表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽霊トラブル世界のアイ  作者: わたぬまかなた


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/1

1話 空耳

 異世界に転生したけれど、前世とそこまで変わらない世界だった。明確に違うのは、オカルト現象の存在が証明されていることくらいか。


「でも、私は幽霊とかに会ったことがないんだよね。ホラー要素が足りないから、ゲームで補っているくらいだ」


 ホラーゲームは好きだ。温かいお布団の中で、背筋の凍るような怖いホラーゲームアプリをプレイすることが一番楽しい。


 ゲームなんかする暇があるなら、婚活とかをもっと頑張った方がいいのかもしれない。でも、正直しんどい。


「女性は若くないと結婚しにくいと言われるけれど。人生まったりゲームして、そのまま独身で亡くなるのも悪くない」


 そもそも、自分が夫や子どもを愛せるとは思えない。そんな私が育児をしたところで、いい結果になるはずもない。


 不幸な家庭を増やすくらいなら、最初から結婚しない方がいい。自分はそう思ってしまう。


「付き合ったら好きになるとか、結婚したら慣れるとか、子どもが生まれたら愛情が湧くとか、そういう人も多いのだろうけれど」


 きっと、自分は違う気がした。だから、今日もお布団の中でホラーゲームをプレイしている。


 最後は孤独死だろうし、それは少し怖いけれど。怖いゲームをプレイすれば、恐怖が和らぐから好きだ。


「まあでも、子どもを産み育てることは義務であり、人間の一番の目的である、と主張する人も多いからね。そういう人達からすれば、私は悪女なのだろう。一応、私は働いて税金も納めているし、社会貢献をしているつもりだ。でも、女は仕事をするだけじゃ足りないと言われるし。独身女には、老後の年金なんか渡す必要ないとまで言われる。なんて生きづらい異世界なんだろうね」


 でも、私は決して結婚しないだろう。だって、他人が怖くて仕方がない。というか、誰も信じられない。


「愛とかいう言葉があるけれど、愛の中身ってなんだろうね。性欲、依存、執着、支配欲、承認欲求、色々あるよね。共存や自己投影や保護欲辺りの愛が、まだマシなのかな。でも、優しく見える愛も、暴言や暴力を引き起こすことは多いからね。親だろうが異性だろうが同性だろうが、殴ったり蹴ったり、刃物を投げてくることはあるでしょう。正直言って怖いよ。私は殺されたくない」


 結局のところ、私は愛というものを信用できていない。あんなものを信じる方がおかしいとすら思ってしまう。


 いや、それでも愛を掲げて、結婚子作り出産育児仕事介護などを全部両立させて一生懸命頑張るべきなんだろう。分かっている。


 でも、私は愛を目的に努力できない。つまり、私は出来損ないの女性だと、世間一般からは評価されるだろう。


 まあ、自分の名前はアイだけれど。皮肉だね。


「この世界の愛は、とても信じられている概念の一つだ。もはや、信仰対象と言っても差し支えない」


 愛とお金を比較して、愛を選択する人がとても多いくらいだ。もちろん、お金だけあっても幸せになれるとは限らない。でも、愛だけではまず食べていけない。


「よく分からない世界だよね」


 独り言を言いまくっていたら、集中力が切れた。ホラーゲーム内で、プレイヤーキャラが死亡してしまう。


「この鬼ごっこ系ホラーゲーム難しいよ」


 ゲームに他責しつつ、落ち着こうとした。まあ実際、難易度が意外と高いゲームだとは思っているのだけれど。


 ふと、ゲーム以外の音が聞こえた気もした。誰かの声みたいだった。


「もしかして、本物のオカルト現象かな」


 ワクワクしつつ、辺りを見回してみる。けれど、幽霊らしき姿は見当たらない。


「空耳だったのかも」


 ガッカリしつつ、ホラーゲームプレイに戻る。リアル幽霊に会いたかったな。でも、幽霊って結構やばい存在なんだっけ。じゃあ、関わらなくて正解だね。


 そのあとも、ホラーゲーム中に空耳が何度か聞こえてきた。無駄にかっこいい声だったので、少し呆れてしまった。クオリティが高すぎる声で、むしろ耳障りだ。邪魔とも言える。


「か弱い女性姿と、怖い幽霊体というギャップがいいのであって。強そうな男性が幽霊になっても、ギャップは生まれにくい気もするんだけど。いや、自分の偏見かな。どうなんだろう」


 モヤモヤしている自分の耳元に、無駄にイケメンな声がまた聞こえてくる。男性にささやかれたい願望なんて、自分にはなかったはずだけれど。


 女性である自分は、イケメンが好きなはずだと思っていた。イケメン嫌いなんて照れ隠しの感情だろうと、そう信じていた時期もあった。


 でも、イケメンがたくさん出てくるソーシャルゲームを、自分はすぐさま辞めてしまう。それに、イケメンアイドルも魅力的に見えない。そんな自分は、男性自体に興味がないのだと思う。


「だからと言って、自分は女性のことが恋愛的に好きなわけでもない。意味不明だよね」


 悩む自分の耳には、男性の声がずっと聞こえてきていた。この声、いつまで続くんだろう。


「もしかして、これは空耳じゃないのかな。でも、幽霊でもなさそうだし。どこかの家で、男性ボイス集でも流している可能性はある。そういえば、お風呂場でボイス音源を流すといい感じに響くけれど、他の家に聞こえやすくなるとかいう雑学を聞いたような。聞かなかったような」


 まあいいか。とりあえず、目の前のホラーゲームをクリアしたい。謎のイケメンボイスなんて後回しだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ