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9月は残暑がきつい1

 九月に入った。まだまだ暑い。

 残暑というか、まだ夏だ。

 「夏だね」

 朝起きて涼しさを感じたかったウカは社の扉を開けて暑さを確認した。暑いことを確認したウカは再び布団の上に横になり、冷風が出る高天原の発明品をつける。

 まあ、扇風機のようなものだ。

 「今年は暑すぎて、さすがにこれ、使わないと……」

 ちなみに買ったばかりだ。

 あと五十年は使う予定。

 高天原北の主、冷林から支給された少額のお金で買ったものだ。

 これが逆に今、彼女を堕落させている。

 「ウカちゃん! ちょっと何してんの! 今日は太陽神サキ様が来る日でしょ!」

 ミタマが慌てて入ってきてウカを起こす。

 「ウカ! 今日は起きんとまずい!」

 リガノもやってきて一緒ウカを起こした。布団の両端をそれぞれ持ち、頷いたふたりは布団を引っ張り、ウカを転がして布団を片付けた。

 「ふぎゃ! 痛いじゃない! なにすんのよー!」

 「今日はサキ様が来るんでしょ! 忘れたの? しっかりしてよ、主様!」

 ミタマに言われ、ウカは首を傾げた。

 「あるじ?」

 「自覚はないのか……。あのな、ウカは百合組地区稲荷の中の主だ」

 リガノに言われ、ウカは飛び起きた。

 「はあ? ええ! いつから決まったの? え? 知らないんだけど!」

 「最初からそうなんだけどね……。使い道がないからこの表現、使ってない……ははは」

 ミタマはウカから目をそらして苦笑いを浮かべた。

 「さあ、何をやっているの! 早くサキ様を迎える準備を!」

 「なんで急に偉そうになるの……」

 「普通でいいんだ、普通で」

 ウカが絵に描いたような王女をやり始めたので、ミタマとリガノはそれぞれツッコミを入れた。

 「イナチャン、サンジョー!」

 「ああ! ややこしいのがきた!」

 いつものようにイナがやってきて、ウカは頭を抱えた。

 「んー? なんかげっそりだねー?」

 「げっそりってか……。これからサキ様が来るらしい」

 「えー! おかしもらおー!」

 イナが喜び始めたので、ウカはさらに頭を抱えた。

 「怒られるかもしれないのにー」

 ウカがつぶやいた刹那、凛々しい女性の声が響いた。

 「やあやあ、元気かい? 皆でここに集まっているなんて思わなかったよ。あたしはミノさんの神社かと。神社として一番大きいのはあそこだろう? 夏祭りもやったじゃないかい」

 「うわあ! もうきた!」

 稲荷達は慌てて布団を台所にぶちこんだ。とりあえず見えないように。

 黒髪ウェーブの若い女性が猫のような愛嬌のある瞳で稲荷達を見ていた。赤い着物を着ていて、太陽の王冠をかぶっている。

 「さ、さ、サキ様! おはようございます!」

 「んー、もう昼だけどねー」

 「もう、昼! 嘘……そんな寝てた? 私……」

 ウカが後ろに待機している稲荷達を見た。稲荷達は皆、深く頷いている。

 「あははは……えーと」

 「まあまあ、固くならなくていいさ。あたしは様子を見に来ただけだからねぇ。参拝客……来てるかい?」

 「あー……いえ、今日はきてません。はい、今日は」

 「……いつも来てないけどねー」

 ウカはミタマを睨み付けるが、ミタマは明後日の方を向いた。

 「お団子とか用意してあるのかい?」

 サキは隅にあったちゃぶ台の上に置いてある月見団子を見つけた。

 「ええ、まあ……中秋の名月ですので……ススキは夕方取りに行こうかなと」

 「いいねぇ!」

 ミタマが答え、サキは笑顔で頷いた。

 「イナチャン、お団子、いっぱい食べる!」

 イナが腰に手を当てて元気よく答える。

 「イナちゃんは安定してるねぇ。イナちゃんは亡くなった子供と地域神が合体した神で、後に稲荷に統合されたから、ウカノミタマ系列かっていうと怪しいけど、まあ、縁結びだし、悲しい気持ちにならなければ大丈夫さ」

 サキはイナの頭を撫でてからお煎餅を何枚か渡した。

 「サキさまー! ありがとー!」

 イナはお煎餅を食べながらサキにお礼を言った。

 「で、あの……この際だからハッキリさせたいんですが」

 会話が切れたところでリガノが口を開いた。

 「なんだい?」

 「私達の直接の上司は誰なのでしょうか? 北の冷林様ですか?」

 「あー、それねぇ」

 サキは眉を寄せながら話し始めた。

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