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八月はプールへゴー!1

 暑すぎてセミが鳴かない今年の夏はなんだか静かだ。

 「あっつい!」

 ウカは叫びながらアイスを口に入れていた。


 「暑いねー……。ほら、アイスがあっという間に溶ける」

 横にいたミタマもため息混じりに答えた。ここはウカの神社内の霊的空間だ。


 「太陽消してやろうかな!」

 「そんなウキウキで言わないで! 一応上司だから!」

 「太陽、消してやるぞォ!」

 暑すぎておかしくなっているウカは扉を開けて太陽に叫んでいた。


 「な、なぜそんな命知らずな言葉を叫んでいる……。俺はまだ生きていたいのだが……」

 ウカが叫んだ時、リガノが台所からスイカを運んできた。

 「冷やしたスイカだ! 僕、ガッツリ食べるよ!」

 ミタマが一玉丸々いこうとしたのでリガノはため息をついた。

 この暑さで皆、頭がやられている。避暑地を探さねばならない。


 「どこがいいか……」

 「ん? 何が?」

 リガノが考えていると、ウカが聞いてきた。

 「いや、暑すぎるなら涼しい場所に行くべきではと」

 「あー、涼しい場所、近所のスーパー! あそこは涼しい!」

 ウカが手を上げて答えたがリガノは眉を寄せて唸る。


 「いや、なんか……」

 「楽しいとこがいいよね! プール行っちゃう?」

 ミタマの言葉にウカの目が輝く。

 「イエァ! プールへゴー!」

 ウカは素早く準備した。


 「はや……」

 ミタマはあきれた声をもらした。ウカは水着にラップタオルに浮き輪ともうすでに準備完了だった。


 「ま、待って……準備するから……」

 「その能力をなぜ仕事に使えないのか」

 ミタマとリガノが慌てて準備を開始していると、案の定、イナが遊びに来た。


 「やっほー! イナチャンさんじょー! え、何? プール? いくー!」

 「ま、まあ、結局、こうなるよね」

 スイカをとりあえず食べ始めたイナにミタマは頭を抱えた。


 「プールは近くにあるあのデッカイ遊園地に併設されているやつでいい? 私ら、人に見えないから入場券スルーできるわ! ま、普段からこの地域を守っているわけだし、いいよね?」

 興奮気味なウカにミタマが頭を抑えた。


 「言うほど活動してないっていう……。近くの公園の水遊びポイントでいいんじゃない……? まあ、いいけど」

 「波のプールと流れるプールがある!」

 ウカはもうミタマの話は聞いておらず、いつの間にか持っていたパンフレットを見せ始めた。


 「屋台のご飯もレストランもある!」

 イナの目の輝きは食べ物に釘付けだった。

 「……お店は無理かなあ。人間の目に映らないし」

 ミタマが苦笑いを浮かべる。


 「じゃあ、人間に見えるヤモリを……」

 「このためだけにあの龍神さん呼ぶの? やめようよー」

 「まあ、仕方ないか! おやつ持ってこう!」

 スイカを一玉丸々食べてしまったイナはウカの社内の棚から食べられそうなお菓子を探し始めた。


 「なにしにいくのよ、もー」

 ウカは腰に手を当てて呆れた顔をした。


 「また、遊んでるよって思われないかなあ」

 「大丈夫! 夢中で遊んでいたら視線に気づかないから!」

 「それでいいのか大いに不安」

 しっかり準備した稲荷達はプールへと向かった。

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