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クリスマスに年神!2

 「てかさー、あたしらみーんな帽子かぶってるけどさ、あんたも親族だからなの?」

 ウカはクゥの魔女帽子を指差した。

 「まあ、オシャレっすけど」

 「うちもそうだけど、なんで稲荷に帽子が流行ったんだろ?」

 稲荷に帽子は流行っているが、どこから流行ったかは知らないウカはとりあえずクゥに尋ねた。

 「さあ? でも私じゃないっすかね? ちっこい稲荷が私を見てかっこいいって言ったっす! それから稲荷の帽子率が上がったような気がするっすね」

 「ふむ……ちっこい稲荷ってイナじゃないよね?」

 ウカが真っ赤になったガーリックトーストをなんとも言えない顔で眺めつつ聞いた。

 「たぶんそうっすね。イナチャンさんじょー! イナチャンもかぶる! って叫んでたっす」

 「イナかよ……」

 ウカはシャンパンをあけながらつぶやく。

 「まんまと子供の声に僕達は反応しちゃったんだねー」

 ミタマがキッシュを頬張りながら苦笑いを浮かべた。

 「ああ、そうだ。トマトのスパゲティを忘れていた」

 リガノが台所へと走り、運ぶのを忘れていたトマトスパゲティを持ってきた。

 「ナスのトマトスパゲティだ!」

 ウカが嬉しそうに叫び、クゥが目を輝かせる。

 「ピリ辛にするっす!」

 「ピリ辛っていうか、それ、ただの刺激な気がする」

 クゥが真っ赤パウダーをふりかける横でミタマが引き気味につぶやいた。

 「で、稲荷ランキングは上がったっすか? この地域、やばいくらい下っすよね」

 クゥの言葉にウカ達はスパゲティを喉に詰まらせた。

 「い、いやあー、あの……今は稲荷ランキングは見ずに、地元の手助けを……」

 「そしたら稲荷ランキング上がるっすよね?」

 「うぐ……」

 苦し紛れの言い訳にクゥはすぐに突っ込んできた。

 「あ、最近、僕思ってきたんだけど、この辺、願いにくる人少ないんだよね……」

 ミタマが恐る恐る答えたがクゥは首をかしげた。

 「そりゃあ、稲荷に願いにくる方は少なそうっすけど、稲荷ランキングは地域の手助けでも上がるっす」

 「地域の手助けかあ……。この辺、時神さんが住んでるから手助けはある程度あちらがやるんだよなあ……。行事も人に見える時神さんが手伝っているし」

 ウカがつぶやき、クゥは頷く。

 「確かに。地域の手助けは時神がやってるっすねー。まあ、稲荷がやらなきゃランキングはあがらないっすけど、時神が稲荷のためにやっているなら感謝はしておかないとっすよ」

 「ま、まあ……たしかに」

 「ランキングはある程度ひとつ上に近くした方がいいんじゃないっすかね? ここ、ダントツで低すぎるから一部で闇の地域と呼ばれているっす」

 クゥがスパゲティをうまそうに食べているのをウカは蒼白で見つめた。

 「げっ。闇の地域? やばすぎでしょ」

 「まあ、ウカちゃん、この地域の稲荷は誰も勤勉じゃないし、毎日こうじゃない? 無理もないって」

 ミタマが息を吐きながらミネストローネをおいしそうに飲む。

 「そう、そうなんだよねー。なんもない平和な地域だからさ。ただ、行事は参加してる!」

 「まあねー」

 ミタマがてきとうに相づちを打つとウカはクゥを不安げに見つめた。

 「どうしたらいいのぅ!」

 「人助けだよ、人助け! 人を助けるっすよ!」

 「……人助けねぇ……そうだねぇ」

 ウカは納得しつつ、トマトスパゲティを食べた。トマトの酸味と旨味が口に広がる。

 「うますぎ!」

 「ありがとうな。もうちょっと働いてくれ」

 リガノはお礼を言ってから、小さくつぶやいた。

 「あはは……。なんか動くかあ……」

 ウカはため息をつきつつ、おいしいご飯をいただいた。

 「まあ、後、ケーキもあるし、今日は楽しむ感じで!」

 ミタマがそう言い、ウカが手を叩いて喜んだ。

 「そういうとこっすよ……」

 クゥはあきれた声をあげたが、稲荷のクリスマスパーティにちゃっかりと加わっていた。


 日記

 ちょーおいしかった!

 ラストのケーキも堪能!

 なんかクゥがずっといたけど、まあ楽しんだからいいや。

 それよりも闇の地域はショックだった。頑張ろうかな、そろそろ。

 明日から!

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