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五月病いなり2

 五月後半。

「やる気の出し方を探すのにやる気を出してどうするの!!」

「ごもっとも」

 再び集まったウカ達はあまり意味のない会議をしていた。


「はあ……逆に疲れたよ……」

 ミタマがため息をつくと皆も一斉にため息をついた。

 気分が落ちているところに珍しく参拝客が来た。


「おお! 参拝客かも!」

 ウカは気分を一転させ狂喜した。


 参拝客はおじいさんだった。杖をついている。ウカの神社は山の中腹にあり、そこまで石段をのぼらなければここまで来ることはできない。それも不人気のひとつか。

 ともかく、珍しいことだった。

 この辺にある集落の住人かもしれない。

 おじいさんはお賽銭を賽銭箱に投げ入れて何かを祈っていた。


「ウカちゃん! テレ電!」

 ミタマが叫び、ウカが慌てて社の電話につないだ。しばらくぶりだったので願いの聞き方を忘れていた。慌てて思い出して繋ぐ。お賽銭は神様との電話代である。お賽銭を入れると神様の社からテレパシーで神様に願いが届く仕組みだ。


「えーと……」

 回線を繋いでおじいさんの願いを聞く。

 しかし、ノイズが入っていて聞き取れない。


「まずい! 社の回線をクリーンにしとくの忘れた!! 全然使ってないからメンテナンスしてなかったよ!えーん……」

 ウカがしくしく泣いている内におじいさんは去っていった。


「あーあ……」

 他のメンバーのため息がむなしく響く。


「あ! 待って! 追いかけて観察したら願いがわかるかもよ!」

 イナが足をバタバタさせながら叫んだ。


「そうか!!」

 ウカは走り出した。リガノとミタマ、イナも追いかける。


「そういえばリガノもミタマも回線のメンテナンスした?」

「いや……どうやればいいのかわからんから放置で……」

「すっかり忘れてたから放置で……」

 二人から呆れた言い訳が返ってきた。


「そういうイナは?」

 歩きながらミタマが尋ねる。

 すでにおじいさんには追い付いていた。


「私は同居してるヤモリがやってくれるもーん!」

 なぜか自慢気にイナは答えた。

 現在イナの神社は家守龍神(いえのもりりゅうのかみ)、通称ヤモリという神の神社と同じ神社の敷地内にある。


「自分でやってないんかーい!」

 遅れてミタマが突っ込んだ。


「ちょっと! 皆静かにしてよ!」

 ウカは自業自得でいらついていた。


「しかし、追いかけても神社での願いを口にすることはないと思うぞ……。口にすると叶わないと言われているじゃないか」

 リガノの言葉にウカは足を止めた。


「だよねー……。なんでそんなルールにしたのよ! 人間のバカー!」

「おいおい……お前のせいだろう……」

「わかってるわよ……。悔しい!」

 リガノに答えたウカは地団駄を踏んだ。


「ま、まあまあ……几帳面な人間ならばまた願いに来るんじゃないの? 叶ってないよって」

「そうだよねー……。皆もちゃんとメンテしてきなよ……。しょぼぼーん……」

 ウカはひとりトボトボと神社へ帰っていった。


「あーあー……」

 他の皆もウカを励ますべく、とりあえずウカを追いかけていった。

 彼らの頑張りは続く……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] どうしましょう、せっかくのおじいさんの願い事……聞こえなかったって。 叶うのでしょうか。 叶えなかったら、ただでさえ低い信仰心がどんどん失われていきそうですね。 うん、ウカちゃん頑張って…
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