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オレだけクォータービューで戦場を支配する~あらゆるユニットを召喚して異世界を救うキャンペーンのクリアを目指します~  作者: こげ丸


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第49話 姉妹

 一瞬の暗転後、オレは時精霊の隠れ家の上品な部屋の中から、ジメジメした地下牢の中へと転移した。


 映像では伝わってこなかったツンとしたかび臭いにおいが鼻につき、こんな場所に攫ってきた人を閉じ込め、最後には生贄にするビアゾの奴らに怒りを覚える。


 そんな部屋の中央、そこにはリナシーの妹、たしかミュールとソーシャと言ったか、二人が意識を失って倒れていた。


「可哀そうに……しかし、どうするかな。このまま運べたら良かったんだが」


 他の人に対してユニット交換を行うには、その人物の了承を得る必要があるので起こさなければいけない。


 だがその前に……こちらにもユニットを何体か配置しておこう。

 宿に戻ったあとに何かあった場合に、こちらにユニットを送り込めるようにするためのマーカー目的だ。


【ユニット召喚:ピクシーバード】


 一枠で五羽召喚出来る上に姿を消す事ができるピクシーバードは、こういう時にも非常に使い勝手がいい。


 呼び出したあと、透明化させて待機させておく。


「ん~ざっと見たところ怪我などは負っていないようだが、念のために回復もしておくか」


 倒れている二人は少し衣服は汚れているが、特に怪我らしいものは見当たらない。

 リナシーをそのまま幼くしたような綺麗な顔も少し土がついているだけだ。


 だが、連れ去られるときに打撲や擦り傷はどこかで負っているかもしれないし、念のために回復しておこう。


 今回は回復薬ではなくユニットの回復能力を使おう。

 いきなり知らない奴がこれを飲めと言って回復薬を渡しても、なかなか飲んで貰えないかもしれないからな。


【ユニット召喚:パピヨンエレメント】


 ピクシーバードを呼び出す際に現れるものと似た、ちいさな積層魔法陣が出現するとひらひらと三匹の蝶があらわれた。


 パピヨンエレメントは蝶の姿をした精霊で、この鱗粉に触れると徐々にHPが回復する効果がある。

 オレはすぐにジェスチャー操作で三匹を倒れている二人のもとへと向かわせた。


 すると……鱗粉が触れると二人の身体が薄く淡く発光し、すぐにその効果が現れたようだ。


「んん……ここは……」


「ふぁ~……あれ? ここどこ?」


 どうやって連れ去られたのかわからないが、まだ目覚めたばかりで意識がはっきりしないのだろう。

 なんだかのんびりした雰囲気で、ミュールとソーシャは同時に大きく伸びをした。


「ミュール、ソーシャ大丈夫か? 痛いところなどはないか?」


「うん、だいじょぶー……ん?」


「なんかぽわぽわして気持ちいい~……ん?」


 オレもパピヨンエレメントでの回復は試してみたが、日光浴をしてるような暖かさを感じるんだよな。


 しかし、気持ちよさそうな表情から一変。

 遅れてオレを認識すると驚きの声をあげた。


「「だだだだだだだだだだだ、だれ!?」」


 急に話しかけたから驚いて焦るのはわかるが、それにしても「だ」が多い……。


「危害を加えたりしないから落ち着いてくれ。オレは君たちのお姉さん、リナシーに頼まれて助けにきた冒険者だ」


「「え? リナシーお姉ちゃんに!?」」


 双子という訳ではないようだが、シンクロするように言葉を発しており、姉妹なのだなとあらためて思う。


「あぁ。ミュールとソーシャは今自分が置かれている状況は理解しているか?」


「え……うん。街で変な奴らに捕まって……」


「でも、そこから記憶がないの」


 攫われてからずっと意識がなかったのか。


 なにか魔法か薬品などを使われたのだろう。

 しかし捕まっている間中、ずっと怖くて怯えているよりはまだマシだったかもしれないな。


「そうか。意識がなかったのか。二人はそいつらに捕まってこの牢屋に閉じ込められていたんだが、オレが助けに来たからもう大丈夫だ」


「あ、そう言えばここ牢屋だ!?」


「本当だ!?」


 二人は今になってようやくここが牢屋だと気付いたようだ。

 本来なら救出中だし大きな声をあげられると困るのだが、もう儀式の間にいるビアゾの奴らはほぼ制圧し終わっているし、別にかまわないか。


「あぁ、それでな。今から君たちのリナシー(お姉さん)が待つ場所へ特殊な魔法で飛ばしたいんだが、了承してくれるか。君たちを助け出すためには了承が必要なんだ」


「え? うん」


「いいけど……?」


 どういうことかイマイチ理解できていないようで、二人はコトンと首をかしげている。


 だが、了承を得る事ができた。

 とりあえずこれでユニット交換の対象にできるはずだ。


「でも、魔法って?」


「あぁ、転移魔法のようなものなんだがわかるか?」


「テイ魔法? わかんない……」


「一瞬で離れた場所にいるリナシー(お姉ちゃん)の元に移動できる魔法なんだ。瞬きする間に終わるから、ちょっとの間だけじっとしていて貰えるかな? オレもすぐに後を追うから」


「うん……よくわかんないけど、じっとしていればいいんだね」


「座ってていいの? 立った方がいい?」


 二人ともさっきまで意識を失って倒れていたので、まだ座ったままだ。

 急に立ってふらついても困るし、そのままでいいだろう。


「いや、そのまま座ってて大丈夫だ。じゃぁ、一瞬でリナシーのいる部屋に移動するから驚かないようにな」


「うん~わかった」


「うん。驚かない」


 冒険者ギルドで働いているリナシーならともかく、やっぱりこの世界の普通の子に転移について話しても理解してもらうのは難しいようだ。


 でも、わからないなりに、素直に了承してくれて助かった。


「それでは行くよ。まずはミュールから」


【コマンド:ユニット交換】


「うわっ!? ミュールが消えちゃった!?」


「あぁ、ミュールはもうリナシーのところにいるよ。ほら」


 オレは安心させるために宿に残してきたピクシーバードのユニットビューを可視化してソーシャに見せてやった。


「すごい!? なにこれ!? 鏡みたい!?」


「あぁ、これも魔法なんだ。でも、ほら、リナシーとミュールが抱き合っているのが見えるだろ?」


「うん! お姉ちゃんだ!!」


 急に消えて怯えて拒否されたら飛ばせなくなるかもしれないからな。

 でも、これで安心してくれたはずだ。


「じゃぁ、次はソーシャの番だ。いくよ」


「う、うん!!」


【コマンド:ユニット交換】


 オレは出しっぱなしだったユニットビューにソーシャが現れたのを見て、これで無事に二人を救出できたとホッと胸を撫でおろした。


 毒を撒かれたりなどしないかと不安だったが、儀式の間の方もビアゾの奴らの制圧は終わったようだ。


「あとは眷属……いや、プレイヤーだけだが、ここはいったんオレも宿に戻っておくか」


 最悪、オレが直接プレイヤーと会って話そうと思っているが、リナシーには北の大森林の魔物の大群のことを冒険者ギルドに報告して貰わなければならない。


【コマンド:ユニット交換】


 オレはプレイヤーのことが気になりながらも、まずは宿へと戻ることにした。


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