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10月は例大祭2

 「ルートはどこだろ? もう始まってるよね? どこらへんにおみこしいる?」

 ウカ達はとりあえず歩きながらお神輿を探す。近くで掛け声は聞こえるものの、見つからない。

 「なんで声はするのに見つからないんだ」

 リガノがぼやく。

 「あ、イナちゃんの縁結びはつどーう!」

 イナが反応し、楽しそうに走り出した。

 「イナー! ちょっとまてぇー!」

 突然縁結びの力が発動したイナをウカ達が追いかける。いりくんだ道を走ると、声がだんだんと大きくなり民家の影からお神輿が見えた。

 「いた! イナ、すごい!」

 ウカはイナの能力のすごさに目を丸くした。縁結びは人じゃなくても反応するらしい。

 「お神輿に反応したの?」

 ミタマが首を傾げ、イナも首を傾げる。

 「わかんない」

 「だいたい、俺は何にも感じないぜ?」

 ご祭神のミノさんはイナには何も感じていないらしい。

 「たまたまじゃないね」

 「完璧に発動してました!」

 ウカにイナは手を上げて笑った。

 「じゃあ……別の……」

 「おい、あれを見ろ! あの子は」

 リガノがお神輿を担ぐ小さな少年を指差した。

 「わっしょいー! わっしょいー!」

 少年はイナを見つけ、大きく手を振った。

 「あ! こばるとだ! イナもやるー!」

 イナは少年の元へと走っていった。

 「あの子、時神のうちにいる子だよね?」

 ウカが尋ね、ミノさんは頷く。

 「あー、そうだな。時神現代神アヤちゃんの息子なんだとよ」

 「え? みんなで育てている息子くんなんじゃないの?」

 「よくわからねぇけど、血縁はアヤちゃんだと。おかんなアヤちゃんもいいぞぉ!」

 「なんかありそうだね」

 ミタマは頷きながらイナを目で追っていた。このあいだのプールもイナの縁結びが発動したのか彼がいた。

 「ミタマ、気づいているか? 彼からは人間の匂いがする」

 リガノがミタマにこっそり耳打ちをしてきた。ミタマは頷く。

 「うん。人間が混ざってるよね。不思議だなあ。人間の力がイナの縁結びを発動させたか」

 「なぜ、人間の力がある? あの子は時神なはず」

 リガノは眉を寄せ、お神輿を眺めた。

 ふと、こばるとがこちらを向き、笑った。とりあえずリガノとミタマはこばるとに手を振り、どこかにいるであろう上司にサボっていることがばれないよう、わっしょいわっしょいと言い始める。

 「ほらー! 声だせー! しょうねーん!」

 仕事しています雰囲気でミタマが声を張り上げた。

 「これ、俺達は最後まで行くべきなのか?」

 「行こうよ。紅雷王に話がいったら大変だよ? 彼を持ち上げとかないとさ!」

 ウカが問題発言をし、稲荷達は無駄にわっしょいと叫びながら熱血に少年にアピールした。

 「元気だねぇ。真面目に例大祭してるの?」

 「ひゃあ!」

 後ろから声をかけられ、ウカは思わず悲鳴をあげてしまった。

 「そんなにビビらなくても」

 「ひっ! 紅雷王さま!」

 ウカの後ろに立っていたのはプラズマだった。

 「こばるとがいるんだよ、ほら、わっしょいしてるだろ? イナを呼んだみたいだな」

 楽しそうなプラズマの顔を眺めながらウカは尋ねた。

 「あ、あのさ、あのこばるとって子、人間と神、どっちなの?」

 ウカの質問にプラズマは軽く笑った。

 「今は半分。あんたらもあの子と遊んでやってくれ。『世界改変時代』の遺物みたいなものさ、あの子は」

 「世界……改変?」

 「気にならないなら気にしなくていい。あんたらは俺がアマテラス神力を持ってるから俺に従っているだけだ。本物はこの世界にはいないんだ。あっちに……いるらしい」

 「あっちって……」

 「()の世界だよ」

 プラズマが遠くを見る目でそう答えた。

 「伍……」

 「あっちは想像物がないんだと。稲荷がどういう扱いになっているのか気にはなるぜ。稲荷は元々、アマテラス様の食事係で……スサノオの娘だ」

 「……スサノオ……」

 ウカは首を傾げた。

 「三貴神……アマテラス、スサノオ、ツクヨミはこの世界には今はいない。いるのは伍の世界だよ。想像物がない世界で存在できるのか、確認する術はない。あんたら稲荷はかなり高いところにいる神。こちらの人間は稲荷をよくわかっている。アマテラス様がお隠れになっているのに。だからまあ、一番デカイ稲荷神社でお神輿が出るわけ」

 プラズマはウカを見て苦笑いを浮かべた。

 「あんたらがわっしょい言っていたのはおもしろかったぜ。こばるとはこれから神になる(たちばな)家だからな、アマテラス様に敬意を払ってもらおうかなとやらせたんだよ。まあ、本神はお菓子目当てみたいだがね」

 「へー。なるほどー。……って、うちらを持ち上げるためにあの子がいたの⁉ 私らあんたに怒られないように来たのに!」

 「素直だな……」

 プラズマははにかみながら歩き出した。

 「ねぇ……」

 「もう少しで最後だぜ。稲荷全員お神輿についてきちゃって、おもしろいぞ」

 「あははは……」

 ウカは未だにプラズマによく見られようとわっしょいわっしょいと叫ぶミタマとリガノを見つつ、あきれたため息を吐いた。

 「今日、お鍋だから、あんたらもきたら? 今、他の時神が下準備してる」

 「え、やった! いく!」

 「調子がいいな……本当に」

 ウカはミタマ達にわっしょいではなく、「今日、お鍋を食べさせてもらえること」を大きな声で叫んでいた。

 

 

 日記

 はあ! 楽しかったしおいしかったし! こばると君はなんか人間と神の力半々だって。だからイナの縁結びが発動したのかあ。人間に作用するからね。

 お鍋の出汁、干し椎茸は反則でしょ!

 うますぎー!

 白菜やわらかくて最高だった!

 たぶん、私だけで一玉食べた!

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