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オレだけクォータービューで戦場を支配する~あらゆるユニットを召喚して異世界を救うキャンペーンのクリアを目指します~  作者: こげ丸


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第26話 レベルキャップ

 冒険者ギルドで三つの依頼を受けたオレとキューレは、そのあとすぐに王都を出て北の大森林へと向かった。


 今回も移動はナイトメアだが、馬車ではなくキューレと二人乗りで向かっている。

 マジックアイテムであるお気に入り馬車を使ったとしても、馬車を牽くとなるとスピードを抑える事になるからな。


 今もナイトメアにかなりの速度をださせて街道を疾駆している。

 途中で何組かの冒険者パーティーを追い抜いたが、そのスピードに皆驚いていた。


 まぁ普通の馬が出せる速度じゃないしな。


 それにしても、頬にあたる風が心地いい。

 こういうちょっとしたこともゲームでは感じられなかったことだ。


「ファストトラベルは便利だが、こうしてナイトメアに乗って走るのも気持ちいいものだな」


「はい。主さまとふたたびこのようなことが出来て嬉しいです♪」


 ちなみに依頼を受けるとすぐに、王都周辺の地図を埋めるために飛ばしていたピクシーバードたちを北の大森林に向かわせたので、マップ表示も既にばっちりだ。


 この街道は北の大森林まで続いているが、その道は大森林の入口で途切れてしまっている。


 大森林が未開の地で魔物の巣窟だから当たり前だと言えば当たり前なのだが、そもそもこの道は、あくまでも冒険者が魔物の討伐に向かいやすいようにと、目的地を大森林入口として整備された道らしい。


 北の大森林のある場所は、ゲーム時代も初心者向けのキャンペーンの舞台としてたびたび登場したのを覚えているが、その頃はここまで巨大な森ではなかった。


 もしかするとオレたちのようなプレイヤーがいなくなり、魔物の討伐が追い付かなくなったせいで森が広がったのかもしれない。


「お。そろそろつくな」


 視界の隅に表示してあるクオータービューの倍率をさげて、かなり遠くまで確認できるようにしているが、それでももう五分とかからないだろう。


「主さま、まずはゴブリンの集落です」


「わかった。じゃぁここからの案内は任せる。頼むぞ」


「はい!」


 今回の討伐対象の場所はもう把握したというので、ナイトメアの手綱をキューレに任せた。


 森の中は徒歩になるかと思ったのだが、意外とそこまで木々の間はつまっておらず、ナイトメアに乗ったままゴブリンの集落が発見された場所へと進んでいく。


 上空には警戒と周囲の状況確認用に今もピクシーバードが旋回しており、奇襲される恐れもほぼないので気軽なものだ。


「あ。数匹のゴブリンがこちらに向かってくるな」


 わざわざ止まって退治するのも面倒だ。


「ナイトメア、ゴブリンが現れたらブレスで薙ぎ払え」


 オレの指示に、ぶるっと小さく鼻を鳴らすと、次の瞬間にはもうブレスを放っていた。


「あ……ブレス放つのがはやすぎる……」


 発見したゴブリンまではまだ結構距離があったのだが、やつらがさっきまでいた地点までブレスで薙ぎ払われて、視界が開けてしまっていた。


 まぁナイトメアも高位のユニットだし、この程度の距離ならゴブリンの気配を察知していたのだろうが、まさか即ブレスをぶっ放すとは思っておらず驚いた。


 ナイトメアのブレスは通常の炎と違い、延焼の恐れが少ない。

 これぐらい木々の間が広ければ森の中で炎のブレスを放っても大丈夫だろうと思って指示を出したのだが、その点は今も変わっていないようでホッとする。


 最悪延焼しそうな時は、すぐに消火できる能力を持つユニットを召喚するつもりだったので躊躇なくとれた行動だ。


 ただ、遠距離からブレスを放ったせいで、その途中の木や草をすべてブレスで薙ぎ払ってしまったのは予想できていなかったが……。


 とりあえず気を取り直して、確認を先にすますか。


 まず、これはすでにわかっていたことだが、現実となったこの世界でも、魔物は倒すと光の粒子となって消え去る。


 このあたりの世界の(ことわり)がゲームと同じなのは、グロいのが苦手なので非常に助かる。


 次はギルドカードの確認だ。

 ギルドカードはマジックアイテムとなっており、本人の証明が出来る以外にいくつかの機能が組み込まれていた。


「うん、魔物の討伐カウントはちゃんと入っているな」


 たとえば自分のレベルを表示できたり、このように魔物の討伐履歴を記録したりと意外とすごい技術が詰め込まれている。


 ただこれはゲーム時代からあったシステムで、メッセージの魔法やユニット召喚(召喚魔法)のように、今のこの世界の住人には解析できない失われた技術とされていた。


 ギルドカードがメッセージの魔法と違う点は、解析はできなくとも使用はできるところだ。

 使われている技術は理解できなくとも作成する方法が伝えられており、その手順で作成できるので成り立っている。


 ちなみにこの技術は、冒険者ギルドのギルドカードだけで使われているわけではないそうだ。

 さまざまなものにこのカードの技術が使われているようで、貴族や騎士は身分の証明用に似たようなマジックアイテムを持っているし、王国民にも同様の技術を用いたカードが発行されているらしい。


 とりあえずギルドカードは確認できた。

 次は……。


「よし。ゲーム時代のシステムもちゃんと機能しているようだな」


 今オレが確認したのはドロップアイテムの自動回収機能だ。

 これもちゃんと機能しているようだ。


 なにげにすごく重要な機能なので、この世界でも使えてかなり嬉しい。


 ミンティスと一緒に襲われた時にゴブリンの大群を倒しているのだが、もともとオレのアイテムボックスには大量のアイテムが入っており、ドロップログはしばらくすると消えてしまう仕様のため、確認できていなかったのだ。


 これは魔物がドロップアイテムを落とすというこの世界の(ことわり)が、ゲームシステムとうまく融合しているということであり、まっさきに確認したかったことのひとつだ。


「あと、経験値は入って……るのか? いや、わからないな……」


 経験値はステータスビュー上に緑のバーで表示されているのだが、獲得した経験値の正確な数字まではわからい。

 ゴブリン数匹じゃ誤差のレベルなので、経験値のバーが増えたかどうかはわからなかった。


 レベルキャップに達しているのになぜこんな確認をしているのか?


 実は前回ゴブリンの大群を倒した時に、ほんのわずかだが経験値のバーが伸びたような気がするのだ。


 表示上は1ミリあるかないか。目を凝らさなければ気付かないレベルだ。

 だが、たしかに緑の光がほんのわずかだが見えるのだ。


 レベルキャップに達している間は、こんな緑の線は見えなかったはずだ。

 でも、目の錯覚だと言われると納得しそうなほどなので、正直まだ確信が持てない。


「一番気になる検証だったんだが、こっちは持ち越しだな」


 ゴブリンの集落はもうすぐだ。

 そこであらためて確認すればいいだろう。


 いや、ゴブリンの大群を倒してもこれなのだ。

 ゴブリンの集落程度では、経験値バーが伸びたかどうかなんてわかるわけないか……。


 もしかするとレベルキャップが解放されているかもしれない。

 そう思うと早く確認したかったのだが、かなり時間がかかりそうだ。


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