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オレだけクォータービューで戦場を支配する~あらゆるユニットを召喚して異世界を救うキャンペーンのクリアを目指します~  作者: こげ丸


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第44話 優先

 牢屋に横たわる女性は、二人とも身なりの良い恰好をしていた。

 ただ、貴族の平服ほどではないので平民だとは思う。


 歳は若く、二人ともまだ一〇代前半だろうか。

 しかし、その二人の耳は特徴的な形をしていた。


「エルフか……」


 そうだ……たしかゲームでも生贄には子供が良いとされていた。

 中でもエルフや貴族の子供が一番良いと……。


 まったくもって反吐がでる。


「くそっ! ゲームじゃないんだぞ……」


 儀式の場に横たわっていたミイラ化した遺体を思い出し、なんだかやるせない気持ちになってしまった。


「あっ!? 主さま! 儀式がほんとにもう終わりそうです!」


「わ、わかった!」


 ちっ!? もうあまり時間がないぞ!

 どうやって助ける?


 助けるだけなら難しくはないと思うが……。


 こんな奴らを野放しにすることはできない。

 だから全員確実に捕えたいところだが、今送り込んでいるユニットの数ではすべての通路を押さえられない。


 救出はあとにするか……?


 いや、しかし……このまま放っておいて、もし追い詰めたことで毒でも撒かれてしまうと助けられなくなる。

 魔神信仰ビアゾ(奴ら)は自らは贄にならない癖に、自分の命は簡単に投げ出すからな。


 やはり救出を優先するか……どうする……。


「主さま。誰か部屋に向かってきます」


「え? もう人が!? 儀式が終わったのか!?」


 さっきまで儀式は続いていたし、牢屋はかなり奥まったところにある。

 だから、まだ数分は時間的猶予があると思っていたのに!


 と焦ったのだが……。


「いいえ、違います。時精霊の隠れ家(ここ)の部屋にです」


「あ、こっちか……」


 オレたちは指名依頼を遂行中だが、実際にいるのはこの時精霊の隠れ家の快適な部屋の中だからな。


 あせっていたのもあるが、せっかくこの世界にきて気配を感じ取れるようになったというのに、こんなことではダメだな……。


 しかし、今こうして落ち着いて気配を探ればオレも感じ取ることができた。


「だけど誰だ? ずいぶん慌てているようだし、なんか……揉めてないか?」


 どうも宿の者に止められているような気配がする。

 この忙しいタイミングでの訪問な上に、揉め事とか勘弁して欲しい。


 しかし、訪ねて来たのは少し意外な人物だった。


「主さま。この気配はリナシーさんです」


「え? リナシーが?」


 しかし、キューレはすごいな。

 気配で誰かまでわかるのか。


 そんな風に感心していると、扉がドンドンと強く叩かれた。


「レスカ様! いらっしゃいませんか! どうか、どうかここを開けて下さい……」


 なんだ……? 様子がおかしいぞ?


「どうか……助けて……」


 え? 泣いているのか!?


 オレはリナシーのただ事ではない気配に、慌ててドアへと向かう。

 下手をすると奴らを取り逃がすことになるかもしれないが……いや、迷う必要などないな。


 その時はまたすぐに見つけ出せばいいだけの話だ!


 今は牢屋で倒れている二人の少女の命と、この世界で世話になっているリナシーを優先させるべきだ。


「どうした⁉ リナシー! なにがあった!?」


「あっ!? こら! 待ちなさい!」


 扉を開けると、リナシーは宿の者の間を抜けてオレの胸に飛び込んできた。


「レスカ様! ど、どうか助けて下さい! も、もう、頼れるのがレスカ様しか……」


 オレの胸の中で縋るように泣きながら訴えかけてくるリナシー。

 いったいなにが……。


 宿の者に問題ないから任せてくれと伝え、リナシーを部屋に通す。


「まずはこれでも飲め」


 オレはアイテムボックスから例の美味しい回復薬を一つ取り出すと、リナシーに渡して飲ませた。


「あ、ありがとうございます……お、お見苦しい所を見せてしまい申し訳ありません……」


 リナシーが回復薬を飲んでいる間にも魔神信仰ビアゾの拠点は注意深く確認しているが、今のところはまだ動きはなさそうだ。


 しかし、そこまで余裕はない。

 本当はもっと落ち着かせてからゆっくりと話を聞いてやりたいところだが、そういうわけにもいかない状況だ。


「いや、そんなことはどうでもいい。オレは気にしていない。それより、何があった?」


 オレが単刀直入に尋ねると、リナシーは涙をぬぐって力強く答えた。


「実は……私の妹たちが攫われてしまったのです!!」


「なっ!? そうなのか……それは狙われたのか?」


「おそらく……。襲撃された時、店の者も一緒にいたのですが、なんとか一命をとりとめたその者が先ほど目を覚まし、あきらかに妹たちを攫うのが目的み見えたと教えてくれました……」


 リナシーはエルフなのもあってかなりの美形だ。

 きっと妹たちも……。


 ん? いや……ちょっと待てよ……。


「リナシー。オレが今指名依頼を受けているのは知っているな?」


「はい。もちろんです。担当ですから」


「その依頼を今遂行中なのだが……ちょっと今から見せるものは他言無用にして欲しい。約束できるか?」


「え!? なにか妹たちがあの依頼に関わっているかもしれないのですか!?」


「あぁ、だから確認して欲しいのだが、今から見せるオレの能力は今はまだガンズにも秘密にしておいて欲しい」


「わかりました! 絶対に誰にも言いません!」


 オレは了承したのを確認すると、すぐにウォーモードで展開中だったウインドーすべてを……リナシーにも見えるように可視化したのだった。


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