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37話:現在までの整理

「おはよ〜煌星!」

「友梨さん、おはようございます」

「友梨で良いって言ったでしょ?」


 か、彼女かよ⋯⋯。恥ずかしい。


「ゆ、友梨おはよう」

「おはよう」


 ⋯⋯勘弁してくれ。


 あれから三週間が過ぎた頃。

 俺の想像とは違って、かなり世間への浸透力が凄まじく、SNSでも俺の顔が完全に割れてしまった。

 すぐにギルドなんかの圧力で消されてはいるが、ネットに上げられては⋯⋯もう防げないだろう。


 この間はたまたま外に出ることが叶ったが、もう無理だ。


「煌星、今日はどうする? 」

「今日は⋯⋯一緒にファミパーティーでもやる?」


 最近友梨さんはファミリーゲームにハマっている。

 ファミパーティーは100種類以上のミニゲームが入っている、少し前に流行ったファミリーものだ。


「うん! あれ面白いんだよー!」

「オイゲン呼ぶ?」

「オイゲン下手なんだもん」

「あっはははは!!」


 かつてゲーマーの中でもガチ勢として恐れられたあのオイゲンがまさか──下手なんて言われる日が来るなんてな。


「あーおっかしい」

「オイゲン下手くそじゃない?」

「まぁアイツはファミリー系のゲームは慣れてないからね。逆に言うとGROの腕は⋯⋯トンデモ野郎だよ」


 着替えた友梨さんが玄関へと向かう。

 最近のルーティンは昼前くらいになったら、買い出しへと出かける。


 なんせウチの近所にあるスーパーに新鮮な野菜なんかの個人店が並ぶらしいんだけど、そこの品質がとてもいいんだと。

 折角お金があるんだったら、良い野菜は口にした方が良いって友梨さんの言葉を受けて買ってもらっている。


「いってらっしゃい」

「行ってきます」


 バタン。

 友梨さんは徒歩で行く為、一時間近く掛かる。

 その他にも通常の買い物もしにいってくれるからだ。


「さてっと」


 そして俺はその間、友梨さんに隠れて⋯⋯黄金くんやその他の確認や新しい何かがないかを確認する時間となっている。


「とりあえずあの時から何も変わっていないんだけど⋯⋯」


 ひとまず俺のステータスはこんな感じだ。


────

黄河煌星(22)

レベル5

職業:ランサー

スキル

《極真空手Lv7》

《障壁Lv1》

《気配察知Lv2》

《槍術Lv2》

《痩せ我慢》

――ジ********************ド。

《黄金Lv5》(詳細はタップしてください)

黄金Lv5

Lv1《黄金生成》

Lv2生成量アップ

Lv3生成量アップ

Lv4生成量アップ

Lv5《黄金操作》

《黄金操作》熟練度41%

└生成した金を操作する事ができる。

・熟練度の差によって操作出来る事が変わる。

─熟練度一覧─

〈形状操作(可塑性)〉5.6%→29%

〈硬度操作〉10.6%→21.5%

〈堅牢操作(剛性)〉16.4%→39%

〈強度操作〉30.1%→50%

〈延性操作〉6.2%→27.2%

───


 レベルが上がることはあれからもなかったが、突然こっちの方は異様に上がったのだ。

 

「レベルが上がらないことは全く意味はわかんないけど、とにかく色々付与されることは分かったぞ」 


 調べるのはだるいから感覚で説明する。

 現在はナイフを様々なやり方で生成している。


 例えば物凄く細い針のような形状で生成したり、硬いイメージをして生成したりと、できる様々なイメージを入れてみている。


「んー、レベルを上げたほうがいいのかなやっぱり」

 

 黄金くんのスキルはトンデモスキルを開放してくれる。

 目立ちたくないのは勿論のことだが、しかしやっぱりカネはいくらでも必要なのだ。


 それに、生成量に関しても、やっぱりレベルを上げろと言わんばかりに項目として書いてあるし。


「とは言っても、やっぱり現状外に出られないことを考えると⋯⋯まぁ適切ではないわな」


 ⋯⋯どうするか。


「あっ、そうだ」


 「ウインドウ」と言ってみる。

 あのヘンテコダンジョンのあとから特に何も表示されなくて、結局あれは何だったのかと気にはなっていたんだけども。


「出てこない⋯⋯か」


 ブゥン。

 ⋯⋯ん?


「出たわ」


 遅れての反応だったから少し仰け反った。

 それで?


「こんにちは⋯⋯って、やかましいわ!」


[ようこそ、タワーストアへ]


「タワーストア?」


 あの意味の分からない適合とやらの話か?

 

「タワーストアってなんじゃそれ」


 目の前には【販売】と【売却】、そして左下にはご親切にチュートリアルガイドと書かれた、まるでゲームを起動して最初の画面のような感じで表示されている。


「とりあえずチュートリアルガイドとやらから」


 ポチッ。

 押すとウインドウはゲームの最初のムービーのように様々な事が羅列されていく。


 【塔に選ばれたあなたへ】


「選ばれたというか、適合とやらがあっただけなんですが⋯⋯」


 つらつらと文字が並べられていく。


 要約するとこうだ。


 ・このウインドウは『塔』と呼ばれる謎の場所で使うものであり、このストアを使えるということはその『塔』に選ばれた"""生物"""であるということ


 ・このタワーストアでは様々なものが売られており、それを買うにはGCコインという入手不明なコインが必要ということ


 正直、ほとんど何を言ってるのかがあまり理解できなかった。例えば。


 『現在あなたは1階にいると思いますが』

 ⋯⋯1階?

 確かにアパートの1階には住んでいるけれども。


 『これから様々な試練が与えられます』

 ⋯⋯は?試練?なんの話だい?


 『必要物資を購入した方が、今後の為にもなります』

 言ってることはわかるけど、必要物資って何が必要なのかの説明がない。


 ⋯⋯こんな感じで、永遠意味のわからない文章がつらつらと書かれてあって、まるで意味が分からなかった。


「親切なんだが不親切なんだか」


 【GCコインについて】


 本当にすみませんでした。私の早とちりだったようです。どうかお許しを。


「えーなになに?」


 GCコインの入手方法は、主に試練での功績や、様々な行いで貰える量が増えていきます。

 また、譲渡や売買でコインを使用するケースも許されています。


 ⋯⋯塔はいつでも公平かつ平等な取り引きを行っています。


「どういうこっちゃ?」


 全く理解できん。

 試練による功績ポイント?今までなんもそんなウインドウが出た事なんてないんだが?


【ハイランカーのみサブアカウント(・・・・・・・)でのログインが可能ですが、それでよろしいですか?】


 ハイランカー?

 なんの話やねんさっきから。


「まぁ⋯⋯はい」


 ポチッ。


 【ハイランカー※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※様のサブアカウントでログインします】


 何この伏せ字の量。エグない?

 というか、俺、ハイランカーとかいう部類の人間なん?

 不明な事が多すぎてチンプンカンプンなんだけど。

 ⋯⋯わけわからん。

 

 【サブアカウントのお名前を設定してください】


 まぁ、ジュリウスでいいっか?

 いや、やっぱり止めておこう。

 もう少し適当にした方がいいかも。


 【煌めく星でよろしいですか?】


 恥ずかしいが勝つが、ギリギリ微妙な感じだから特定しづらいだろう。


 【アカウント登録が終わりました!是非タワーストアを活用して、100階の王座に向かって頑張ってください】


 やべぇ、ほとんど何を言ってるのかが理解できん。

 まぁ、とりあえず────


「煌星ただいまー!」

「⋯⋯っ!」


 まずっ!! ウインドウ消えねぇ!!


「どうしたの? 煌星?」

「⋯⋯え?」


 あれ? ウインドウは今でも表示されているのに、友梨さんには見えていないのか?


「友梨、何も見えないの?」

「んふっ、何が? それより、お昼ご飯何食べる?」

 

 どうやら、普通の人にはこの画面は見えないらしい。




 

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