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エンディング稲荷2

 「こばると君がね! 弐の世界(霊魂、夢)の……えーと、冷林の心の世界で皆で遊べるヒコウキを用意してくれたから、これから遊びに行ってくる!」

 イナが来て早々そう叫び、ウカはため息をついた。

 「行ってきなよ。なんだかわからんけど。お年玉でヒコウキのおもちゃを買ったのか」

 「あと、これ!」

 イナがついでのように出してきたのは稲荷ランキングが載っている新聞「天界通信」の紙版だ。

 「え、もうその時期? だからなんか、一ヵ月分の日記を書いているのかぁ、私。まだこばると失踪事件まで日記が書けてないし。弐の世界についても全く書いてないし」

 ウカは慌てて日記を仕上げた。

 事件がないところはてきとうに埋めている。

 「弐の世界は霊魂も遊びに来れる宇宙空間の中にある、生きてるもの分ある心の世界! 覚えた!」

 「うん。そうらしいね」

 ウカはイナが発した弐の世界についてもメモをしておいた。たぶん忘れるのであまり意味はないかもしれない。

 「それでさ、稲荷ランキングどうなの?」

 ミタマがそわそわしながらイナが持つ新聞を見ていた。

 「ああ、はい!」

 イナは漢字とカタカナが読めないので、ミタマにそのまま渡した。なんだかノリで新聞を持ってきたらしい。

 「おお?」

 ミタマは新聞をめくり、稲荷ランキングに目を通す。お伊勢さんや京都あたりは毎年一位二位あたりだが、百合組が見るのは下だ。

 「最下位だけど! ポイントが入ってる!」

 「ええ! やったじゃん!」

 レベルの低い会話だが、百合組にポイントが入っていることがまずない。それだけでもレアケースだ。 

 「特別賞だ!」

 ミタマが叫び、リガノとウカは新聞を覗き込んだ。

 「やったあ!」

 「なになに、こばるとを見つけてくれてありがとう。時神主、湯瀬紅雷王(ゆせ こうらいおう)。こばるとの件で助かったとのこと。ほぼ、身内ポイントだな」

 リガノがつぶやき、ウカはにこやかに笑った。

 「まあ、いいじゃん? うちらも頑張ればできるって証明になったしぃ」

 「……あー、まあね。って、なにかやったっけ?」

 ミタマは苦笑いを向ける。

 「ねー、それより暖かいから梅見でもしてきたら?」

 新聞を眺める三柱にイナはつまらなそうに尋ねてきた。

 「え、梅? もう咲いてるの?」

 「なに言ってるの? もう二月終わるよ?」

 「にがつが、おわる? 待って待って! 日記の欄、一ヶ月間違ってるってこと?」

 ウカは慌てて日記帳に目を通す。

 見事に一ヶ月ずれて日記を書いていた。一月の内容を二月に書いていたのだ。

 「よく見たら一月のことを二月に書いてるじゃん! 一月丸々書いてないことになるじゃん! で、今、何日よ?」

 「二月の……えーと、二十四日かな」

 「もう二月終わるじゃん!」

 「だから、言ってるじゃん……」

 絶望するウカにあきれたイナの声が重なった。

 「あーもう、シメシメ! 楽しい一年でした! ……ん? 元々今年一年は何で日記を書いていたんだっけ?」

 ウカが首を傾げたのでリガノが眉をよせつつ、答えた。

 「紅雷王が果たして上司なのかから始まり、不思議な子供がいると日記に書き始めて、それがこばるとだと判明し、紅雷王がアマテラス系列で稲荷と関係あることから、身内だとわかり、紅雷王自身は百合組の稲荷の上司だとわかったんだ」

 「そんな内容だったっけ?」

 「そうだ」

 リガノは頷き、ミタマは苦笑いを向けた。

 「まあ、検索魔のリガノくんが言うんだからそうなんだよ、たぶん」

 「イナちゃんはもう行っていい?」

 イナがしびれを切らし騒ぎ出したので、ウカはイナを解放しておく。

 「いいよ、こばるとと遊んでこい!」

 「百合組トップとしての威厳を出したウカちゃん!」

 ウカに謎の拍手を送るミタマ。

 「もう、なんというか……これでいい気もするな……」

 リガノはため息をつきつつ、外へ出る準備を始めた。

 「あー、そうだった。梅見、梅見!」

 ウカも準備を始め、ミタマも準備を始めた。

 「近くの梅林まで行っちゃう?」

 「そうしよー!」

 ウカとミタマは春が近づく暖かさの中、外へと楽しそうに出ていった。


 日記

 今日は梅がきれいだった!

 桜はもうすぐかな!

 今年も色々ありそう。

 楽しみだなあ!

 

 ポジティブすぎない?

 

 まあ、いいじゃないか?


 勝手に日記に書き込まないでよ。

 駅とかにある思い出ノートじゃないんだけど!

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