を刺す。
ナックが優し気に話している様子を見て、知らずに握りしめた拳。爪が掌に強く刺さり、痛みで顔が歪む。
あんな穏やかな笑顔を見せてくれたことは無い。
距離は近づいたと思ったのに、本当はこんなにも離れていたのかと痛感させられた。
「どうした? ハーベスト。フィナンは凄腕のチェイサーでな、ウェハーと共にエクリプスの両翼を……」
そう言葉を掛けられた瞬間、僕の中で何かが弾けた。
体中が沸騰したかの如く熱くなり、我慢しきれずに大声でナックの言葉を遮る。
「エクリプスの両翼はウェハーさんとチーザさんです! 他の人に入る余地なんかありませんから!」
言い終えて我に返ると、言葉を失っている皆の視線が痛い。誰からも責められないことで、僕だけが場違いな感覚を受けてしまう。
その雰囲気に耐え切れず、僕はその場から逃げるように走り去った。
如何でしたでしょうか。
セブンスカイズ2までの間に2作品挟むので、最短でも2026年となる予定ですが、精一杯描きますので応援して頂けたら嬉しいです。
お届けする際には更なるブラッシュアップが行われていると思いますので、ご期待ください!




