十一月のスタンプラリー3
「あー……ちょっと待って! えー……」
ウカはスタンプラリー台に貼ってあったスタンプラリーのポスターをなんとなく見つめた。そこにはスタンプラリーのお店でお買い物をするとお買い物シールがもらえて別のくじ引きも引けると書いてあった。
「あー、そう! えーとお買い物! 近くのカフェ! スタンプラリーあったよ。イナはまだ押してないからそっちいってお茶でもしてシールもらわない?」
ウカが冷や汗をかきながらイナを止める。
「カフェ! パフェ食べたい!」
「パフェ! ケーキ! クレープ!」
イナはよくわからないままこばるとと喜んでいた。
「……あんた、お金払えるのか?」
プラズマにあきれた顔をされ、ウカは慌てた。ウカの神社は参拝客がおらず、百円すら落ちていない。
「それはそのぉ……」
「なんで言ったんだよ……」
「えーと……」
ウカが考えていると、横から頬を赤く染めたアヤがプラズマの袖を引っ張っていた。
「な、なんだよ……。かわいいな……」
「クレープ……食べたいの。シュガーバターのあったかいクレープ……」
アヤは甘いものが大好きだ。
カフェに行きたくなったらしい。
「ええー……アヤだけならいいけど、稲荷のも払うのー……」
プラズマは頭を抱えていたが、イナとこばるとが楽しそうにしているので、行くことに決めた。
「一番でっかいパフェ食べるぞー!」
「食べるぞー!」
「はあ……」
「ごめん。紅雷王様……」
ウカは苦笑いをしておいた。
「もう仕方ないな……。オイ! こばると! ウカノミタマだ。どうするんだっけ?」
プラズマが突然こばるとを呼び止め、ウカの前に出させた。
「えー、えーと、ぷいぷいぷーん! ウカウカウカカカ!」
「はあ?」
こばるとはわからなかったのか、謎のダンスをつけて謎の呪文を発した。
「こばると、わかんないのにてきとうに言うな……。むしろ、どこから出た。ちゃんとできないならパフェはなしだ」
プラズマは冷静に厳しい顔でこばるとの肩を掴んだ。
「わっ、わっ! ごめんなさい! ごめんなさい! わからないです! 何を言えばいいんですか?」
こばるとは必死にプラズマにすがった。優しそうなプラズマは意外に厳しいのかもしれない。こばるとが急に丁寧語になったのもプラズマの厳しさを表しているのか。
「ウカノミタマじゃなくてもちゃんと挨拶をしろ」
「あ……こんちはー!」
挨拶はしたものの、走り出そうとするこばるとの腕を引き、再びウカの前に出させたプラズマは厳しい顔のまま、やり直しをさせた。
「こんにちはだ」
「……こんにちは。ウカさん」
「あ、うん。こんにちは。こばると君」
挨拶は相手の神力の理解をするのに一番大事である。管理はプラズマがしっかりやっているようだった。アヤは挨拶をしているこばるとを優しい顔で見つめていた。
「じゃ、甘いもの食べに行くか。あんたらのも払ってやるよ」
「やった!」
喜んだのはこばるとの他、ウカもだった。
「はやくいこうよー!」
イナが痺れを切らし飛び跳ねていたので、ウカはスキップしながらそちらへと向かった。
日記
パフェうめー!
最高だった! あの後の栗ご飯も最高だったね! パフェ食べたことはミタマとリガノには内緒にした!
スタンプラリーも埋められたし、ガラガラもできた! 参加賞だったけど、イナはお菓子ボックスもらってニコニコで帰っていった。
栗ご飯死守! いえーい!
紅雷王があのヤンチャ少年を思ったより管理していたことに驚いた。
私達は稲荷神。百合組地区は稲荷の中でも最低に仕事をしないけど、稲荷なんだよなあ……私達。
ちゃんとしないとなあ……。
まあ、明日から。




