十一月のスタンプラリー2
時刻は午後三時あたり。
百合組地区商店街。
赤ちゃん用品店の前にお年寄りの方々が集まっていた。
「あれ何をしているんだろう?」
イナがつぶやき、ウカが答える。
「ああ、このお店の二階が年配者限定のフィットネスで終わったのか待ち合わせしているのかだと思うよ。邪魔にならないところにいるから配慮できる方々」
「でも……」
イナがお年寄りの一団を指差す。ウカもよく見てみるとお年寄りが固まっている先にスタンプラリー台があった。
「あー……気づいてなさそう。後回しにする?」
「うん……」
イナが頷いた時、元気な少年の声が響いた。
「邪魔なんだけど!!」
「ちょ、口悪……」
ウカが嫌そうな顔をしていると、少年は赤髪の青年に腕を掴まれ、怒られていた。
「って、あれプラズマとこばると君、アヤもいる!」
イナが声を上げたのでこばるとがこちらに気がついた。しかし、怒られている時に視線をそらしたらダメと言われているのかとりあえず、怒られている。
時神達は人間に見えるので、ご年配の女性達は「ごめんね!」とこばるとにあやまっており、アヤが逆にあやまっていた。
「親って大変だなあー」
イナがしみじみつぶやき、ウカがため息をついた。
「ごめんなさい。誰よりも早くスタンプを埋めたかったんだ」
こばるとは少し落ち込みながら台紙を女性達に見せ、奥を指差した。
「ああ……本当にごめんなさい。気づいてなかったわぁ」
年配の女性達はこばるとを優しく撫でると道をあけてくれた。
「ありがと!」
こばるとの機嫌はあっという間に直り、台へと走っていった。
「イナもイナも!」
イナも走ってこばるとの列に並ぶ。
そわそわしている。
「はあー」
ウカが長いため息をついているところでプラズマが声をかけてきた。
「あんたらもスタンプラリーか?」
「え、ま、まあね」
「どうだ? たまったか? 俺達は買い物のついでで、まわされてる。ほぼ埋まったぜ」
「あとどこだろ? はじめたばっかりなんだよねー」
ウカが楽しそうにスタンプを押しているイナを眺めながら尋ねた。
「あー、道路むかいの和菓子さんとリサイクルショップは?」
「あ、それまだだわ。てか、集めたらこれ、どうなるんですか? 記念?」
「記念にもなるが……あんたら、文字読んでないのか? ほら、スタンプ集めたらくじ引きができて、横のケーキ屋さんのケーキが当たるんだよ。だから甘いもの好きのアヤとアイツが頑張ってるわけ」
「ああー。うちの横にも置いてありましたよ。押しました?」
「押してないな」
プラズマがつぶやいた刹那、それを聞いていたこばるとが急に走り出した。
アヤに腕を掴まれ、急に走るなと怒られている。
「はあ……」
「ウカちゃんの神社のとこ、もう押したけど、こばると君が他のところ教えてくれるっていうから、一緒にいく!」
「ちょ、ちょ、待って!」
イナがこばるとについていこうとしたのでウカは悲鳴を上げながら止めた。
頭には栗ご飯。
そろそろ神社内で良いにおいがするかもしれない。




