梅雨2
雨の中、外に出た稲荷達は冷たい雨に大はしゃぎだった。
「冷たい! やばっ! 気持ちいい!」
ウカは先ほどと違い、元気に水溜まりに飛び込んでいた。
「なにこれ、最高じゃん」
ミタマが顔に雨を当てながら跳び跳ねる。
「お、おい……雨足が強くなってきたぞ……。龍神との勝敗はどうなったんだ?」
リガノが不安そうにウカ達を見た。
「楽しんでるからうちらの勝ちっしょ?」
「かちー!」
ウカとイナは泥だらけで笑った。
「どんどんふれー!」
ミタマもおかしくなり、なんだか雨乞いになっていた。
「俺達は太陽の……」
リガノが言いかけた時、肩を誰かに叩かれた。
「いいんじゃね? どうせすぐ暑い夏が来るから」
「はっ! 紅雷王さまっ!」
リガノの肩を叩いていたのは傘をさした紅雷王、プラズマだった。
「雨の日はあまり参拝客がこないだろ。いつでもはしゃいでないで、こういう時にはしゃげよな。近くを通ったんで、様子を見に来たんだよ」
「そ、そうでしたか! ちなみに何をしに?」
リガノはおそるおそる尋ねた。
「あー、湿気取りを買いにいったんだよ……。木造の一軒家って場所によってはカビはえてな……、アヤが発狂したんで、部屋でゲームしてた俺がかりだされたわけ」
「えー……そうでしたか」
リガノは彼もいつも暇そうにしている気がすると思ったが、口には出さなかった。
「しかし、人間の子供もああやって雨の日に外に出たがる。なんでだと思う? うちにいるお子様達もな、なんかずぶ濡れで帰ってくんだよ。傘とかレインコートとか渡してんのにさ」
「……同じ心理なのかもしれん」
リガノははしゃぐ三柱を指差し、ため息混じりに答えた。
「ああ、そういやあ、今、イナがうちの裏の社に居候してんだよな。泥だらけで帰ったら叱られるぞ~」
プラズマはイナを見て、楽しそうに笑い、去っていった。
「おとがめなしで良かった……」
リガノは胸を撫でるとホウキでとりあえず空を掃いておいた。
日記。
紅雷王が来たからビビった。
そういえば、彼も普段何しているかわからん男だった。
アマテラス様の力で晴れにすることはなかった。もうすぐ晴れるとのこと。未来を見たのかもしれん。彼は時神未来神だからな。
担当 リガノ




