10月は例大祭1
「例大祭! わっしょいわっしょい!」
ウカは布団にくるまりながら「わっしょいわっしょい」と騒いでいた。
寒くて外に出られない。
急に寒さが増した。本日は秋晴れ。朝から例大祭だとわかっていたウカは布団の中から例大祭を応援していた。
百合組地区で一番大きい稲荷神社はミノさんの神社でおそらくお神輿はここから始まる。
「おおーい! 例大祭だぜー!」
気がつくと外でミノさんが叫んでいた。ウカがのそのそと布団の外に出ると、ミタマとリガノがいなかった。
「あれ……ミタマくん? リガノくん?」
ウカが外への扉を開けると、あきれた顔のミタマとリガノ、楽しそうなイナがいた。
「あら、そこにいたの。あれ? ミノさんは? さっき声がしたのに」
「ここだ!」
ミノさんはウカの社の上から落ちてきた。
「うわあ! 上から落ちてくんな! びっくりしたあ」
「サプライズだぜ!」
「変なサプライズやめて」
「いえーい!」
「今日は元気じゃない。例大祭だから?」
ウカは目を細め、尋ねた。
「んー、いや。あー、まあそれもあるが、今日はアヤちゃんのおうちがお鍋なんだよー! シメにうどんも楽しみだぜー!」
「はあ?」
元気な理由は時神さんのおうちの夕飯がお鍋だかららしい。イナとミノさんは時神さんのおうちの庭にある社に勝手に住み着いているので、優しい時神現代神アヤがいつもふたりの分までご飯を用意してくれるようだ。
「お鍋! いっぱい食べる! 楽しみすぎて子供御輿の『頑張ったねおにぎり』五つ、もらってきちゃった! 食べよー」
イナはひとりでおにぎり五つを食した。
「あんたが食べんのかい……。てか、それお神輿引っ張った子供にあげる神社のおにぎりよね? 努力しないやつが五個も食うな!」
「じゃあ、皆でわっしょいしよ! お菓子もジュースももらえる!」
「えー……」
「あれって神はやるものなの?」
ミタマがあきれた顔のままウカに尋ねた。
「知らないー」
「まあ、俺達の神社は小さいし、例大祭はくくられてるから実際はよくわからんと言えばそうだ」
リガノが深く頷く。
「行ってみようか?」
ウカがそう尋ね、稲荷達は頷いた。




