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オレだけクォータービューで戦場を支配する~あらゆるユニットを召喚して異世界を救うキャンペーンのクリアを目指します~  作者: こげ丸


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第42話 プリセット

 まずは魔神信仰ビアゾの潜伏先を突き止める必要がある。


 本来ならこれが一番時間がかかると思うのだが、奴らの潜伏先の候補地をすでに絞り込んで貰えていたし、オレの諜報系のユニットを総動員すればなんとかなるのではないだろうか。


 しかも、この『時精霊の隠れ家』の部屋の中からすぐに実行にうつすことができる。


 そうして拠点さえ見つけてしまえば、あとは倒すだけだ。


 本来ならなにか企んでいないかなどの諜報活動にも時間をかける必要があるのかもしれないが、今回は倒す事を優先して欲しいという話を聞いている。


 倒すだけならば、多数のユニットで囲んで一網打尽にすれば呆気なく終わるだろう。


 では何も懸念がないのかと言えばそうでもない。


 あいつらは狂信者だ。

 常軌を逸した儀式などを執り行うことがある。


 贄にするために人を攫っていれば迂闊なことはできなくなるし、過去のキャンペーンではスタンピードを人為的に起こしたりもしている。

 倒す事を優先してとは言われているが、ある程度の調査は必要だろう。


 だから拠点を発見しても、仕掛けるタイミングはしっかりと状況を見て判断しなければいけない。


「お。到着したようだな」


「はい。まずは一つ目の拠点と思われる場所ですね」


 オレは王城を出てすぐ、王都周辺に展開させていたピクシーバード二〇羽すべてを呼び戻し、魔神信仰ビアゾ(奴ら)の拠点があるのではないかと思われるエリアに向かわせていた。


 王都外にも拠点と思しき場所があるのだが、まずは王都の中から潰していく。

 ユニットの召喚枠にはまだ少し余裕はあるが、相手が相手なので慎重にいくつもりだ。


「しかし……まるでスラム街みたいだな……」


 現場に到着したピクシーバードのユニットビューに切り替えて映像を眺めてみたのだが、その雰囲気はスラム街のように見えた。


 昔のベルジール王国と比べれば、かなり発展しているように見えた王都だったが、それでもこういう場所は存在するようだ。


 リアルとなった今は、ただスラムが存在するということだけでも、いろいろ考えてしまう。


「主さま?」


「いや、なんでもない。それより、ピクシーバードたちを透明化して超低空から詳しく調査させる。何羽か受け持ってみるか?」


 この世界に来てキューレは、オレと同じようにユニットに指示を出せるようになっていた。

 オレとまったく同じことができるわけではなく制限も多いが、最近は訓練もかねていくつかのユニットを任せるようにしていた。


「はい! まかせてください!」


 キューレもなにかを任されるのが嬉しいらしく、かなりやる気を出している。

 そのことがなんだか嬉しくて笑みがこぼれた。


「主さま?」


「あ、いや。なんでもない。それじゃぁキューレも準備ができたようだし始めるとするか」


「はい! 私の方でも五羽受け持ちます!」


「おぉ~五羽もか。まかせるが無理そうなら指揮権を返上してくれ」


 オレは全体で二〇羽のピクシーバードを展開していたが、そのうち五羽の指揮権をキューレに委任した。


 最近練習させ始めたばかりなのだが、もう一般ユーザーの限界と言われている五羽の同時操作ができるのだからたいしたものだ。


 さて……これで準備は整った。


「さぁ、遊戯の時間といこうか」


 言葉とともに行ったジェスチャー操作でウォーモードに切り替える。

 次々と周囲に展開される無数のウインドウに気分が高揚していくのを感じる。


 だが、今回はこのウインドウ配置では少しばかりやりにくい。

 この手の作戦を実行する時は……。


「諜報用プリセットだな」


 オレはふたたびジャスチャー操作を行い、諜報用に調整した画面配置とビュー設定に切り替えた。


 すると、クオータービューが大きく中央に表示され、それを囲むように無数のユニットビューが並べられた配置に切り替わった。


 他にもこの諜報用プリセットでは、人の声をキャッチすると該当するユニットビューのふちが緑に光るように設定してあったり、音声フィルターを用いて人の声以外を大きく減衰させ、話を聞きとりやすくなるように調整してある。


 このような細かい設定をすることによって、複数のユニットから同時に声が聞こえてきても、混乱せずに対応することが可能になるのだ。


 本格的な指揮戦闘を行う場合、その場面によって使いやすいように画面配置やビューの設定をあらかじめ登録しておくことで、円滑に作戦を遂行していくいことが可能となる。


 オレの場合はめったに使わないものも含めると三〇個ほどの配置を登録してあり、状況によって切り替えながら使っていた。


「よし、全ピクシーバードの透明化を行い、すぐさま低空偵察に切り替え! このエリア一体の建物の中から、まずは怪しい場所を見つけ出すぞ」


「はい!」


 コマンド操作を実行し、上空を旋回待機させていたピクシーバードたちを透明化して調査エリアへと降下させる。


 キューレも問題なくついてきているようだな。


「続いて一定間隔を維持したまま、風魔法の『サウンドコレクター』を使用する!」


「はい! 『サウンドコレクター』を実行します!」


 ピクシーバードは戦技扱いの透明化の能力以外に、風属性の便利な魔法をいくつか使用できる。

 この『サウンドコレクター』もその中のひとつだ。


 音の振動を解析して聞き取りやすいように増幅してくれる魔法で、使用した瞬間、より広範囲のピクシーバードの周囲の音が鮮明化する。


 だが、これをこのまま二〇羽で行えばとてもじゃないがうるさくて聞き取れなくなってしまう。


 そこでこの諜報用プリセットだ。


 このプリセットでは、上で述べたように声以外の音を減衰させ、声だけが聞き取りやすくなるように設定してあるので、サウンドコレクターの魔法との相乗効果でより的確に音による情報収集がしやすくなる。


「うん。キューレが五羽受け持ってくれたし、一五羽だとまだ余裕があるな」


 複数のユニットビューの縁が緑色に点灯し、さまざまな話声が聞こえてくる。

 このモードでの諜報活動はこの世界に来て初めて使ったが問題ないようだな。


「主さま……普通、一五羽の声をすべて聞き分けるとか人間技じゃないと思うのですが……」


「え? そうなのか?」


「ふふふ。でも、お変わりないようで嬉しいです」


 キューレになにか少し呆れられているような気もするが、今は操作と声に集中するか。

 まずは拠点を特定しないと話にならないしな。


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