春待ち稲荷1
「さむーい」
ウカはてきとうに神社の落ち葉を掃く。何かをしなければと動き出したが、外は寒かった。とりあえず、外の掃き掃除を始めたところだ。
「まあ、落ち葉も落ちきってるし、きれいなんだけどね……」
ウカは独り言を言いながらホウキを片付けた。暖かい自分の社に帰る。
こたつでミタマとリガノがみかんを食べていた。今度、イチゴ狩りに行きたいなどと話している。
「神社まわり掃いてきたー」
「おかえり、ウカちゃん。年末に年神がきたからか大掃除が年明けになったね」
ミタマは普段なにもしないウカに皮肉を言うとみかんを差し出した。
「何かをしなければと思い始めたのはいいことだが、実際に何かがくるわけではないからな……」
リガノもみかんをむきながらウカにそう言った。
「たしかに……でも、彼氏彼女も待っていたら来ないし、ちゃんと行動しないとさ」
「例えが珍しく正論……」
ミタマがみかんを小さく噛んで大事に食べながらウカに答える。
「まあ、とはいえ、やることもなくなったから……ティータイムにするかぁ……」
ウカが羊羮とお茶を取り出した時、思い切り玄関の引き戸が開いた。
「たいへーん!」
慌てて入り込んで来たのはイナだった。
「何? どうしたの?」
ウカは羊羮を棚に戻してからイナを見た。
「それ、羊羮?」
「それはいいんだって! なによ?」
鋭いイナにウカは苦笑いを向けた。
「ああ、お友達のこばるとくんがいなくなっちゃって、時神さん全員で探しているの!」
「ええっ!」
ウカは湯呑みを落としそうになるほど驚いた。ミタマとリガノはみかんを喉につまらせている。
「なんだって?」
「ミノさんはもう探している……。とにかく見つからない」
「そ、それってもしかすると……」
ミタマがかろうじて言葉を絞り出した。
「消滅したかもわからない、もしかしたら誰かに……」
イナの言葉にウカ達の顔色が青くなった。




