六月病はあるんだって2
白熱のババ抜きが始まった。
ちゃぶ台にそれぞれ座り、トランプを無言で抜き差し。
「皆……表情に出さないねぇ?」
イナが邪悪な笑みを周りに向けながら意地悪そうにつぶやいた。
「そりゃあね。ババ抜きだもん。ババ抜きは神にとっては心理戦みたいなもん!」
ウカは無表情のままイナに答えた。
「しかし……ほんとに誰がババを持ってるかわからんな……」
リガノがミタマからトランプを一枚抜き取る。
「ねー、これじゃあ表情が動かないからおもしろくないよー」
とかいいつつミタマは黙々と手を動かし、イナにトランプをかざした。
「ふむふむ。ミタマ君、ババいるでしょ!」
「いないからどれ取っても安心だよー」
イナはミタマを警戒して慎重にトランプを選ぶ。
イナはウカにトランプをかざした。
「皆、テレパシー回線オフにしてるでしょー! 心が読めないじゃんか」
ウカは愉快に笑いながらイナのトランプをひいた。
……うっ……
ババが回ってきていた。
……回線オフにしよう。悟られる!
ウカは回線をオフにし、トランプをリガノにかざす。
「……む……残りが三枚か……。怪しいな……」
リガノは怪しみながらババを持っていった。
……よし!
ウカは顔に出さないように心でつぶやいた。
刹那、カランカランと賽銭箱にお金を入れる音が響いた。
「えっ! ちょっと待って!」
ウカが叫んだ時、ミタマが頭を抱えていた。
「負けたー! 皆強いよー。テレパシー回線オフにしたら表情も心の声も聞こえないじゃない。あはは!」
「あはは!」
「えーん!!」
「え??」
愉快に笑うミタマ達の脇でひとり泣き始めたのはウカだった。
「ちょ……ウカちゃん? なんで泣いてるの? どういう心境?」
「勝ったから感動泣きとか?」
「違うだろ……また、やったんだ……。なぐさめよう……」
ミタマとイナが首を傾げる中、リガノだけは呆れていた。
「調子に乗って回線オフにしちゃったから参拝客の祈りを聞き逃した……えーん! せっかく来た参拝客なのにぃ!!」
ウカは両手で顔を覆いながら声を上げて泣いた。
「あーあ……せっかく回線をクリアにしたのにー」
残りの三人はため息をつきつつ、ウカをなぐさめた。
「皆ずるいよー! 皆も回線オフにしてたじゃなーい!! あたしだってやりたかったのよー! えーん!」
ウカの叫びに一同は固まり、ミタマはきっていたトランプを落とした。
「……あ……」
そして同時に声をあげ、
「あああ!! まずいまずい!!」
「うちらもこれじゃあ祈り聞けないじゃん! ヤバイじゃん!」
「早く回線をオンにしろ!」
皆でパニックに陥った。
慌てて回線をオンにした一同は皆で一緒に泣いた。
外の雨は本降りになり、彼女達の雨もしばらく続きそうだった。
ウカ達の奮闘はまだまだ続く。
「結局何もやってないんだけどね……」




