十一月のスタンプラリー1
十一月。
寒い日もあるけれど、日中は暖かい。
百合組地区稲荷は今日もまったりしている。
「あー、参拝客来ないじゃん」
ウカはコタツで横になりながらつぶやいた。
「そんなコタツでゴロゴロしながら言われても……」
ミタマはあきれた声をあげながら、ひたすらに栗をむいていた。
「渋皮までむいてくれ」
横でリガノも栗をむいている。
「鬼皮からすごくむきにくいんだけど……。爪に刺さる……」
「それはそうだ。栗ご飯は作るのが大変なんだ」
ミタマがぼやき、リガノは淡々とむく。
「ウカちゃーん! 手伝って!」
「えー。わかったー。あたし、炊飯担当だったんだけどなー」
「炊飯なんて今、炊飯器のボタン押すだけじゃん!」
ミタマに叱られ、ウカは渋々起き上がり、皮をむき始めた。
「しかし、イナが今日はうちで食べなくて良かった。イナが食べる分の大量の栗をむくことになるところだった」
「本当に」
リガノがそう言い、ミタマは冷や汗をかきながら頷いた。
刹那、扉が乱暴に開けられ、元気な幼女が現れた。
「イナちゃんさんじょー!」
「うわああ!」
一同は驚く。いままでイナのことを話していたからだ。
「ウカちゃん……ちょっと外に彼女を連れ出しといて。栗ご飯が見つかったら全部食べられちゃうよ! 栗ご飯は手間だからそんなに作れないよ!」
「わ、わかったわよ……」
ウカは冷や汗をかきながらとりあえず、イナをすぐに外へ連れ出す。
「えー? なんかご飯作ってた?」
「気にしない! えーと……」
ウカが何かごまかせるものを探していると、子供達が何やら紙を持って歩き回っているのが見えた。ランドセルを背負った子供がすぐ横でも何かをしていた。
よく見ると百合組地区のスタンプラリーの台が置いてあり、なぜかウカの神社の横にも設置されている。
「あ! イナ! スタンプラリーやる?」
「えー? やるー!」
イナはすぐに食らいついた。
「じゃあ、この横のを最初に押そう!」
ウカはスタンプラリー台の下にあった台紙をイナに渡し、スタンプを押させた。中から心配そうに覗くミタマ達にウィンクをしたウカは喜ぶイナを連れて百合組地区のスタンプラリーへと向かった。




