六月病はあるんだって1
六月。雨がシトシトとふっている。
稲荷神のウカは社の自室でゴロゴロしていた。五月病を乗り越え六月に入ったが困ったことが起きた。
六月病になったのである。
「やる気が出ない……。雨降ってるし休んでもいいよねー。回線はきれいにしたしー、やることもないしー」
万年床になりつつある布団の上を右へ左へ動きながら心地よい雨の音を聴く。
「六月は梅雨明けの準備期間だし、私も夏に向けてパワーを蓄えないと……」
「おっはよー!」
ウカがゴロゴロする言い訳をつぶやいているとやたらと元気な声が響いた。ウカの顔付近で仁王立ちをしている元気な少女にウカはため息をついた。
「ああ……イナ? いつの間に社内に入ったの?ごめん、今日は超眠い。どーせ参拝客は雨だから来ないでしょ。七月から本気出すから」
「いつまでも本気出ないやつ!! あはは! 私もやる気が出ないから皆で雨の遊びをしようと……」
イナは笑いながらトランプやらボードゲームやらをガシャガシャ出し始めた。
「ほぉ……いいかもねー。このまま寝てたらキノコ生えそうだし。布団あげてちゃぶ台出すね……」
ウカは半分眠りながら布団を丸めて脇に避けるとちゃぶ台を真ん中に置いた。
するとすぐに障子扉を叩く音がし、若い男二人が入ってきた。
「あー、ウカちゃん、ちゃんと布団あげたんだね」
「参拝客が来ない故、息抜きに来たぞ。神社の掃除ばかりするのも疲れたのでな」
「いらっしゃい、いらっしゃい。ミタマ君とリガノ君。リガノは参拝客で忙しかったんじゃなくて掃除で忙しかったんでしょう?」
「……バレたか……」
「ま、結局、皆ダメだったって事か……。何がダメなんだろー……。もー、わかんなーい。ま、いいわ! ゲームしましょ!ゲーム!」
「……それがダメなんだと思うけど……ま、いっか」
音を立てながらトランプを配るウカにミタマはため息をついた。
「何する? ババ抜きでいいかしら?」
「さんせー!!」
イナは元気よく手をあげた。




